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No.6 “二度目のデビュー” Part.1


“匿名宝飾店”
渋谷のBANK GALLERY で開催された
大規模なアクセサリー展示会だ。

コレを仕掛けたブランドは
今の自社とユーザーを分析してこう思った。

『プロダクトは勝負できるクオリティ。
しかし、
少し前の一時的なイメージで”敬遠する”
客層がある、特に今のSNSで活動する層で。』

この難しい課題を
美しく完璧なユーザー体験を設計して
逆転に繋げたのが
恐ろしい程に冷静で私達に寄り添った
”匿名宝飾店”

私自身の体験から分析していく。

スタート

来場者にはパンフレットと一緒に以下のものがプレゼントとして渡される。

・【アクセサリーサイズ計測シート】
・【ワンドリンク】(珈琲、お茶、ジュース)
・【ネイルオイル】


どれもこれも
今回の”匿名宝飾店”を基点に
ユーザーを研究し尽くし
動機を与える素晴らしいアイテムだ。

【アクセサリー計測シート】


オンラインでアクセサリー(主にリング)
を購入する、
大切な誰かにプレゼントする時の最大の”障壁”は

指のサイズを本人も正確に把握していない
ところ。


今回このシートを配りコーナーを設けて
あの場所で自分の指を測り、
シートに記入し持ち帰らせる事こそが狙いだ。


無料で誰もが入場可能
商品の接客もない

誰にもストレスかけずここまで誘導している。


そして、
匿名宝飾店が ”匿名” なのは9/20まで。
その後タネ明かしした時の衝撃も
計算に入れている。

驚いたユーザーはブランドサイトへアクセス。
そこには
あの時なんとなく気に入って試着したリングが。

『サイズが分からなくて買えない』

 なんて事はもう起こらない。

【ドリンク】

会場にはアクセサリーを見て回遊する展示スペースの他に、ゆっくり座ってお茶出来るスペースも案内される。

そこで案内される内容は
『SNSに #匿名宝飾店  で
シェアするともれなく皆様にプレゼント🎁』


ここで初手で渡したドリンクの効果が現れる。
“匿名宝飾店”開催期間は9月初旬だが
まだまだ暑い夏日が続く。

冷たい飲み物、座って休憩できる場所
それが無料。
渋谷から表参道までストリートを練り歩く人達にとってはあまりにも贅沢なご褒美だ。


更に
店内には至る所に照明や鏡、フォトスペースを設置。スマホだけで無く高性能なライティングやカメラまで使ったセルフィーもできる。

SNS世代、特にInstagramやTikTokのネタ探しに奔走する我々にとって
どこかミステリアス、お洒落なこの体験は
特ネタ過ぎる。

特に今回、明らかにこのブランドは
匿名宝飾店を”実売”を売り上げる施策として
立ち上げていない。

座って滞留しようが
ダラダラ写真撮りまくっていても
そもそもそれも想定内というわけだ。

メディア展開の情報だけでは
関心がある一部の人にしか届かないところを
できるだけ自然に商業色なく認知を広げる
その導線を完璧に作り上げた。

【ネイルオイル】

このアイテムは長期的で深みのあるユーザーの
動機を生み出すものだ。

アクセサリーに興味を持つ人は
手や指のケアへも関心を寄せる可能性がある事をブランドは知っていた。


ある時、ふとポーチに入っていた
ネイルオイルで指のケアをするシーン。
『あれ、コレ何処で買ったっけ、、
 貰ったんだ、、、あのイベントの時に。』



一回あたりの消費量はそこまで多くない
ネイルオイル。

メイクポーチに入っているだけで
カバンのポケットに埋もれていても
ふと取り出した時、
あのイベントを思い出すツールとして
かなり長期的に機能する。


更に
このネイルオイルが来場者ギフトに含まれた
理由はもう一つありそうだ。

このパンフレットか
ネイルオイルを帰る道中で捨てさせず、
何か持って帰ってもらうため


いくらオシャレなパッケージでも
プラスチックのボトルと紙切れはあまりにも心許ない。渋谷には至る所にゴミ箱が設置されている。

“少し勿体無い”
と思わせるアイテムが一つあるだけで
ちゃんとバッグに収まっただろう。


形に残る何かが手元にあるだけで、
記憶と体験は簡単に蘇る。



どこかアクセサリーの在り方にも似た
素敵なプレゼントだった。

Part2へ続く。





























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