さよなら、またね。

よく知った街で君と何も考えることなく歩いて、ただただ愛おしくて幸せだなぁ なんて考えたことを今でも覚えている。

電話は数日に一回、それだけで満足だった。電話越しに笑う声が好きで仕方がなかった。好きというより、愛おしかった。私から自分の気持ちを明かすことはなかったし、君がそれをすることもなかった。付き合うなんてそんな話題は出してはいけないように思えた。そんな私たちは一度だけそんな話をしたことがあった気がする。会話の終わりは至って簡単だった。「終わりが見えているから」の一言だった。

それからくだらないことも、くだらなくないことも、いろんなことを話した。

「好きは扱いが難しいよね」
それが君の口癖で、言い訳で、優しさで、強さで、そして、弱さだった。

君は良い意味でも、悪い意味でも私によく似ていた。なんて言ったら、君は怒るだろうか。僕は君と違うって言うかな。わからない。

あれから電話の回数は減った。毎日のように交わしていたメッセージも、同じように減った。それでも、少し足りないくらいがちょうどいいって笑えてたのは、私が強かったからだろうか。弱かったからだろうか。臆病だったからだろうか。それとも、私が君のことを好きだったからだろうか。

これから先、私が君に会うことはあるのかな。私は会いに行くかな、君は会いにくるかな。わからないな、わからない。

ただ一つ思ってしまうのは、また会おうねなんて言わなければ、このお話はあの日で終わってたのにってこと。
君が最後にくれた「またね」を思い出す。

さよなら で終われない短編小説はまだ続くかな。

さよなら、またね。



*2018年8月16日に書いたものです。*

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