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大打撃 苦悩する地域経済 変化に対応できるか否か

 子だくさんのネズミは繁栄の象徴とされ、株式相場も子年は繁栄するとの格言があるようだが、経済は新型コロナウイルス禍で石巻地方のみならず国内全体が苦難の年だった。休業要請以降、飲食店などから客足が遠のき、石巻川開き祭りをはじめとした大規模な催しも軒並み中止。街は閉塞感に包まれた。【熊谷利勝】

 4月16日、政府は新型コロナ新規感染者の増加を受け、緊急事態宣言を全国に拡大。5月6日までで、黄金週間中の人の移動と感染拡大を抑えるためだ。宣言に伴って県は、25日から5月6日まで飲食店など幅広い業種に時間短縮営業や休業を要請し、補償となる1事業者30万円の協力金も決めた。

 すずめの涙ほどの協力金に、事業者から不満や戸惑いの声が聞かれた。自前の店であればまだいいが、テナントとして入居する店は休業しても家賃が発生する。とはいえ、営業継続してもしものことがあれば、店の評判に関わる。石巻市内は夜の繁華街を歩く人が激減し、要請に先駆けて自主的に「臨時休業」を張り出す店もあった。

 要請は予定の期日で解除。県内の緊急事態宣言は5月14日まで続いた。解除後最初の週末は行楽地がにぎわったが、夜の飲食店は客足が鈍い状態が続いた。再び警戒感が強まったのは、7月上旬。石巻地方で初の感染者が石巻市内で確認された。日用品を扱うスーパーは変化がなかったが、観光施設では都内の感染拡大傾向もあって入り込みがぐっと減った。

コロナで夜の街打撃 (1)

人通りの少なくなった石巻市中心部の繁華街(4月)

 こうした中、国はGoToトラベルキャンペーンなどの景気刺激や中小企業などの売上げ減少や家賃の支払いを支援する制度を創設。地元市町村も、臨時交付金で国の制度の対象にならない部分への独自支援や商品券発行事業を実施してきた。

 しかしながら10月以降、全国で新規感染者が急増。年末年始は慎重な行動が呼び掛けられ、飲食店は現在、本来の書き入れ時から程遠い。政府は感染対策と社会経済活動の両立を図る考えであり、収束まで対策を緩めたり強めたりする繰り返しが続きそうだ。

 石巻商工会議所が8―9月に行ったアンケート調査では、コロナで何らかの影響があると答えた事業所が78%。3月の前回調査から10ポイント余り上昇し、影響は飲食業や小売業、卸売業だけでなく全業種に拡大していた。そうした中でも従業員の休業は25.6%、解雇は1.8%にとどまり、支援制度などを活用しながら働き手をつなぎとめている実態が浮かび上がった。

 コロナ禍も1年近くになり、今や入店時の手指消毒は当たり前。多くの飲食店がデリバリー(宅配)やテークアウト(持ち帰り)に参入し、新たな客を獲得したところもある。オンライン会議やリモートワーク(在宅勤務)などの言葉も浸透し、働き方が変わっている。

 石巻地方では今年1月末、東北最大級の造船会社ヤマニシが会社更生法の適用を申請。業界的な不況などで新造船の利益が伸び悩み、資金繰りが悪化したためだ。

 コロナ禍でかすんでしまったが、老舗造船会社の経営破たんは、変化に対応できなければ生き残れない事実を突きつける。コロナ禍は今が佳境なのか、それともまだ入り口なのか。見えない先行きへの不安は募る。


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