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食中毒が増えてくる時期…食中毒を疑われてた場合には

雨が降ってジトジトと高温多湿の環境になる梅雨から夏にかけては、食中毒が発生しやすい時期になります。
食中毒菌は環境中や人間の体の表面、お腹の中などに広く存在しているため、食品の取り扱いを一歩間違えると食品に付着して、ある一定以上に増殖した『細菌・ウイルス』や『細菌が作り出した毒素』が付着した食品を食べると食中毒が発生します。この時期の食中毒は細菌によるものが原因になることが多い時期です。
清潔(菌をつけな)・迅速(菌をふやさない)・殺菌(菌をやっるける)」この3原則が、食中毒の予防には大切なことです。
 食中毒とは食中毒菌が付着した食品や毒素、有害な物質が含まれた食品を食べることによって下痢、腹痛、あるいは嘔吐、発熱などの健康被害が発生することをいいます。主に胃腸障害ですが、時には呼吸麻痺、脱水、腎臓障害などで死亡することもあります。
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)」(施行日: 令和三年二月十三日(令和三年法律第五号による改正))契機に原因物質の種類にかかわらず、飲食に起因する健康被害food borne disease(飲食物媒介疾病)と捉え、食中毒として扱うことが明確化されました。
 同じ飲食物による健康被害でも栄養障害、金属片などの異物混入による物理的障害などは、食中毒としては取り扱いません。
食中毒の発生しやすい時期は、サルモネラ菌、ブドウ球菌、腸炎ビブリオによる食中毒は6~9月に多く、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌による食中毒は周年にみられます。また、ノロウイルスによる食中毒は11~3月に多く発生し、毒キノコやフグといった自然毒による食中毒は秋、冬に集中します。
 今後は、飲食に起因する健康被害については、原虫や寄生虫(アニサキスなど)による飲食に起因するものも食中毒として取扱いに食中毒を明確化し被害の拡大防止、原因追究をすることになりました。


私が、病院に勤務していた時に経験した事例です
(プライバシーの関係で少し改変していあります)
病院の顧問から内線での連絡があり「おい食中毒だぞ!院長からなにも言われていないのか?すぐに院長に確認を取なさい」と言われ、おそるおそる私は、病棟へ情報確認にいきました。
院長に情報を確認後に、顧問に電話をして
私「うちからではなく、外来患者が食中毒で受診したそうです」と伝えたところ
顧問「驚かせて悪かったよ、外からの患者だったんだ、ゴメンゴメン。食中毒で保健所に届けた、届けるとういうことを言っていたのでね。でも食中毒事故を起こさないように十分に注意をしてね」と言われました。
 この件の食中毒、救急外来側のトイレの方からは「ウゲェー」という大音量が何度も聞こえていました。たぶん、その患者さんのようで何度も吐かれている感じでした。
その方は近隣の施設内のレストランで、この日に仕事先のお仲間と2人でお昼に食事をされたそうです。
喫食時間帯から発症までの時間、症状からブドウ球菌によるものだったようです。
この患者さんは、その後、ご入院されました。
 それから1時間もしないうちにご一緒されていた方も当院を受診にいらしました。この方は診察後に帰宅されたようです。
遠くから部屋越し?壁越し?にこの嘔吐の音を聞いたのとカルテ等の情報からだけですが、この症状の酷さを学ぶことができた事例でした。
 保健所に届け出たので、顧問はそれだけを知ってあわてて栄養士である私に電話をしてきたのだと思います。
 食中毒が出る?起こすと?と様々な面で大変な出来事となります。これは、飲食店、病院、学校、旅館、老人ホームなど多人数の方へ食事の提供しているどこでも同じです。
食中毒が起きた場合にはニュース等でも報道されています。報道されているものは一度に多数の中毒者が出た場合のほんの一部です。報道はされていませんが、食中毒が起こる場所は画像にあるグラフのように、飲食店や家庭のことがほとんどです。家庭では人数が少ないですのでニュースになりにくいだけです。
 先ほどの私が経験した事例の中で「保健所へ届けた?届ける?」ということを書きましたが、食品衛生法58条と関係条文に「食中毒の患者もしくはその疑いがある者を診断し、又はその死体を検案した医師は、直ちに最寄りの保健所長にその旨を届け出なければならない。」とされています。
(この「直ちに」とは食中毒の場合は、「24時間以内」となっています。)その規定により、私が当時勤務していた病院の病院長は、保健所に届け出を行いました。
簡単にですが、食中毒事故が起きた際の届け出からの一連の流れは以下のようになります。
~~~食中毒届出の流れは(食中毒発生から終息までの概略)~~~
◆◇◆STEP0.食中毒発症◆◇◆
・食事をして原因物質を摂取する
・食中毒を発症する
・医療機関を受診する
◆◇◆STEP1.医師から保健所に連絡(報告する内容)◆◇◆
・医師の氏名、医療機関名(住所)
・患者の氏名、住所、年齢
・食中毒の原因(疑いも含む)
・発病年月日、時刻
・診断年月日、時刻
◆◇◆STEP2.保健所の職員が調査、検査◆◇◆
・患者、患者の家族、友人などの関係者から患者の発症の状況、食べた食品、利用した施設などを詳しく聞きとる。
・患者を診察した医師などのからの検査の状況や他にも同様な患者が受診をしているのかなどを聞き取ったりして情報を綿密に収集、それらのデータを集めて分析する
・発症に関係する施設等への立ち入り調査と検査
・患者の便培養検査、食べ残し・残っている素材、施設で保管してある保存検食の細菌検査、調理場のふき取りの検査、調理担当者の緊急便培養検査など
◆◇◆STEP3.原因特定◆◇◆
・原因施設の特定(原因となった施設で営業施設かどうかは問わないので家庭も原因施設になります)
・原因食品の特定(人体に取り込まれる際に病因物質が含まれていた食品のこと)
・病因物質の特定(食中毒の症状を引き起こしたと考えられる物質のことで、細菌、ウイルス、化学物質、動物毒、植物毒などがあります。患者の症状、潜伏期間などから判断されることもあります)
◆◇◆STEP4.対策◆◇◆
・原因となった調理施設の営業禁止や停止命令
・調理場等の施設の消毒
・原因食品の回収
・施設の衛生指導
         など
◆◇◆STEP5.終息◆◇◆
・罹患患者の治癒
        など
 食中毒の届け出は、医師により保健所への連絡もありますが、一般の人からの腹痛、嘔吐などの体調不良を訴える苦情の通報も保健所では参考にしています。このような通報のことを「有症苦情」といいます。
食中毒事故は、探偵が推理をしながら犯人を捜していくのと同じです。
なに物も犯人(原因物)と疑われて、やっと真犯人(真の原因物質)が見つかります
 食中毒と断定するのは、食事や食品と、それを食べたことにより発症したこととの因果関係が立証される必要があります。簡単な立証方法は、同じ病原菌が患者の便と保存食などから検出されることです。しかし、保存食や食べ残しなどがない場合は、この方法は不可能です。したがって疫学調査の結果から判断されることも多くなります。
 どのような食品を誰が食べ、どのような症状を誰が示したかを調査し、食事や食品と症状の因果関係をデータから直接割り出し立証していく一連の方法論が疫学調査になります。
 ちょっと長くなりましたが、今回は「食中毒と疑われ、食中毒だとわかるまで」のことを書かせていただきました。皆様、食中毒にはご注意くださいませ

参照:https://www.facebook.com/127705934026621/photos/a.161143500682864/482684995195378 より抜粋


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