プロジェクトで起きる問題への向き合い方 ~今日この問題を伝えてくれてありがとう!~

はじめに

株式会社Craft Eggでアシスタントプロジェクトマネージャー(以下APM)をしている重谷です。

背景

現職ではアプリゲームの運用・開発プロジェクトでのAPM業務を担当していますが、過去には別の業界の会社で、企業向けシステムの開発をするプロジェクトを十数年間経験し、数多くのプロジェクトに関わってまいりました。

その中にはうまくいかなかったプロジェクトもたくさんありました。いわゆる「デスマーチ」的な状態も経験しました。人間関係や雰囲気があまりよくなくいざこざの絶えなかったプロジェクト状態も経験したことがあります。

またその反対に、とてもうまく進んだプロジェクトも経験できました。開発途中でバグが止まらない状態から、プロジェクト一丸ポジティブな雰囲気で取り組め、本番稼働で問題を起こさないところまで超回復、ということもありました。

総じて「プロジェクトをうまく進めていくこと」はとても難しいなと感じています。そして、うまく進む・進まないに関わらず、プロジェクトを進める中で「問題」が多く起きることは共通していたなと感じています。

この記事のテーマ

そこで今回は、自分の経験を棚卸して「プロジェクトで起きる問題への向き合い方」というテーマで整理してみました。

うまく進んでいないプロジェクトの方には、何かひとつでも参考になる考え方があったらと思います。

Craft Eggの方向けとしては、重谷の考えていることや価値観の一部の共有になれば幸いです。(日頃、推しの話しかしてないかもなので笑)

サマリ

記事を書いたら長くなったので、いろいろ考えた結論だけ先に書いておきます!

 ■プロジェクトでは日々問題が起きる。問題を受け入れ、感謝し、前向きに取り組む文化が大切

 ■そうした状態には一朝一夕ではなれない。日々一人ひとりのコミュニケーションや、組織としての施策などを通して、育み、維持することが大切

1.プロジェクトを達成するには、日々起きる問題の解決が必要

この記事におけるプロジェクトとは

この記事内では「プロジェクト」という言葉をよく使いますが、↓の意味で使っています。
 ■プロジェクト:「限られた期間」で「目標を達成するため」に実施する「複数の人間での活動」

「引っ越し」や「転職」など個人の活動もプロジェクトだと思ってますが、この記事では仕事などで「複数の人が関わるもの」、特に100人、1000人など大勢の人が関わる活動をイメージして使っていきます。

どんな仕事でも、多数の職種の専門家が力を合わせて価値を出していると思います。例えばいま所属しているアプリゲーム開発においても、企画をする人、シナリオを書く人、イラストを描く人、アプリゲームをエンジニアリングする人、多くの人に遊んでもらえるようにプロモーションしていく人、お客さまに安心して使ってもらえるように情報を適切にお知らせしたりお問合せに受け答えする人、そして、そういう多くの働く人が働きやすい環境を整えていく人…。多くの人で協力しているからこそ、大きくて素敵な仕事ができると思います。

その反面、人数が多ければ多いほど、この後考えていく「問題を解決する難しさ」は大きくなりやすいとも感じます。

プロジェクトは本質的に難しいもの

いきなりですが、プロジェクトはとても難しいものだと思います。

まず、達成しようとする「目標」自体が難しいです。特に、会社の事業などで行うプロジェクトの場合、いまの世の中とても便利なもの・サービスで溢れていますので、お客さまに選んでもらうためには何かひとつ抜き出た独自性のある目標を達成しなければならないと思います。独自性があるもの=世の中でまだ一般的にされてない新しいこと、ですので、当然達成するのは難しいと思います。

また、「限られた期間」で行うことも難しいと思います。夏休みの宿題であればまだ最終日に徹夜すれば終わらすこともできると思いますが、大きな仕事で最終日だけで作りきることはできません。プロジェクトの仕事は、誰かの仕事が次の誰かの仕事につながっていくことが多いです。「最終日に宿題をやりがちな人間」が「大勢」集まって最終日までに目標を達成するのは、本来とても難しいことだと思います。※

 (※宿題を計画的にやる方はすみません!_(._.)_この記事を前日に書いている自分は確実に「最終日に宿題をやりがちな人間」です笑)

プロジェクトでは「問題」が日々おきる

こうした難しい要素しかないプロジェクト活動においては、日々問題が起きます。

ここで使っている「問題」という言葉も、この記事内での使い方を書いておきます。
 ■問題:プロジェクトの目標・理想状態と、現状とが乖離している状態、その乖離内容

プロジェクトが「難しい目標を、難しい条件下で達成しようとする活動」である限り、「問題」は常に起きるものだと思います。

問題を解決できるのは「人間の意志と行動」

ではそうした問題を解決するためには何が必要かを考えます。

「人間」が「意志」をもって、現状を「目標」に近づける活動をする』しかないです。

問題は放置しても絶対に解決せず、プロジェクトの目標・理想状態には辿り着けません。現状を目標・理想状態に近づけるために、プロジェクトのメンバーが意志をもってやることを決めて(課題設定)、それを実行するしかないのだと思います。

2.大勢の人が関わるプロジェクトで問題を解決することは難しい

プロジェクトにおいては、前述の通り大勢の人がさまざまな役割の仕事をしていますので、なにか「問題」がおきたときに、1人の意志・行動だけで解決できることは少ないです。ほとんどの問題においては、複数の人間が問題を認識し、「現状を変える意志」を共通的にもって、みんなで行動をしていく必要があります。大きい問題であれば、プロジェクト全員(それが100人でも、1000人でも)の意志・行動変化が必要となる場合もあります。

このあたりに、プロジェクトでの問題解決の難しさがあるのかな、と感じています。いくつかの要素に分けてもう少し考えてみました。

①そもそも問題に気づくことが難しい

プロジェクトでは、多くの人が関わりますが、一人ひとり知っていること・得意な分野・価値観・考え方が異なります。プロジェクトに入ったタイミングも異なる場合、過去の経緯をどこまで知っているかも異なる場合があります。「同じ状態」を目にしても、人によってそれは「問題」と気付けても、別の人では「問題」とは感じないということは多々あります。

システム開発の終盤のテスト工程で、「エンジニア的には仕様通りに作った」が「ユーザー的にはやりたいことができてなかった」というようなことはよくありました。逆に、「その機能の使い方の一部がエンジニアに伝わってなかったことで、実際には使えないものになってしまっていた」ということもありました。もう少し早く相互に話す機会がもしあれば、早く気付けていそうなことって多いのですが、大勢で多くの仕事をしているとそういう機会がないまま時間が進んでしまうことって多いです。

気づくタイミングが遅れれば遅れるほど、プロジェクトの残り時間は短くなるため、目標や理想の状態に近づけることはどんどん難しくなってしまいます。

②問題を伝えることが難しい

問題にもいろいろな種類のものがありますが、中には自分の「ミス」や「作業漏れ」が原因といった負い目を感じるような性質のものもあると思います。そのような一見ネガティブにみえてしまう問題は「伝えること」自体の難しさがあります。

負い目のあることを報告する・共有すること自体、心理障壁があります。もし「怒鳴られるかも」や「説明するの面倒だな」など心理的におっくうに感じてしまうような関係性がある場合、「少し」情報伝達が遅れたり、最悪伝達されないことも起き得ます。そのほんの「少し」の遅れや伝達漏れが積み重なると、最終的にプロジェクトの遅延や目標未達につながってしまうと感じます。

③問題に向き合うことが難しい

また問題を伝えることはできても、その問題に向き合うところにさらにハードルがあると感じます。

大勢で仕事をしているときに、大きい問題は得てして「領域・チームの狭間」で起きることが多いです。(例:プランナーとエンジニアの認識齟齬、誰も担当してなかったタスクがあることが後で発覚した、など)

そうしたときに、誰がその問題解決に取り組むのか、いまやっていることとどっちを優先するのか、それらを誰が決めるのか、というところが曖昧だと、せっかく見つけて共有した問題が放置されたり目を背けられてしまうことがあります。

また、「問題を見つけて伝えた人が取り組めばいい」というような決め方の風潮があるようだと、長期的に一部の人の負担が増えたり、「問題を伝えるとやることが増える」というような空気になって、②の伝える観点のデメリットにつながることもあるように感じます。

④解決策を決めて、浸透させるのが難しい

①~③までで問題に向き合って、目標・理想状態へ近付ける意志をもったところで、最後に難しいなと感じるのは、プロジェクトに関わる大勢の人で納得できる解決策を決めることの難しさ、です。

現状をどのような状態に近づけていくかの解決策は、ひとつではなく、いくつか考えられることが多いと思います。プロジェクトの残り期間的を考慮してできること・できないことの選択も必要ですし、選択する案によっては、特定の人・チームのやりたいことが満たせるけど、別の人・チームのやりたいことは満たせない、であったり作業負担が異なる、などで利害関係が異なる場合があります。

こうした関係者間で納得した解決先を決めるのに時間がかかってしまったり、一部の人には納得感のない解決策になってその後のコミュニケーションや仕事面でネガティブな影響を引きずってしまうなどの別問題に波及する、ということもしばしばあります。

また、解決策を決めてもそれをプロジェクトの大勢の人に浸透させて行動を変えていくところの難しさもあります。特に、既に進んでいる仕事を大きく巻き戻すことが必要な場合は、既に大勢の人が前進している慣性に逆らって仕事のやり直しをしてもらう必要が出る場合があります。メンバーが納得できずに行動に移せるようになるまで長い時間がかかってしまったり、心理的な悪影響を及ぼすことも起き得ます。

3.大勢の人の関わるプロジェクトで問題を解決し続けるために大切だと感じること

ここまでプロジェクトでの問題解決の難しい要素を考えてきました。

記事の最後として、いままでの自分の経験をベースに、プロジェクトでの問題解決の難しさを和らげて、プロジェクトがうまく進むようにするために大切だと感じていることを書いていきます。(自分がうまくできていないことも多分にありますが、ここでは棚に上げて書いていきます)

1)心理的に安心して話せる関係ができていること

文字にするととても当たり前のことなのですが、これが一番大切なことに感じています。前節②の問題を伝えることや、④でお互いに納得できる課題設定をするコミュニケーションをしていくために、この「心理的な安心感」がベースに必要なのかなと感じています。

本記事のタイトルに添えた「今日この問題を伝えてくれてありがとう!」は、過去のプロジェクトで実際に自分が標語として使っていたものです。「今日」問題に気付けたことで、『「明日」以降に見つかったときより多くの打ち手を考えることができる』という当たり前だけど大切なことを明文化しつつ、問題を伝えること自体がポジティブなものととらえられるように使っていました。

 ・「プロジェクトで問題は起きること」自体を受け入れていること

 ・「問題を発見し伝えてくれたこと」に対して「感謝」を伝えたうえで向き合うようにしていること

こうしたプロジェクトにおける問題への一人ひとりの姿勢の積み重ねが、「問題」を伝える際の安心感につながり、最終的にプロジェクトが前進するか停滞するかを分ける分水嶺に感じています。

とはいえ、こうした雰囲気・関係性は一朝一夕でつくるのは難しいと感じています。「感謝」を伝えあう文化ができていたり、プロジェクトメンバーがお互いのことや価値観を信頼している、といったコミュニケーションの土台がプロジェクトの中に根付いていることが大前提で必要だと感じています。会社や組織として、長い時間をかけてコミュニケーションの土台を育てるような施策を続けて、組織の一人ひとりの価値観・行動を育んでいくことが一番大切なことに感じます。

まさに昨日12/4のアドベントカレンダーの三田さんの記事が、こうした「メンバー同士がお互いの価値観を知りあう」ことの大切さをわかりやすく書いてくださっているように感じました!素敵な記事なので、ぜひ読んでみてください!(自分も「推し会」は毎回楽しく参加し、他のみなさんの「好き」を知ることができ、エネルギーをもらってます!)

参考記事(12/4三田さん):
私が社内交流を積極的にしていたワケ

Craft Eggでは自分が15年間経験してきた数多くのプロジェクトの中でも、「安心感」という面は特に強い印象を感じています。先輩方が長い時間をかけて、会社としての制度も通してこうした文化醸成を長い期間大切にしてきていたことで、少しずつ育った文化なのかなと感じています。

2)目標・理想状態をプロジェクト全員に浸透させる

「プロジェクト全員」にプロジェクトの目標や理想の状態が浸透していて共通の認識となっていることは、「何がプロジェクトとして問題か」に気付きやすく(①)したり、「いま問題解決するときに、大切にすべきことは何か」を大勢の人がコミュニケーションして決めていく(④)ために、大切なことだと感じます。

100人だったり1000人の人が、同じことを同じように話せる状態をつくるのって、とても難しいことだと思います。一人ひとりの経験や価値観により、同じ言葉から受け取ることが違うこともあると思いますし、目の前の業務で忙殺されて、長い目線の目標が頭から抜けてしまうこともあると思います。

それでも「プロジェクト」が「目標を達成するための活動」である以上、この「目標」の部分を揃えるのは達成するための必要条件なのだと思います。なので、うまく前進できるプロジェクトは、この目標を揃えることにパワーをかけているなと感じます。「プロジェクトの目標」を覚えやすい・共感できるメッセージにして、それを折につけてリーダーが発信したり、目標について語り合う機会を設けたり。

Craft Eggに入ってまさにこの「目標を浸透させる」活動が強くて素敵だなと感じましたが、一番印象的だったのは半期のミッションや標語を素敵なデザインのクリエイティブの「ポスター」にして壁に貼ったり、zoomの壁紙に設定したりしているところでした。ただ標語を決めるだけでなく、それが一人ひとりの心を打って根付かせやすくする、ということを真摯にとらえて取り組みをされているなと感じました。

3)未来の活動に目をむけて問題を抑止する

いま起きている問題だけではなく、このままいったときに「未来に起きそうな問題」を予想して、事前に理想の状態に近づけられるような活動を企画して実行していくことは大切だと思います。未来のことは目先のことより後回しにされがちなので、意識的に先のことを考える機会を「計画」をすることは大切です。①に書いたような、「ちょっと話す機会があれば気付けそうなこと」を気付けるような営みをあらかじめ計画しておくのも大切なことに感じます。

また、「起きてしまった問題」を「未来に再び起こさないこと」も大切です。人間は忘れる生き物ですし、未来には担当する人が変わっているかもしれません。なぜその問題が起きたかにしっかり向き合って、未来に同種の問題をおこさないようにプロジェクト・チームとして対策しておくことは大切なことだと思います。

「問題に向き合う」ことそれ自体が難しい(③)ので、こうした「未来に起きる問題を減らす」ための活動は長期的にとても大切なことだと感じます。

4)大勢に関わる問題に積極的に向き合う役割を用意する

③④に書いたとおり、「大勢のメンバー・領域の間で発生する問題に向き合うこと」や「問題の解決策を関係者みんなで納得し、浸透させること」はそれ自体難しくパワーがかかることだと思います。

そのため、特に大人数のプロジェクトでは、そうした大勢に関わるような問題に責任をもって向き合う役割は用意しておく方がいいと感じています。

自分自身の所属するPMチームとしても、プロジェクト進行上の大きな問題には積極的に向き合い、多くの関係者と納得して解決できるように推進していくことが大切と感じてります。自分自身覚悟をもって日々の問題に向き合ってまいります。

おわりに

だいぶ長文になってしまいました。もし最後まで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます!

冒頭サマリに書きましたが、考えたことをぎゅっとまとめると↓な感じでした。

 ■プロジェクトでは日々問題が起きる。問題を受け入れ、感謝し、前向きに取り組む文化が大切

 ■そうした状態には一朝一夕ではなれない。日々一人ひとりのコミュニケーションや、組織としての施策などを通して、育み、維持することが大切

記事の途中にもいくつかの例を添えて書きましたが、Craft Eggでは多くの方が長い時間をかけて育ててきた安心感のあるいい文化・雰囲気があるように感じています。

本当に素敵な文化だなと感じています。そしてそれは決して当たり前の状態ではないと、自分の過去の多くのプロジェクト経験もふまえて感じます。自分もこの素敵な文化を維持したり、よりよくしていけるように全力で取り組んでいきます!




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