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春を待つ。

今、春を待っている。


春に、わたしは母になる。



2019年8月、夏休み。

夫の運転で、新潟県から、岐阜県や広島県を経由しつつ、九州に旅行に行った。

わたしも夫も九州は初めてで、福岡、長崎、佐賀、熊本、大分を巡り、四国に渡って、義実家のある岐阜に戻る予定だった。元々予報は出ていて覚悟していたけれど、台風のせいでルート変更を余儀なくされた。

福岡で美味しいものを食べたり、佐賀で素敵な食器を買ったり、長崎で台風のために作戦会議をしたり、神戸でゴキブリの大群に遭遇したり、いろんな場所に行き、いろんなことをしたけれど、ずっと頭の隅で気になることがあった。

本来ならば、旅行中にくるはずのアレ…生理が、来なかった。

その前の月、生理痛や生理に伴う症状が辛すぎて、仕事を休んだ。下腹部や腰だけじゃなく、胃まで痛くなった。そんな爆弾みたいなものを抱えて旅行中に生理がきたらどうしよう、できる限りの対策はしておこう、と旅行前から漢方薬を内服して備えていた。

ピルをやめてから早くなることも遅れることもあったし、今回も遅れているだけなのかもしれない。でも、もしかしたら、、、

結局、一度痛み止めを内服したきり、痛みがあっても我慢した。大丈夫だと確信が持てるまで、薬は飲んじゃいけない気がした。

旅行を終えて義実家に戻り、夫にも伝えてから妊娠検査薬を使用した。

結果は、陽性だった。

ああ、やっぱり、そうだったのか。わあ、そうか、そうなのか、妊娠したのか。

嬉しい気持ちと、どこか他人事のような気持ちと入り混じったような不思議な感覚で、手が震えた。

夫は、喜んでくれた。

「おお、よかった、おめでとう!」そんなことを言ってくれた。

以前から、子供について話し合う度に揉めていた。早く子供が欲しかったわたしに対して、夫は、子供は嫌い、いらないと言い続けていた。妊娠がわかった時に二人揃って『よかったね、おめでとう、嬉しい』と思えるまで子供をつくるべきじゃないと思っていたので、心の準備ができるまで何年も待った。だから、本音は違ったのかもしれない。でも、わたしの前ではちゃんと喜んでくれた。それだけで十分だった。

検査薬で調べただけで正確ではないし、もしかしたら違うかもしれないと言ったけれど、せっかく義実家にいる間に分かったのだから、と夫から義両親に妊娠したことを伝えた。照れながら報告する夫はなんだか嬉しそうだった。


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関心がないと思っていたけど、何度も一緒に健診に来てくれた。女の子だとわかった時にはちょっぴり残念そうだったけれど、エコー動画を見ては自分に似ていると嬉しそうにしていた。

可愛らしい表紙の名付けの本を買ってきてくれた。

お腹に向かって声を掛けたり、優しくお腹を撫でてくれた。

照れくさくて、素っ気なくしてしまったけれど、夫が少しずつ変わっていくのが嬉しくて堪らなかった。

友達で、恋人のような夫と、一緒に親になるというのは、どんな感じなのだろう。

未知との遭遇にわくわくしている。





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