一般女子高生、配信者になる
烏が鳴き、運動部らしき掛け声に、吹奏楽部の演奏音。中庭では演劇部が大会に向けて練習をしている。
休んだ時の課題をやり終えて職員室に赴き、不在の先生の机に置いて昇降口に向かう。周りの子達は鞄に色んなストラップとかを付けているけど、私はひとつも付けていないためクラス内では酷く浮いて見えているだろう。
高校二年生の終わりだと言うのに進路も決まっていないのは私だけかもしれない。
いつも一緒に帰っているみーちゃんは、部活で遅くなるらしいので今日は久しぶりに一人だ。
校内やグラウンドから聞こえる声を後目に校門を出て学校前の坂道を下っていく。
私の名前は如月葵。部活やクラブにも入っておらず、彼氏もいないし委員会にも所属していない。成績だって特段良い訳でもないごく普通の、目立たない地味な女の子だ(自分で言うのもなんだが)。
友達は皆部活動に精を出していて、彼氏が出来た子もいる。将来の夢を明確に持って、進路だって決めている子もいるなか、私は一人浮いていた。
周りがなにかに打ち込んでいるなか、私は宙ぶらりんで中途半端。なんとなくだが疎外感を感じ、最近は仲のいい友達とも喋らなくなってきてしまった。
正直、周りの子達が羨ましい。皆目標を持っていて、ギラギラと輝いて見える。
どうして私はこんな人生を送っているんだろう。
何となく、自分一人だけが置いていかれている気がして、気が落ちる。
何か、劇的な変化は起きないだろうか。こんな私でも輝く事のできる事がないだろうか。
……都合のいい妄想だなぁ。
上の空になりながら歩いていると、ポケットの中のスマホが震えた。見てみるとみーちゃんからLINEが来たようだ。トーク画面を開く。
『ねぇねぇ、あおちゃん!』
『なぁに?』
『配信、 やってみない?』
……
「は?」
思わずスマホを落としてしまった。
ーーーこのみーちゃんの何気ない一言をきっかけに、私の日常は変わっていった。
辛くて、苦しい時もあったけど、それでも私の憧れていた”輝かしい自分”へーーー!!
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『ほら、あおちゃんって化粧無しでも物凄く美人だから!配信映えするんじゃないかなって!』
『いや、理由になってないから』
『取り敢えずやってみようよ!ちょっとだけ!先っぽだけでいいから!』
『先っぽだけって何!?』
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「えー……っと、これって始まっているのかな……」
:見えてるよー
「あ、みーちゃん……これちゃんと始まっているの?」
:ちゃんと始まっているってば
「えぇ……?ほんとに?」
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「オーホッホッホ!如月葵!貴女は今から、私の好敵手(ライバル)ですわ!」
「いや、こんなコッテコテのお嬢様キャラ今どき居たの?」
「煩いわよ!人のキャラに対していちいち突っ込みを入れるなんて野暮な事しないでよろし!」
「……うーん、なんか喋り方のせいで老けて見える……」
「口の減らない女ね貴女!?」
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「……スゥッーーー」
「……」
「……スッ、好きな、料シッ、理ってなんすかァ……」
「……グラタンですね」
「……ソッスカー……」
「……はい」
「「……」」
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「炎上したらどうしたらいいかって?上手いことやってアンチも味方につけろ」
「いやそれできるの貴方のケースだけです」
「なんだと……?」
「いや、そもそも貴方の場合は炎上内容が特殊すぎるんですよ……」
「そうか……」
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ーーーこれは、一人の少女が、輝く為の話ーーー
【一般女子高生、配信者になる。】
※続きません。
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