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【後編】デザイナーがワークライフミックスを目指す話

こんにちは。
Hi! Design クリエイティブディレクター / グラフィックデザイナーの森田賢吾です。

僕の働き方や生き方に関して考えていることを書いたこのnote。前編では、Hi! Designをはじめた経緯と、Hi!に込められた裏テーマ「ハイになれることを仕事にする。」を作るまでの経緯や想いを書きました。

前編
https://note.com/preview/n798444547044?prev_access_key=79cd741cf55d249f27f13b13141749ab

後編では、「ハイになれることを仕事にする=ワークライフミックスを実際に目指しはじめたよ!」ということを書きたいと思います。


原体験を思い出す

Hi! Design設立を検討していたコロナ禍、外に出られない期間が続いていたこともあり、今までにないくらい「外に飛び出して自然と戯れたい!」となっていました。そしてふと、昔大好きだった釣りのこと、そして憧れていたフライフィッシングのことを思い出しました。(フライフィッシングとはイギリス発祥の毛鉤を使った釣りのこと)

遡ること約30年前、小学校時代に釣り好きな父の影響で釣りを始め、友人達と近くの川にコイやフナ、タナゴなどをよく釣りに行っていました。

ある日釣り友の一人であるジローの家に遊びにいったとき、リビングに置いてあるたくさんの魚の剥製や、毛鉤、見たことのない格好良いロッドが目に入りました。ジローのお父さんはフライフィッシャーだったのです。そのとき見た魚や道具の美しさが強烈に印象に残り、その後ジローのお父さんとも釣りに行き、フライフィッシング独特のキャスティングの格好良さにも魅せられ、いつかはフライをやろう!と憧れを持っていました。

そして両親が水産大学出身ということもあり、魚大好き少年だった僕は、フライのターゲットの一つであるヤマメに魅せられ、その絵ばかり描いては、いつか始めるフライフィッシングに想いを馳せる日々を送っていました。今思うと、絵を描く楽しさを知ったのもヤマメがきっかけだったかもしれません。

30年ぶりに描いたヤマメ

ですが、中学に上がるとだんだんと周りの影響を受け始め、次第にあれだけ憧れたフライや大好きなヤマメの存在を忘れていきました。

そんな原体験をふと思い出し、少しながらも自由に使える時間ができ、やるなら今しかない!ということで、妻に話すと妻も興味を示し、すぐに二人で川に行き、毛鉤を使った釣りをはじめました。(我々夫婦は「興味持ったことは必ずやる。」をモットーにしているので行動は早い)

念願のヤマメとの出会いもあり、その後はもう… 道具を揃え、自分で毛鉤を巻き始め、遠くの川へ行くために車を買う、という具合に猛スピードでフライ沼にハマっていくことに…

山梨県忍野釣行

ワークライフミックスを目指す

「ハイになれることを仕事にする。」という言葉も出来始めたころ、このフライフィッシングのワクワクと、仕事のワクワクを合わせたら毎日楽しいんじゃないか?と思うようになりました。“努力は好きに勝てない”とも言うように、仕事にも活かせたら最強だよね!と。また、セルフブランディングについて考えていたこともあり、「フライフィッシング×グラフィックデザイン」を一つ個人のテーマに挙げ、趣味や好きなことと仕事を混ぜていく、ワークライフミックスを目指すことにしました。

ワークライフミックスへの第一歩

まずは何でもいいから形にしようと、釣りの際に手を拭く手ぬぐいをデザインすることにしました。釣り人の中では、尺サイズ(約303mm)というのが特別なサイズで、釣った魚が尺を超える場合は尺ヤマメのように呼んでいます。では、釣り場で尺サイズを計れるスケール機能のある手ぬぐいを作ろう!と企画し、デザインしました。題して「尺ヤマメ&尺イワナ手ぬぐい」。

最低ロッド30部ほど作成し、周りの釣りや魚が好きそうな人、数人に配りました。試しに15部ほどをSNSで売ってみようと告知してみると、どこでどう知ってくれたのか一瞬で売り切れてしまいました。そんな「尺ヤマメ&尺イワナ手ぬぐい」を配った内の一人が、自身のSNSにアップしてくれたのですが、それが日本のフライフィッシング最大手の方の目に留まり、紹介いただくことになりました。

尺ヤマメ&尺イワナ手ぬぐい

そこから、商品へのグラフィック提供や、釣り雑誌への取材依頼など色々とお話をいただくように。

来年1月には、僕が師匠と慕う方の主催イベント「Fly Fishing Forum(FFF)」が開催予定で、そのネーミングやコンセプトの整理、ロゴ、キービジュアル、SNSなども担当し、ブランディングに近いことにも携われるようになってきました。このFFFのアウトプットには、あるフライ雑誌の編集長の方から「新しい風を感じますね!」と嬉しいコメントもいただきました。現在、2024年春に開催される別のフィッシング・アウトドアフェスのプロジェクトも進行中です!

ハイになれることを見つけ、動いて、発信することで、あっという間に驚きの展開があり、自分でもびっくりしている次第です。

TIEMCO × Foxfire イベントフラッグデザイン
Foxfire Amago True to nature Special Products デザイン
Fly Fishing Forum アートディレクション・デザイン

見えてきた個人のミッション

趣味嗜好が近い人同士は驚くほどすぐに親しくなるもので、釣りを初めて2年ほどですが、これまでフライフィッシングを趣味とする方や、釣具屋を営む方、フライのツールを作って生計を立てている方などさまざまなフライ好きな人達と出会いました。みなさん本当に親切で、常にウェルカムな姿勢で色々と教えてくれるし、少年のように目を輝かせながらフライの話をしてくれます。その中で良い話もある一方、若い人の流入が少なく、フライ人口がなかなか増えないことや自然環境と釣り人の関わり方など、フライフィッシングが抱える課題もしばしば耳にすることに...

先輩方と北海道屈斜路湖へ

次第にフライフィッシングや、そこに関わる人たちのために何か自分にできることはないかと考え始めました。初めは自分のワクワク、セルフブランディングのために「フライフィッシング×グラフィックデザイン」を目指そうと思っていましたが、次第に「フライフィッシングにグラフィックデザインで貢献したい!」という想いへと変わってきました。そして、それを当面の僕個人のミッションとすることにしました。「ワクワクして気分がアガる!そんな夢中の先に自分の存在意義があるんだろうと。」と2年ほど動いてきた結果、自然と個人としての存在意義を見つけることができていました。

今は、フライはもちろんそうですが、そこにまつわる魚や川、もっと大きく自然のことなどにもグラフィックデザインやブランディングを通して貢献していきたいと考えています。まだ具体的なプランがあるわけでもないですが、近々は、同じくフライ沼と植物沼にハマっている妻と何かやろうかなと考えています。

もちろん、釣り専門デザイナーを目指しているわけではないので、釣り以外でも同じような姿勢で臨み、興味を持ち、ワクワクしながら、たくさんのプロジェクトに携わっていきたいと考えています。

なぜか妻の方が大きな魚を釣っていた頃に作ったグラフィック

最後に

僕の好きな映画「タクシードライバー」のマーティン・スコセッシ監督の言葉で、「最も個人的なことが、最もクリエイティブである」という言葉があります。ポン・ジュノ監督がカンヌ国際映画祭のスピーチで引用して話題になりました。

やはりクリエイターとして働く身としては、クリエイティブなものを生み出し、自身も際立った存在でありたいと思うものです。ただ、いくら憧れを持とうが何者にでもなれるわけでは無く、自分は自分でしかなく…

だからこそスマホを見ればいろんな情報が嫌というほど入ってくる環境のなか、外ばかりでなく、内と向き合い、自分が何にワクワクして、何を想っているのかということを考え、素直に受け入れ、実践し、発信してみる。そうすることできっと、真のクリエイティブなものが生み出せるし、自分の生きる意味や働く意味がさらに見えてくるのではないかな、と思っているところです。

その答えを探すために今日も毛鉤を巻くのでした。