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人生のレール

膿瘍のときと同じで下半身麻酔だと思っていたが、人生初の全身麻酔で深く眠ることになった。痔ろうの手術は30分もかからなかったようで、1時間半も寝ていたら完了していた。起こされるとパンとヨーグルトを用意してくれた。コーヒーはいかがと聞かれたが、そんな気分ではない。手術後にコーヒーが提供されるのはフィンランドだから?水とパンだけいただいて、病気休暇と手術後の注意点などの説明を受けた。それが終わると排尿。手術した部分の痛みを我慢して頑張ってトイレまでちょびちょび歩く。前回の手術後は、おしっこがうまく出せなくて帰宅許可が出なかった。今回も心配ではあったが、難なく排尿ミッションをクリア。友人にエスコートされてタクシーで帰宅した。手術後2時間でもう家に着いてしまい、不思議な虚無感と麻酔が切れた痛みに包まれた。

フィンランド語には「人生のレール」という言葉がある。大きな病気などのイベントで、人生がうまくいかないことを、人生のレールからの脱線と言い、もとの日常に復帰すれば人生のレールに戻ると言う。だから日本で使われる人生のレールとは意味が異なる。日本語では、敷かれたレールの上をみんなで一緒に走行するニュアンスがあり、脱線はすなわち集団行動からの離脱を意味する。一方でフィンランド語では、一人ひとりに自分のレールがあると考える。これは私の理解である。

誰でも人生のレールがまっすぐということはないだろう。曲がっているから、焦って加速すると脱線してしまう。周りの人間とフィンランドの社会保障に助けられて、私はなんとかレールに戻ってきた。時には飛ばして、でもなんとか安全運転を心がけたい。

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