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ギンザケ養殖でASC認証 国内初・女川町のマルキン 環境に優しい水産業へ

 女川町小乗浜の(株)マルキン女川工場(鈴木欣一郎社長)は、海のエコラベルと呼ばれるオランダ発の国際的な養殖業の「ASC(水産養殖管理協議会)認証」を国内では初めてギンザケ養殖で取得した。海洋資源の持続可能な利用、養殖業による環境負荷の低減など厳しい基準を満たしたことが評価された。同社は平成29年から認証に向けた取り組みを続けており、今回の取得によって商品の付加価値をさらに高めていく。【渡邊裕紀】

 同社は昭和52年に全国で初めて国産ギンザケの養殖を事業化。現在も養殖から加工まで一貫して行う。平成23年の東日本大震災で工場や養殖施設は壊滅的被害を受けたが、翌年には工場を再建。同29年には高品質な水産物に付加価値を与え、競争力を高めようとASC認証の取得に向けたプロジェクトを立ち上げた。

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再建された女川工場

 同社は、角型に区切ったいけすで養殖することで管理が行き届く小割いけす式養殖を採用。エサの原料に魚粉やハーブ、ビール酵母を使うなど徹底した管理に取り組みながら水質、水温も常時監視してデータを蓄積し、養殖に反映させてきた。4月には日本版の「MEL(マリンエコラベル)」の認証も得ている。

 今回のASC認証は自然環境に配慮した徹底管理を第三者が裏付けたものであり、MELとともに、ギンザケの品質と持続可能な漁業への取り組みの保証にもつながる。養殖ギンザケ市場はチリ、ノルウェー産など海外の輸入品がシェアの約半数を占める。そのほとんどがASC認証を受けており、販路拡大のためには国内のみならず、海外への輸出も視野に入れたASC認証の取得は、ブランドとしての競争力強化も意味する。

マルキンのギンザケASC認証取得 (21)

認証を受けた養殖ギンザケ「銀王」。ブランド力の強化で海外輸出も視野に入れる

 同社で展開する養殖ギンザケの独自ブランド「銀王」は、生産から加工まで一貫して自社で行うことで高い鮮度を維持し、出荷できる特長を持つ。年間生産量は600トン。いけすの一部をASC認証用とし、ここで100トンを生産している。今年は大手量販店などに出荷が決まっている。

 環境に対する意識が海外よりも低い日本では、漁業全体でのASC認証の取得はあまり進んでいないのが現状という。しかし将来的に持続可能な漁業を目指すためには不可欠な要素であり、同社の鈴木真悟常務(32)は「環境負荷を意識し、責任ある養殖を行うことはこれからの漁業に必須。これをきっかけに業界全体に取り組みが広がれば、海を守ることにもつながる」と話していた。


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