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アダムさんは女性ボーカルが好きだと言った。

仕事の休憩中の事。音楽の会話を楽しんでいた。
アダムさんは女性ボーカルが好きだと言った。

年齢がひとつ下のアダムさんとする、音楽の会話には「打てば響く」ような滑らかな流れを感じることができる状態だった。

お互いに80年代音楽の思い出のシンパシーを、カラダの何処かしらにしまっていて、お目当ての抽斗を探し当てるスピードは速い。

お互いの抽斗に仕舞われていた女性シンガーは、トランプのカードを並べるみたいにきちんと大切に保管されている。そして、二人の抽斗にはいくつかの同じカードが並べられていた。

その日、二人が捲ったカードは同じ女性シンガーだった。

カードには「デビー・ギブソン」と書かれていた。
二人はその瞬間、驚喜(きょうき)した。

二人が同時に口に出した彼女の曲は一緒だった。

それは「デビー・ギブソン」代表作の「ロスト・イン・ユア・アイズ」

この曲を聴けば、ぼくの細胞が阿波踊りみたいに反応し回転速度が上がってしまう。しかもこの曲は、バラード曲だ。だのに、、、なぜ?

「メンタル・タイムトラベル」というものの影響だろうか。

もちろん、ほろ苦さや反省やら、後悔とか悲しみ怒りも練り込まれて来るけど、それはどうしよもないことだ。あの時のぼくが受け取ったモノだから、今のぼくはそっとやさしく包み込むだけ。

それでも、ぼくはこの曲が好きだ。酸いも甘いもなんとやらだから。

1989年(昭和64年)はとてもハードな仕事をしていて(深夜、帰宅する為に車を運転していると街中の建物の屋上にいっぱい異星人らしき者が見えてしまうほど疲弊していた)、疲れきったぼくの心とカラダを癒してくれたのが「デビー・ギブソン」の「ロスト・イン・ユア・アイズ」なのだ。

カセットテープに録音して、愛車ISUZU「ジェミニ」の中で何回も何回も聴いたものだ。

目を瞑っても瞑らなくてもよい、あの時のことをイメージする。すると、半分開けた車の窓からは新緑の息吹が入り込んで来るのを感じ(ぼくのジェミニはパワーウィンドウではなかった)、カーステレオ(今じゃカーオーディオだな)から流れてくる「デビー・ギブソン」の歌声は、爽やかな香りで車内(今だとぼくの狭い部屋)を満たしてくれる。

いつも「デビー・ギブソン」の歌声は、ぼくをやさしく包み込んでくれた。

あれから30年の月日が流れた。

「ロスト・イン・ユア・アイズ」を聴くと、懐かしさと共に新鮮な感覚になれる。何でだろう。もしもあなたの記憶の何処かに「デビー・ギブソン」が存在しているのならば、是非ともあの頃のあなたを現在に招待し、驚喜させてみてはいかがでしょうか。

もちろんですが、この記事を読んで頂いて初めて「デビー・ギブソン」を知ったわ。知ったよ。という方も是非聴いて見てくださいね。

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