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解体決定の経過問う サン・ファン想う会 村井知事に公開質問状

 市民団体「サン・ファン・バウティスタ号を想う会」のメンバー4人が5日、県庁を訪れ、「なぜ、今、解体しなければならないのか」と題した公開質問状を村井嘉浩知事あてに提出した。

 県慶長使節船ミュージアム=石巻市渡波=に係留されている木造復元船のサン・ファン号について、村井知事は10日から解体工事を開始することを発表している。これを受けて、同会は工事の延期を求める一環で、質問状を出すことにした。

サンファン号を想う会公開質問状 (13)

公開質問状を手渡す足立共同代表(右)

 石巻交響楽団所属の演奏家で会の共同代表を務める足立弦子さんらは先月21日に、工事を延期するよう知事宛てに要望書を提出したばかり。この日は足立代表が、開示された行政文書に疑問が多くあったとして解体決定に至る過程について回答を求めた。

 内容は3項目。慶長遺欧使節船協会が提出した提言書に、船の保存が可能かどうか「専門的見地から検討した」とあるが、亀山紘市長(当時)が「専門的見地から船の保存が可能かどうか検討は必要」と発言していたのに対し、船舶関係の専門家による検討会は開催されなかった点などをあげた。回答希望日は今月19日とした。

 対応した環境生活部消費生活・文化課では内容を検討すると応じた。想う会は10日、使節船ミュージアムに駆け付ける予定という。【本庄雅之】


想う会が村井知事に提出した質問状(全文)

復元船 サン・ファン・バウティスタ号への想い

なぜ、今、解体しなければならないのか


公開質問状

2021 年 11月 5日
「サン・ファン・バウティスタ号を想う会」

公開質問状
2021年11月5日

宮城県知事 村井嘉浩 様


「サン・ファン・バウティスタ号を想う会」
共同代表  足立 弦子

 日頃、宮城県政の運営につきまして、知事のご尽力に感謝を申し上げ敬意を表します。
 さて、11月1日の定例記者会見におきまして、知事からご報告がありましたように、11月10日から、石巻市渡波に係留されている慶長遣欧使節船の復元船サン・ファン・バウティスタ号の解体工事を開始するとのことでございます。
 このことにつきましては、解体に反対する別団体が「訴訟」を起こしたことを報道で知り、私たちは気の合う者同士数人で、独自に調査・研究を進めるとともにSNS等で多方面の方々に問いかけたところ、大きな反響があり様々な分野の専門家らから情報提供を受け「船の役割」、「船の命」の在り方等について議論・熟慮の結果、10月21日に「サン・ファン・バウティスタ号を想う会」を設立、同日に知事あてに「要望書」を提出させていただいたところです。
 しかしながら、これまでの調査・研究の一環として行った「行政文書開示請求」によって開示された行政文書を閲覧しますと、2017年に費用面や技術的課題を考慮して保存を断念したプロセス等におきまして、疑問が多くございました。
 つきましては、この度、正式にこの「公開質問状」によりまして「質問」をさせていただくことといたしましたので下記により、県民はもとより国内外の人々が納得できるご回答を賜りますようお願いします。


回答希望期日 2021年11月19日(金)


質問事項及び内容


1 慶長使節船復元船の今後の維持管理検討業務(株式会社SUN総合)について業務委託の執行方法が不適切ではありませんか?
Yes     No
YesまたはNoに〇をつけNoの場合は、別途その理由を記述してください。

●不適切と問う理由
(1)公募型プロポーザルを適用する理由として、2/78~3/78頁に①「土木、建築、及び船舶等、複数の分野にわたる専門知識や経験を有する」、②「標準的な業務の実施手法の定めがない」とあるが、参加資格に上記に係る条件の記載がない。

(2)調達する目的物が「物品」及び「役務」となっているが、業務内容を見ると明らかに「建設関連業務」である。
 このことは5/78頁の「指名委員会内申書中の記述に「齟齬」があることで明らかである。
6の公募型プロポーザル方式とする理由に「土木、建築、及び船舶等」の記述と、囲みの説明文中に「業務委託(建設関連業務を除く・・・・ガイドライン」を適用していることで明白である。囲みの中の①~④の(例)は、当業務ではあたらない。
 「建設関連業務」のプロポーザル方式で執行すべきであった。

(3)スケジュール案において、公募開始を5月1日から2~3週間と記載があるが、今回開示された文書では確認できなかった。質問締め切り日の5月15日の実施日欄に5/15質問なしと手書きされているが、「公告」等の文書は確認できない。
 15/78頁のとおり株式会社SUN総合1社だけの企画提案書が開示された。
  当該文書が脱落しているのであれば追加開示をしていただきたい

(4)業務遂行の適否の判断材料としたと考えられる「業務実績」が27/78頁~36/78頁にわたって提出されているが、「建築設計」と「補助金交付申請書作成」に係る業務であり、当該業務の「土木」及び「船舶」に係る業務実績ではない。
 また、受託金額においても323万円と446万円と低額で業務内容も単純である。
 よって、当該業務の「業務実績」とはみなすことができない。

(5)建築法に係る書面の提出の意味が理解できないため説明いただきたい。
 60/78~63/78頁に「建築法」に係る書面が提出されているが、「建築業務」ではないにもかかわらず、「建築法」によって何に対応したのか理解できないため説明いただきたい。

(6)業務の一部再委託に係る文書が68/78~71/78にあるが、再委託先が「宮城県林業技術総合センター」であり、再委託した業務が「復元船構成木材の腐朽状況調査」である。
 再委託費は14万5千円で比較的小額ではあるが、当該業務の最も重要な業務であり、「主たる業務」とみなすことができる。主たる業務は一部再委託は認められないため不適切である。
 「宮城県林業技術総合センター」は宮城県知事部局水産林政部所属の地方機関である。環境生活部発注の業務委託費が水産林政部の地方機関を通じた県の「歳入」等、「予算の還流」とも言えることになっているのであれば、その14万5千円の経費収支の適否について、総務部財政課、出納局会計課等に確認する必要があるものと考える。
 適否は確認できないが、手続きとしては著しく不適切である。


2 公益財団法人 慶長遣欧使節船協会が提出した「提言書」(平成28年11月)の提出文書について提出文書の内容が一部、事実認識が異なっていませんか?
Yes     No
YesまたはNoに〇をつけNoの場合は、別途その理由を記述してください。

●事実認識が異なると問う理由
(1)株式会社SUN総合が実施した「慶長使節船復元船の今後の維持管理検討業務」の報告書に照らし、一部について事実と異なる記載がある。
1)報告書記載 
 35/412頁 「復元船船体状況見解書(安全性の検証)」に記載のある「然しながら、震災後約4年9か月(検査修繕後は5年9か月)を経過している現在まで本来実施しなくてはならないはずの船外外板材及び内部の肋骨補修は一度も実施しておらずの状態で、一気に腐朽の加速度を進行してしまった状態」

2)提言書提出文書
 82/412頁 平成28年11月25日付け慶協第40号 村井嘉浩宮城県知事あて、公益財団法人慶長遣欧使節船協会 代表理事 一力雅彦 
 文書中、「しかしながら、建造から23年が経過したこと、また、平成23年の東日本大震災に伴う大津波に遭遇したことなどから、復元船の腐朽が顕著になっている」
上記のように異なる。次の通り記述すべきである。

 「しかしながら、建造から23年が経過したこと、また、平成23年の東日本大震災に伴う大津波に遭遇したことなどに加え、震災後約4年9か月(検査修繕後は5年9か月)を経過している現在まで本来実施しなくてはならないはずの船外外板材及び内部の肋骨補修は一度も実施しておらずの状態で、一気に腐朽の加速度を進行してしまった状態」

3)提言書提出文書
 82/412頁 平成28年11月25日付け慶協第40号 村井嘉浩宮城県知事あて、公益財団法人慶長遣欧使節船協会 代表理事 一力雅彦 
 「この提言書は、委嘱を受けた学識経験者や行政及び公益団体の代表者16名の委員により、専門的見地から検討を行った結果であります」の記述中、「専門的見地から検討を行った」は事実と異なる。
 58/412~64/412頁 慶長使節船復元船サンファンバウティスタ号の今後の在り方検討委員会(第2回)の会議録には、亀山紘石巻市長は、「専門部会を立ち上げて専門的な知見からこの船の保存が可能かどうか、それをしっかりとした立場で検討していただくことが必要」と発言している。
 しかし、これに対し、黒塗りの委員が「亀山委員から財源確保とともに専門部会を立ち上げてはどうかと・・・・濱田館長よりお話がありました通り、宮城県の今回の調査というのは、専門家の皆さんが集まって調査し、意見が集約されたもの・・・さらに専門部会となりますと同じようなことになる」と発言している。
 アンダーラインの部分は、株式会社SUN総合が実施した「慶長使節船復元船の今後の維持管理検討業務」の報告書を受け、消費生活・文化課職員によって簡潔にまとめられたものであり、「コンサルタント業務の報告」に過ぎない。
 亀山石巻市長は「コンサルタントの報告をたたき台にして船舶工学・建築・土木等広い分野の専門家による部会」を進言したものである。
 さらに、SUN総合は、「船舶工学は専門外」であることは明白である。
 よって、「専門家の意見集約」、「専門的見地から」は事実と異なる。

 亀山市長の主張が採用されていれば、「解体」についての展開が変わったであろう。


3 平成29年8月1日 知事決裁の起案文書「慶長使節船復元船サン・ファン・バウティスタ号の今後の在り方について」に係る説明資料について説明資料の内容の一部が、議論・検討不足ではありませんか?

Yes     No
YesまたはNoに〇をつけNoの場合は、別途その理由を記述してください。

●議論・検討不足事実と問う理由
(1)知事決裁(案)県の方針
1)慶長使節船復元船サン・ファン・バウティスタ号を木造船のまま修復し、保存していくことは断念する。

2)復元船は、日々のメンテナンスを丁寧に行い、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年まで展示する。
 方針1、2については、111/412頁に「有識者へのヒアリング、保存科学の手法や国内外の木造船の事例についての調査等を行った」と記述があるが、「有識者へのヒアリング」は個人の見解に過ぎないこと。
 また、「保存科学の手法」は、これも狭い分野でしかない。「保存事例」にあっては、お国柄や財政状況、船の規模、特性等において条件が一定ではない。
 よって、復元船の修復に関して参考にはし難い。
 当件の場合、「建設関連業務」として取り扱い、船舶工学や、土木・建築等の専門的な参加条件を付した公募型プロポーザル方式により、業務委託を実施することと並行して、亀山石巻市長が提案した「専門家会議」を設置し、慎重に議論した上で「県の方針」を決定すべきであったと考える。
 さらに、船舶工学及び土木・建築等の専門知識のない県職員が、「船舶工学」の能力のないコンサルタントの報告書をもとに、専門家が入らない「検討委員会」での議論と、「聞き取り調査」の結果等を整理して決定することは危険極まりないことである。

3)(仮称)「慶長使節船ミュージアムの今後の在り方検討委員会」を立ち上げ、2020年以降のサン・ファン・バウティスタ号及びサン・ファン館について具体的に検討していく。
 これについては、県の方針1の「慶長使節船復元船サン・ファン・バウティスタ号を木造船のまま修復し、保存していくことは断念する」ことが議論・検討不足で「解体」を決定したのだから早計である。

以上


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