プランター

引越しのとき、「植物は運べないので」と、プランターは運んでもらえなかった。
ベランダにあった唐辛子のプランターだ。
仕方がないので透明なビニール袋でプランターそのものの部分は覆って、
僕は唐辛子のプランターを抱えたまま新幹線に乗った。
街中でたまに見かける花束を抱えている人の何倍も目立つ。違和感の塊だ。
まだ実がなる季節じゃなかったのでただの植木だと思われてたらいいなと思った。

植物はそもそも動かない。
物理的に動けないのに生きたり繁殖しないといけないから、強い生き物になったんだ。
時速320キロで移動する唐辛子なんて、本来ならありえない。
僕と一緒に、こいつも車窓を眺めてるように感じた。
ずっしりと重いプランターを、猫かなにかのように膝に乗せている。
新しい街で、僕はこいつと生きていくんだ、そう思うと、なんだかとても心強かった。

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