薄霧の中で #04出産

転院を受け入れてもらった翌朝、陣痛はきた。

小6さくらと、小4まさとに、
「今日からママは入院になってしまうと思うけど、叔母に来てもらうようにするから安心してね」
と、10分おきにきゅーっと痛むお腹をさすりながら学校へ送り出す。

痛みはまだまだ序の口だが、一応病院へ連絡すると、「3人目の経産婦だし、荷物を持って今から来たほうがいい」と告げられる。
タクシーで病院に向かいながら、私は『無』だった。
不安も希望も恐怖もそこにはなかった。
今やるべきことをやる。それだけだった。

「3人目の経産婦」は、陣痛室ではなくいきなり分娩室に通された。
定期的な波はあるものの、待機してくれている看護師さんに申し訳なくなるほどまだまだ余裕な私。
姉や友達にLINEで陣痛実況中継したり、snowで写真を撮ってみたり、、、
さくらと、まさとの時は立ち会い出産だったし、今回も当たり前のように主人が一緒と思ってた。
今回のバースプランは、カンガルーケアがしたいとか以外に、
体力が落ちている主人が座れるように椅子を用意してほしいとか、主人が立ち会う上でのお願いとかも書いていた。
まさか、一人で出産になるとはなぁ。

あまりに落ち着いていたし、他の方が先に陣痛が進んだこともあり、陣痛室に移動して2時間後。
急に痛みが強くなる。
10年前の出産を思い出し、いきまないように「ひひふーーーヒヒフーーーーーーー!!!」
だめ、なに、イタイーーーー!!!!!!
さっきまでの余裕はどこへ。突然痛みがピーク!

堪えきれずナースコール。
「はいはい〜大丈夫ですかぁ?」ってのんびりモードだった助産師さん。
内診で
「あ、これ、もう産まれる!急いで!!」

一気にわらわらと人が集まる。
車椅子を持ってきた看護師さんも見えたが、
「無理!このまま行こう」と、ベッドのまま分娩台へ。
その間にも陣痛は進み、
「いきんじゃダメよ!深呼吸してーー」
「ふーーーーーーーーーー」
む、むりーーーー

プチ パッシャーーン

なにこれ?破水??
更に周りはスピードアップ。
分娩台に乗せられ、
「はい、足上げて!」
「あ、まだ足台用意できてないです。すみません!」

助産師さん達も大慌て。
と、始めこそバタバタしていたが、すぐに体制整い分娩に。
さすが大学病院。

イキんでOKとなれぱ、こちらも頑張るのみ!
三度目の経産婦、やはり早い。一気に進む。
3回目のイキみで出てきてくれた。

しかし、
産声が聞こえない。

私はどっぷりハマってたドラマ「コウノドリ」が頭をよぎる。
出産は奇跡の連続。無事に産まれてきてくれることは当たり前じゃない。

やめて!お願い!!
パパ助けて!!!!
連れて行かないで!


ん、ん、ほんぎゃーーーー

泣いた。
息してる。
よかった。。。

気付けば助産師さんの手を力いっぱい握りしめ、号泣していた。

よかった。
パパありがとう。
無事に生まれたよ。
パパ目覚めて。一緒に喜んで。

お願い



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