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試される政治経験と人脈 石巻市 圏域連携で公約実現へ

 石巻市の市長が12年ぶりに交替し、齋藤正美市政が始動した。東日本大震災復興をけん引してきた亀山紘前市長(78)の後継指名を受け、市政の継承、発展を唱えた齋藤氏(66)。復興の先へ具体的に何をどう取り組んでいくのか。選挙戦で掲げた公約を見ていく。

 元県議の齋藤氏は自民、立憲民主の推薦を受け、25日に投開票された市長選で新人4人の争いを制した。当選後のインタビューで齋藤氏は、新型コロナウイルス禍の1日も早い収束と、コロナで打撃を受けた地域経済の立て直しを上げた。

 ワクチン接種は集団のほか、かかりつけ医での個別接種ができる体制づくりを急ぎ、「いつでも、誰でも、何度でも」PCR検査を受けられるようにするという。経済対策では市の一般財源も最大限活用して事業規模に応じた追加経済支援を行い、さらに生活が困窮している市民の生活支援を見通す。

 コロナ対策は立民の推薦条件の一つで、ほかに女川原発再稼働を巡る諸課題の対応や医療体制の構築、特定の政党に組みせず「市民党的立場」で市政に取り組むことの計4項目で政策協定を交わした。原発の再稼働に関しては誰もが納得できる避難計画を作り、その前提としての避難道路整備を国、県に働き掛けることにしている。

 経済、産業分野では農林漁業の担い手育成のほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)の普及による地場産業の高度化や新産業創出を掲げた。全世代の就労環境整備へ「正社員化促進事業奨励金」「高齢者の仕事掘り起こし会議」を新設するほか、三陸道桃生豊里IC周辺での産業団地形成をうたう。同IC周辺では、市が道の駅を設置する構想を断念した経緯がある。

 子育て支援では保育所機能の強化や医療費助成の高校生までの拡大を進める。医療、介護、福祉分野は前市長から引き続き、包括ケアシステムを推進。これらの分野は選挙戦を通しても具体策がつかみにくく、今後の手腕が試される。

 前市政から継承するのは、市民と行政の協働のまちづくりの仕組みである「地域自治システム」。コミュニティーの活性化にも重要と捉えるが、推進母体の協議会は予定の16に対して4地区の設置にとどまる。そのため、市民参画による内容の再検討、行政と市民の間に立つ中間支援組織を設立することで全域への拡大を図るつもりだ。

 刷新には広報、広聴活動を挙げる。選挙戦でもオール市民の市政運営を訴え、「移動市長室」の再開などで意見を幅広く聞く構え。市からの情報発信力の強化にも努める。この発信力はポスト復興を進める上でもキーワードにし、官民挙げたイベント実施や復興の姿を伝えることで交流人口を増やし、若い世代が魅力を感じて定住する将来像を描く。

 市内人口が減少する中、財政は税収減が予想される一方、震災後に建てた公共施設の維持管理などで経費の増大が見込まれる。行政運営の改革は不可避であり、各種事業の聖域なき見直しや人口減少に応じた公共施設の統廃合に向ける。

 復興の先へ―。齋藤氏がかじ取り役に選ばれたのは、地元での長い政治経験と培った人脈に期待するところが大きいが、次点との差はわずか3千票。これがしこりとなってさまざまな活動に影響を及ぼすことがあってはならない。

 また、公約実現にも財源が必要であり、市単独でできないことは圏域で取り組むことが肝要になる。元県議として国、県のパイプを発揮するとともに、2市1町の連携強化が望まれる。【熊谷利勝】


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齋藤新市長が初登庁 誇れる古里づくりまい進
幹部職員や市民出迎え

 25日投開票の石巻市長選で初当選した元県議の齋藤正美氏は、29日付で新市長に就任した。初登庁となった30日、玄関先で出迎えた幹部職員や市議、市民らに対して「(亀山紘前市長の)市政を継承し、さらに発展すべくしっかりと取り組んでいきたい。誇れる石巻づくりにまい進し、それをオール市民で成し遂げる」とあいさつした。

石巻市 齋藤正美市長初登庁し訓示 (18)

齋藤新市長の初登庁を市幹部や市民が出迎えた

 午前10時の初登庁を地元の蛇田地区を中心にした市民も出迎え。市役所前で車を降りた齋藤市長は集まった人たちに頭を深々と下げ、職員から花束を受け取った。齋藤市長はその足で市長室に向かい、市長の椅子の感触を確かめるとともに、共に市政を担う重責をしみじみ感じていた。

 その後、市役所の議場で職員に訓示。初めに復興一筋に取り組んできた職員に敬意と感謝を述べ、共に復興の完結や心の復興に取り組む姿勢を示した。続けて喫緊の課題であるコロナ禍の一日も早い収束へ「なお一層の尽力をいただき、私も先頭に立ってその任に当たる」と決意した。

 職員の仕事に取り組む姿勢として、市民サービスを第一とすること、横断的に諸課題を認識することを要請。「未来への責任ある市政を実現し、誇りある古里石巻づくりには皆さんの力なくして成し遂げられない」と力添えを求めた。【熊谷利勝】


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