月を見ながら告白をしました。

星座の知識がないままに、僕たちはそれらしい三角形を見つけて、「あっ夏の大三角だ!」と言った。綺麗な満月はちょうど公園に植えられた木々によって遮られていて、そこから月明かりが漏れている。それを僕らは「月が綺麗だ」ということにした。夏にやりたいことリストをつくり、「公園でビール」を実行する。彼女は350mlの缶ビールに僕はグレープフルーツサワーを片手にベンチに座る。
聞きたい曲があると言って、僕は銀杏BOYZの二回戦をiPhoneから流した。
「クソみたいに君が好きです」と「一緒の月に帰ろうよ」と峯田和伸が歌う。静まり返った公園に二回戦とそよ風に揺れる木々の音だけが聴こえている。

「付き合ってください」の一言が勇気がなくてどうしても言えなかった。それは恋愛から逃げていたからなのか、恥ずかしかったからなのか自分でも分からない。一言が出ない自分に情け無いと思う自分とその一言に重みを感じている自分がいることに気付いた。


「あのさ、付き合ってくださいってこの間会ったときに言いたかったんだけど、言えなくて、今日もいつ言おうか考えて、言うタイミング逃して、今も銀杏BOYZの曲流して言おうと思ったけど、言えなかった」

こわくてこんな簡単な言葉がどうしても言えなかった。最高にダサかった。つらつらと言えない言い訳を勝手に述べていた。それでも何も伝えられないよりは良いと脳みそが決めたのだと思う。

「それ、私に言っちゃうんだね」

彼女は当たり前に返した。さっきは空気を読んで静かにしていた蝉が鳴き出す。

「take2やらせてください」

「あなたといると自分が素直で素のままでいれることがすごく嬉しいです。素になると卑屈でめんどうな自分なのに、それを受け入れて隣で笑ってくれるのがすごく嬉しいです。あなたと一緒にいたいです」

「付き合ってください」


「それに対して私は何て言えばいいの?」

「嫌ですかはいって言って欲しい」

「はい、ふふっ」

彼女はダサい告白に笑って返事をした。

下手くそでカッコ悪いロマンチストの上に、夏の大三角ではない、三角の星座が瞬いていて、それは名もなき二人だけの星座へと変わる。
ベンチから立ち上がると満月が2人を照らした。

「満月!でっか!」

「さあ、一緒の月に帰ろう」

クソみたいに君が好きです。



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