見出し画像

「売れる魚種」に転換へ 深海魚、暖水系魚種を有効活用 県水産センター、石巻専修大

 値が付かない低利用魚や海況変化で増えた暖水系の魚。石巻魚市場に水揚げされる魚種も変化しており、こうした魚も有効に使っていこうと、県水産技術総合センターや石巻専修大学では、レシピ考案や健康成分の抽出など利活用方法の模索が続く。海流変化などさまざまな要因で従来魚種の水揚げが年々低迷する中、持続可能な水産業を実現するための突破口として研究に注目が集まっている。

消費拡大に向け研究進む

 石巻魚市場には沖合底びき網船の入港が多く、イワシやサバ、アジなど多くの魚種が水揚げされるが、漁では、利用価値がなく値段が付かない深海魚も多く入る。1回の水揚げで20~30%が低利用、未利用魚という。

 県水産技術総合センターの水産加工開発チームは、ここに着目して利活用が進まない魚種のメニュー開発を展開している。県の「新みやぎグリーン戦略プラン」の推進事業でもあり、これまでSNSなどを通じて6魚種の調理レシピを紹介。企業の商品開発に結び付く例もあった。

県水産技術総合センターでは、エイやギンザケの稚魚などの利活用を進める

 同チームの阿部真紀子技師は「値が付かず水揚げ記録の残らない魚種も多い。まずは資源量を把握し、安定的な原料供給ができるかを調べる。現在、気仙沼市で干物などの活用例があるエイ類の研究も進めている」と話していた。チームの公開実験棟=同市魚町=は、県内の水産関係者や大学などの教育機関が活用しており、新しい水産加工品の開発を支えている。

さまざまな深海魚を手に入れ、可能性を探る鈴木准教授

 一方、石巻専修大学理工学部生物科学科の鈴木英勝准教授も低利用、未利用魚種に焦点を当てる。魚市場で水揚げされる深海魚の研究は令和元年から進めており、県沖合底びき網漁業協同組合と連携し、これまで「売れない」とされてきたナガヅカやカナガシラといった多くの低利用魚を使い、カマボコや刺身などの消費方法を試してきた。

 「カナガシラは刺身がうまいが、可食部分が少ない。漁業者の利益につながらない」と鈴木准教授。一方のナガヅカは卵巣に毒を持つが、業務用食品を取り扱う企業と協力し、身をフライにして飲食店で提供を開始。評判もよく、今後は消費拡大が期待できるという。

 深海魚には健康成分のDHAやEPAが含まれる魚種が多いことから、サプリメント開発の可能性も視野に入れる。鈴木准教授は「静岡県の沼津港では深海魚を活用して観光にもつなげている。石巻にも十分にその可能性はある」と話していた。【渡邊裕紀】





最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。