日本のテレビドラマ、ここが気になる
洋画やアメリカンドラマが好きだった父親と一緒に、テレビや映画を見て幼少期を過ごした。『ナイトライダー』や『エアーウルフ』『白バイ野郎ジョン&パンチ』、『大草原の小さな家』など、枚挙に遑がない。
そのぶん、日本の映画やドラマにはあまり触れずに育った。子供の頃に好きだった日本のドラマは『西部警察』である。(おかげで今でもあらゆる乗り物やメカものが好きでたまらない。)
私の記憶が確かなら、最初から最後まで通して見たドラマは『振り返れば奴がいる』だ。何故最後まで通して見られたといえば、恋愛要素が薄かった(というかほぼない)からだろう。
純粋に推理やアクション、時に小粋な男女の駆け引きを楽しみたかった私にとって、当時のドラマの主流であったとにかく必要性のないベッタベタな恋愛要素がとてつもないノイズに感じられた。
現在は日本のドラマや映画も通して見ているが、その中でもやはりノイズに感じることがある。
・同じ役者が短期間に出演しすぎ問題
人気のある旬の役者で視聴率を稼ぎたいテレビ局側と、勢いがあるうちにどんどん顔を売っていきたい所属事務所の意図がまるみえすぎて食傷気味になってしまうし、ひとりの役者に役が集中しすぎて心身の疲労が心配になって楽しめない。
業界全体でバランスをとって、多くの俳優を広く大事に育てていただきたい。
・ストーリーの粗
結構な頻度で、無神経な展開や会話、雑な動機や平凡すぎるトリック、前の回の情報との整合性のとれてなさ、この時間ならばあと二転三転できたのでは……と思う話に遭遇する。
お仕事ものと銘打って始まったのに蓋を開けたら恋愛に重きが置かれ、肝心の仕事の描写が薄すぎていたものもあった。お仕事ものならばきちんとその業界を取材してきっちり監修してもらい、その業界の人を唸らせるような敬意をはらった作品を、視聴者としても見せて頂きたいのだ。
野木亜紀子さんや森下佳子さんのような細部に神が宿るような脚本ばかりを求めるわけではないし、ニチアサ作品のように演者の個性と成長を受けてライブ感をもって変化していく作品もアリだと思うだし、書き上がった脚本を映像にする時点で改変するプロデューサーや監督の裁量もあるという噂も耳にする。(実際、『相棒』ではこの脚本家さんがこんなシーンを書くだろうかと首を捻りながら見た場面が、撮影の段階で意図に反した演出をされていた)
もっと日本のドラマを見たいと思わせてくれる濃密な作品が増えることを、いち視聴者としては願ってやまない。
・過剰なドタバタ演出
なんなんだろうあれは。日常の生活をしていてあんなドタバタする人にはそうそうお目にかからない。不自然すぎて話の本筋が頭に入ってこなくなるし、継続視聴したい気持ちが薄れてしまう。
作り手側はあれを面白いと思っているのだろうか。謎である。
・無意味な間合い
CMに繋ぐまで演者のアップを写している時間がやたら長い作品がある。
テレビを見ている方へのファンサービスのつもりなのだろうか。私は応援している役者だろうが無駄な尺をとってアップのシーンが増えるより、本筋が充実している方が嬉しいが。とにかくテンポが悪くて驚く。
・いかにもセット丸出しな背景
アナログから地デジに切り替わり、4K8Kと映像の鮮明さと美しさが強調される時代になったというのに、何故セットの質は変わらないままなのか。
役者の肌の皺や生え際の産毛まで見えるようになったとわかっているのに、一目で発泡スチロールとわかる岩やコンクリートや、いかにもベニヤです!という質感の壁はどうにかならないのだろうか。
予算の問題で変えられないのか、そもそも質を上げる必要性を感じていないのか、それとも画面越しの視聴者にはわからないと高を括っているのか。
いずれにしても学芸会感が拭えなくなってしまうのが勿体ない。
・明るすぎる照明
これは上記のセットの問題にも関わっている気がするが、照明が明るすぎると恐ろしく安っぽくなるし、現実感が薄れる。
リアルな生活の中でそんなにビカビカに照明はつけない。
『平清盛』で暗すぎる画面が議論の的になった過去もあり、日本の映像業界はそういう過剰な明るさが指定されているのかとも思ったが、『封刃師』や『アンメット』では画面全体のトーンが抑えられているので、これからは変わっていくのかもしれない。
というか変わってくれないとつらい。
・外国へのリスペクトの不足
外国人の役の場合その国出身の役者を使うことが近年多くなったが、この国の人にその名前は付けんだろうとか、その衣装のアレンジはやりすぎではとか、そういった粗が目立つ。日本は大和民族が多くを占める故に、民族の独自性に対して無神経な印象がある。世界に向けて発信する作品を作るなら、これくらい問題ないだろうという甘い認識は改めた方がよいのではないか。
日本のドラマにもおもしろく十分に満足できる作品があるだけに、全体的な底上げを望んでやまない。