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半年ぶりにはるまきごはんが魅せた、夢の続きと夢の終わり(11月24日「ネオドリームシネマ」ライブレポート)

2019年11月24日 夕方。

白金高輪駅から地上に出る。見上げればはるまきごはんが描くアニメMVのような、もったりとした色彩の群青空が広がっていた。

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会場に入ると、スクリーンにははるまきごはんが描く夢の世界が映し出されていた。今日は彼の半年ぶりのワンマンライブ「ネオドリームシネマ」、その2日目の公演となる「NIGHTMARE story」を見に来た。

定刻を迎え、アニメーションが流れる。不思議な夢の世界で、女の子「ティーナ」が身支度をし、出かけていく。友人の「メルティ」と待ち合わせをしているようだ。

今日は、曲の合間にこのようなアニメーションムービーが流され、ライブとともにストーリーも進んでいく形だ。これらの映像は全てはるまきごはん自身、そして彼が立ち上げたアニメーション映像制作スタジオ「スタジオごはん」が手がけているという。ボカロPとして音楽活動を始めた彼は、若くして作詞作曲、動画制作、そして歌唱や演奏と、1人で何役もこなすマルチクリエイターなのである。

なお、彼のクリエイティブの根幹については、realsoundのインタビューが詳しく迫っている。

さて、サポートのバンドメンバー、そしてはるまきごはんがステージに登場すると、最初に放たれたのは人気曲「メルティランドナイトメア」。

軽快なリズムに手拍子が上がり、観客達は心地よさそうに体を揺らし始める。たゆたう夢心地。はるまきごはんの作る世界は、どこまでも一貫している。

どこか気だるく、一方で透き通るような声が「セブンティーナ」を歌い上げ、続く「アスター」ではやや強めのドラム音がリードしてくれる。

「天気予報では雨だったけど、降らなくてよかったです。今日はぜひ最後まで楽しんで行ってください」と挨拶を贈ると、爽快なチューン「コバルトメモリーズ」で五感ごと支配する。視界いっぱいの映像、全身を包む音楽に、ここがどこだかわからなくなるほどに没入していく。アウトロは和田たけあきとのツインギターで余韻を残した。

今回のライブは、今年3月に行われた「ドリームシネマ」を拡張し、2日間の拡大版で再演したものだ。世界観は共通しているが、ムービーのボリュームといい、キャラクターに声優の演技が付されている点といい、まさしくパワーアップしている。

ステージ上にキャンドルが設置され、ここからはアコースティックパート。その冒頭では、初の2Days公演ということで、1日目と同じMCをしていいものか悩むという初々しい(?)一面も。自身の初ライブとなった雪ミクのステージについて触れた後には、2020年の雪ミクテーマソング担当に決定したことを改めて報告した。

「Marine Grey」は夜の闇に光る雪か、はたまた満点の星空を想起するキラキラとした照明とともに。続く「地球をあげる」は柔らかくギターを抱きしめ、小さな子供を寝かしつけるように優しい声で歌い上げた。

アニメーションムービーでは、仲良しのメルティとティーナに、別れが近づいている。そして、ライブのクライマックスも。

「僕の好きな曲をやらせて頂きます」との紹介で披露されたのは、アルバム「BLUE ENDING NOVA」収録の「フォトンブルー」。本編のラストには、「最後の曲、ご覧ください」と独特な曲振りで「ドリームレス・ドリームス」。「生きてることってなんだろな 生きてる人は怖いからな」のフレーズが、やけに心を揺さぶった。

拍手喝采の中、メンバーはステージを去る。が、オーディエンスはまだまだ夢から覚めたくない様子。バラバラだった拍手は気づけば何かを訴えるような手拍子となり、やがてアンコールの波へと飲み込まれて行った。

離れ離れになったメルティとティーナはどこへ行ってしまったのだろうか。物語の続きは、もちろんこの曲とともに。前回のライブの後、6月に初音ミク歌唱・本人歌唱の両verで公開した「再会」だ。「ドリームレス・ドリームス」での疑問に答えるように、「生きることってこうだろう 息を吸うことじゃないだろう」と力を込めて歌う。

2Days公演の、2日目だったこの日。次の曲が終われば、はるまきごはんに会えるのはいつになるだろう。彼自身は「名残惜しい」と言いつつも「言い残したことはないか考えてるんですけど、えっと、ないです」とゆるいMCで観客を和ませた。

本当の本当に最後、と披露された「約束」。

命は綺麗なわけじゃない
美しい人生なんてない
呼吸が上手く出来ないのは
生きてる証拠だ

これまではるまきごはんが手がけた数々のMVが走馬灯のように流れていく演出には、聞き入っていた観客からも思わず「わ…!」と声が上がった。

最後にもう一度お礼を告げると、はるまきごはんは、今度こそ本当にネオドリームシネマを終幕した。

ライブが終わったって、目が覚めたって、心に残った音楽はゼロにはならない。はるまきごはんの夢の世界の創作は続くのか。あるいはまた別の、新しい世界を生み出すのか。次の物語が待ち遠しい限りだ。


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