見出し画像

【着ぐるみ制作】髪の毛の作り方【アドカレ10日目】

この記事は「日陰工房アドベントカレンダー2022」の10日目の記事です。


響音カゲです。

今日は着ぐるみの髪の毛の作り方を解説します。

着ぐるみの髪の毛ってどうやったら作れるんだろう? ってなる人も少なくないと思います。
できるだけそれっぽい髪の毛をうまく作る方法をご紹介します。

ファーを使うか、ウィッグを使うか

着ぐるみの髪の毛には、ファーを使う方法とウィッグを使う方法があります。

それぞれのメリットとデメリットを紹介します。

ファーで作る方法

ファーを髪の毛の毛束のように切り出して作ります。

顔やボディと毛の質感や色が統一できるのがメリットです。

デメリットとして、毛足は短くなってしまいますので、できる表現が限られます。

ショートヘアーの子を作る場合や、デフォルメされたキャラを作る場合に採用しているケースをよく見ます。

ウィッグで作る方法

ウィッグをバラして貼り付け、結髪する方法です。
美少女着ぐるみとかでは定番の方法です。

髪の毛らしさを出せるのがメリットです。

デメリットはファーとの質感や色が違ってしまう場合があること。似た質感や色のウィッグを探すのはかなり大変です。

また、ウィッグはブラッシング、運搬、管理などのメンテナンスが大変です。ファー以上にすぐ絡みます。

ロングヘアーや複雑な髪型のキャラクターを作る際や、リアル系だけど髪の毛がある、みたいなタイプのキャラクター、ドール寄りのキャラクターなどを作る時に採用されている場合が多いようです。

私は美少女着ぐるみではウィッグを使ってます。

どちらを使うべきか

今の日本や中国、韓国の主流であるデフォルメ系のキャラならファーで作っている人のほうが多いです。
ウィッグを扱うとなると必要な道具が増えるので、最初はファーを使うことをおすすめします。

作りたい髪にこだわりがあるならウィッグを使っても良いでしょう。

この記事ではファーを使った作り方を紹介します。ウィッグを使った作り方については、以下の記事が参考になると思います。

毛束のあるデザイン画を用意する

ファーで作る髪の毛は3面図のデザイン画の時点で束感があり、髪の毛として自然な絵になっていることが望ましいです。
デザイン画の毛束を、そのまま制作時に再現して作るからです。

自分で描く髪の毛の画力やバランスに不安があるなら、他のイラストレーターにデザインの修正を依頼するべきです。

ここでのデザイン画のバランスや、精細度が不足していると、キャラクターになった段階でもかなり微妙な感じになります。

そして、「絶対デザイン画を完璧に再現する」という強い気概を持つことです。


それでは、実際にいくつかのデザイン画を例として出します。それらの毛束の認識方法を学びましょう。

まずは、下にあるNyuldoriさんから買ったテルルのデザイン画を例とします。

この場合は、毛束は次のようになります。

あくまで一例なので、このあたりは人によっては解釈が分かれると思いますが、こういう感じでまとまりを把握しようということです。

毛束の面の分け方は、夏森轄さんが公開している以下の動画が参考になります。3Dで髪の毛をモデリングするときの方法について解説していますが、前半部分で毛束の分割について説明しています。

最終的な素材の違いはありますが、立体造形という観点からはやっていることは同じです。

上記の動画を観て毛束感を勉強したら、毛束の位置関係を意識しながら、3面図を起こします。以下の3面図は、さかなぼねさんの着ぐるみバランステンプレートを使用しながら私が描いたものです。

ここまで絵が描けない人でも、三面図を印刷して、髪の毛のシルエットをなぞるだけでもかなり理解が進むはずです。

避けたほうが良いデザイン

物理的に不可能な髪型は避けましょう。例えばスネ夫の前髪みたいなデザインとか。
三面図に起こすときに、元デザインの雰囲気を極力維持できるが、現実で可能な三次元的に正しい髪型に上手いこと変えてください。

また、着ぐるみのヘッドは人間の頭よりかなり大きくなるので、大量のファーやウィッグを使うことから、ロングヘアーはめちゃめちゃ重くなります。

重くなればなるほど、ヘッド自体の強度やウレタンの変形を考慮しなくいけなくなりますし、何より着ていてキツイです。ウィッグだと脱ぎ着や管理もものすごく大変になります。
特にウィッグのロングのストレートは手を抜くとボッサボサになるので管理がむちゃくちゃだるいです。

長毛のキャラクターを作る場合は、重量や管理面からどのぐらいの長さが現実的かよく考えましょう。

型紙を作るまでの下準備

髪の毛はヘッドベースができてから作ります。
目や顔のパーツとバランスを取って作っていくため、作り方にもよりますが、最低限

  • 耳の接着

  • 目の接着

までは済ませておいたほうがいいです。
私は顔の毛をある程度貼ってから髪の毛制作をします。

ヘッドシェルのおでこを盛る

髪の毛はそのまま何も考えずに作ると、頭にべったり貼り付いたようになってしまうため、立体感がなくなり、前髪が潰れます。

これを防ぐためには、前髪と顔を離し、顔に前髪の影を落とす必要があります。

要は前髪の上のおでこを盛れという話です。

上の絵ではかなり極端に描きましたが、おでこを盛ることで前髪に立体感を作れます。

後から仮止め中に盛りが足りないな……ってなったら、ファーの下にウレタンやらファーやら詰め込めばいいです。

顔の毛の生え際の処理

髪の毛とは直接関係ないのですが、髪の毛のあるキャラクターを作る時の顔の毛の生え際処理について書きます。

髪の毛があるキャラクターを作る場合は、ファーを重ねすぎてしまうと頭がシェルよりも大きく盛り上がってしまうため、ファーがめくれて見えてしまう範囲内だけ貼るようにしましょう。

おでこの生え際のラインより上や、後頭部は顔のファーを貼る必要はないです。

型紙を作る

デザイン画を元に、紙を切って型紙を作ります。
マスキングテープでヘッドに貼り付けてバランスを見ましょう。

最初は大きめに切って、後から微調整していくと良いです。

型紙は全部使いやすいように清書しておきます。

途中で色が変わる髪の毛の作り方

テルルの前髪みたいに、途中で色が変わる髪の毛は、ファーを縫い合わせて作ります。
擬似的なグラデーションも同様にして作ります。

  1. 型紙に、髪の毛の色が変わる境目を描き込む。直線的だと違和感が出るので、特別な意図がない限りは多少ギザギザにしたほうがよい。

  2. 色の境目に合印を描き込む。

  3. 型紙を色の境目で切り離す。

  4. 型紙をトレスするか、裏から新しい紙を貼り付けて、3~5mmで縫い代を付ける。手縫いなら3mm、ミシン縫いなら5mmが良いんじゃないかな?

両面の髪の毛の作り方

裏が見える可能性のある箇所の髪の毛について。

いくつか作り方はありますが、2枚を貼り合わせる方法が一番無難だと思います。

両面の髪の毛を作るときは、根本まで両面にすると不要な厚みが出てしまいます。裏がめくれて見える可能性のある範囲だけを両面にすれば良いです。

2枚のファーを接着剤で貼る

2枚のファーをGクリヤー等で貼り合わせて作ります。

そのまま貼り合わせてしまうと横から見た時に地の生地が見えてしまうので、表の生地の縁を巻き込むようにして貼り付けます。

接着剤を塗る時はGクリヤーを密封可能な瓶に入れ、Gうすめ液Zでボタボタと垂れるぐらい(よだれぐらいの硬さ)にまで希釈して筆塗りしてます。

1枚は3mm程度大きく切り出し、縁を丸めて接着します。もう一枚は3mm程度小さく切り出し、裏に接着します。

  1. 型紙をトレスし、表用と裏用の2枚を用意する。

  2. 表用は縁を3mm大きく取り、裏用は縁を3mm小さくして、先端のめくれる範囲だけに切る。

  3. ファーに転写し、それぞれ切り出す。

  4. 表用のファーの裏側の縁6mmにGクリヤーを塗り、丸めるように接着する。

  5. 裏用のファーと表用のファーを貼り合わせる。貼り合わせるのは縁だけで十分。

裏をスリッカーブラシでこする

一部のファーでのみ使用可能なテクニックです。

ファーの裏を先端が尖ったスリッカーブラシでこすると、表地のファーが裏に引き出されて両面のファーになります。

表地のファーが多少薄くなるので、短毛のファーや毛量の少ないファーには向きません。

失敗すると毛が抜けるだけになるので、事前にハギレでテストがてら練習すると良いです。

また、確実に裏地にダメージが入りますので寿命や抜け毛への影響は否定できません。私は個人的にはできれば採用したくないです。

2枚を縫い合わせる方法

見栄えに影響が出るので、特殊なケースを除いてあまりおすすめしません。

2枚を縫い合わせてもいいのですが、そうすると折り返して縫った箇所に4枚ファーが重なることになり、縁に厚みができてしまいます。どちらかというと、縁を薄く作ったほうが見栄えが良いです。

また、髪の毛のシルエットが丸くなってメリハリがなくなります。

接着よりは工数がかからないので、接着剤用意するのめんどくさいよ、という人とか、接着剤の扱いに自信がない人とかはこの方法でも良いかもしれません。

ファーで三つ編みみたいな特殊な髪の毛を作る場合は、場合によってはこちらのほうが良いかもしれません。

謝辞

この記事を執筆するにあたって、田代憂さんとラクたろさんには多大に制作された作品について教えていただき、参考にさせていただきました。この場を借りて感謝の念を伝えさせていただきます。


明日の記事は「【着ぐるみ制作】着ぐるみの目の素材いろいろ」です。


キャラクターの創作費に使わせていただきます。