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サン・ファン「解体に待った!」 保存運動へフォーラム 専門家 乾燥保存強調

 県慶長使節船ミュージアム=石巻市渡波=に係留され、老朽化により解体が予定されている木造復元船サン・ファン・バウティスタ号の保存運動を盛り上げようと、有志のネットワークが8日、同市蛇田公民館でフォーラムを開いた。現在の船を修理して残すことが可能だとする専門家の見解を示し、解体を差し止める住民訴訟への理解を広めた。【熊谷利勝】

 フォーラムは解体に反対する市民団体で作る「サンファン号保存を求める世界ネットワーク」が主催。市内外から60人が参加した。
 船体の腐朽が進み、改修でドック内の海水を抜くと腐朽した船が壊れる危険が高いとされる。これに対してオンライン出演した平山次清横浜国立大学名誉教授(造船工学)は、ドックに砂を入れて水と置き換える方法を説明した。

サンファン解体阻止へフォーラム (16)

サン・ファン号の解体阻止へ議論を深めた

 具体の保存の仕方を問われた平山名誉教授は、船を一刻も早く水から出して日光や雨除けの屋根をかける方法を提案。「腐朽を防ぐには乾燥が一番重要。こうして補修をすれば10年、20年どころか100年持つ」と強調した。
 修理の人材確保が難しいのも課題で、事務局の都甲マリ子さんは、水爆実験で被災した木造船「第五福竜丸船」の保存を担当した文化財建造物修理技術者である日塔和彦さんの提案を報告した。現地を見た日塔さんの評価は世界遺産に登録可能な文化資産。船でなく文化財として宮大工に修理依頼することで6、7億円で修理できる見立てという。

 一方、世界ネットが提起した住民訴訟の担当弁護士は、経過や争点を解説。9月7日に始まる裁判で対案を具体的に提示し、解体が県の損失であることを訴えていく。

 船は9月以降の解体が見込まれ、県は4分の1大でFRP(繊維強化プラスチック)の後継船を制作する計画。解体費用を含めて約28億円をかけて施設や展示を改修し、令和6年度のリニューアルオープンを予定する。

 世界ネットの白田正樹会長は「この30億円近くを県からもらい、市として新しいミュージアムにしてはどうだろうか。夢のある話を議論してほしい」と会場に運動への協力を呼び掛け、世論の盛り上がりを期待した。

 フォーラムは14日午後2時からせんだいメディアテークでも開く。入場無料だが、事務局(080―4884―4868)に事前予約が必要。


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