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ビットコイン価格における24時間逆張りアノマリーの存在

こんにちは、Hohetoです。

今回のnoteでは、ビットコインの値動きの中で観測できるアノマリーの第二弾についてご紹介します。

※ご注意!
本noteは過去の統計上の値動きの分析を行っていますが、未来の値動きを予測するものではありません。

本noteで利用しているビットコイン価格について
・本note中のリターン計測には、「.BXBT」の1時間足を利用しています。
・「.BXBT」とは、BitMEXのXBTUSDで使われているインデックスです。
 このインデックスは米国のUSD建て主要取引所のBTCUSD価格について、重みづけ平均をとったものです。
・期間は2017年1月1日~2021年6月30日です。


前回の記事

アノマリーとは、株式市場などのマーケットにおいて経験的に観測できる規則性のあるように見える値動きのことです。

前回の記事では、時刻が切り替わる際の数分間における値動きが、その後数十分間における値動きに対して説明力を持っている、という話をしました。

詳細は、前回の記事をご参照ください。


ビットコイン価格の時系列分析

「時系列分析」とは、時間の経過に伴って変化するデータについて分析することです。
当然、ビットコイン価格も時間の経過に伴って変化するデータですので、時系列分析の対象となります。

時系列分析の基本は、過去の自身のデータの動きの中から相関を見つけることです(自己相関といいます)。

実は、巷でよく耳にする「テクニカル分析」も、同じように過去の値動きから未来の値動きを予測する手法です。
つまり「正しいテクニカル分析」を行っている人は、時系列分析を行っていることになります。

テクニカル分析といいつつ自身の主観や裁量を元にしたトレード手法を見かけることがありますが、これはテクニカル分析ですらないため「チャーティスト」などと揶揄されます。
※筆者はテクニカル分析も裁量トレードも個別には否定しません。ただし、ごちゃ混ぜにするのはよくないということです。


ビットコインの短期逆張り特性

さて、ビットコインに限らず、短期の値動きは反発しやすいという傾向があります。
直近で上がったものは売られ、下がったものは買われるということです。

ビットコインの場合、直近1時間足や2時間足の値動きは、その直前の足の値動きに対して逆相関を持っています。
この逆相関を元に単純に売買を行った場合、HODLしたとき(図内の赤線)と同等のリターンを獲得できるか、もしくは若干アウトパフォームできています。
※現実では売買にコストがかかるため、損失が出ます。

■1時間足の逆相関および逆張り時の累積リターン

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図1A. 1時間足の逆相関(R=-0.0365、データ数37666)

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図1B. 1時間足逆張り時の累積リターン

2時間足の逆相関および逆張り時の累積リターン

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図2A. 2時間足の逆相関(R=-0.0654、データ数18833)

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図2B. 2時間足逆張り時の累積リターン


周期的に変動するデータの時系列分析

時系列分析は、このように過去の値動きの中の相関を明らかにしていく作業なのですが、時系列で変動するデータは「季節的な変動」を含む場合が多々あります。

例えば、冬物衣料品の売上高を分析するのに、4月と10月とで比較するのはナンセンスでしょう。

他にも、最近のニュースではよく「前週の同じ曜日に対する増減」が報道されています。これは、データの取得方法が曜日に依存しているため、前日と比較するよりも前週の同じ曜日と比較するほうが傾向をつかみやすいからです。

このように、時系列分析では周期性を考慮に入れることが重要です。


ビットコインの逆張り特性の周期性

筆者がビットコインの短期逆張り特性を調べていく中で、周期性に着目した際に興味深い傾向が見られました。

それが本noteのタイトルである「24時間逆張りアノマリー」です。

これは、「ある時間帯の値動きは、ちょうどその24時間前にさかのぼった同じ時間帯の値動きに対して逆相関を持っている」というものです。

この様子を可視化してみましょう。

■1時間足における逆相関の周期性

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図3A. 現在の1時間足と過去の1時間足との相関係数推移

「①現在の1時間足の値動き」と、「②過去の1時間足の値動き」の相関を取るのですが、①と②で1時間ずつずらしていったときの様子が図3.です。

直前の1時間前の値動きとの相関(横軸=1)や、直前の2時間前の値動きとの相関(横軸=2)において、逆相関が観測されるのは理解できます。

ですが、もっと遡ったときに、ちょうど24時間前の値動きと現在の値動きとが逆相関を持っているのです(横軸=24)。

他の時間足でも同様の傾向が観測できます(上述の1時間足を含むため、当然といえば当然です)。

2時間足における逆相関の周期性

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図3B. 現在の2時間足と過去の2時間足との相関係数推移

2時間足のため、12期前(横軸=12)で逆相関が見られます。

■4時間足における逆相関の周期性

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図3C. 現在の4時間足と過去の4時間足との相関係数推移

4時間足のため、6期前(横軸=6)で逆相関が見られます。

■6時間足における逆相関の周期性

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図3D. 現在の6時間足と過去の6時間足との相関係数推移

6時間足のため、4期前(横軸=4)で逆相関が見られます。

8時間足における逆相関の周期性

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図3E. 現在の8時間足と過去の8時間足との相関係数推移

8時間足のため、3期前(横軸=3)で逆相関が見られます。


24時間逆張りアノマリーを元にしたトレード

このアノマリーを元に単純に売買を行った場合、比較的安定した右肩上がりの累積リターンを作ることができます。
時刻アノマリーほど顕著ではなく、安定した利益を獲得できる時期とそうでない時期が見られます。
特に2021年に入ってからは、安定したパフォーマンスが出ていたようです(図内赤線はHODL時の累積リターン)。

■1時間足24時間逆張りを利用した売買

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図4A. 1時間足(24時間前)逆張り時の累積リターン

■2時間足24時間逆張りを利用した売買

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図4B. 2時間足(24時間前)逆張り時の累積リターン

■4時間足24時間逆張りを利用した売買

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図4C. 4時間足(24時間前)逆張り時の累積リターン

■6時間足24時間逆張りを利用した売買

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図4D. 6時間足(24時間前)逆張り時の累積リターン

■8時間足24時間逆張りを利用した売買

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図4E. 8時間足(24時間前)逆張り時の累積リターン

重ねて言いますが、現実では単純な売買ではコストに勝てず損失が出ます。
閾値を設けてドテン回数を減らしたり、他の指標と組み合わせてパフォーマンスを向上させる、などの工夫が必要でしょう。
機械学習の特徴量に加えてみるのも一つの手です(筆者は使っていませんが)。

興味を持たれた方は、ご自身でもっと掘り下げたら面白いものが見つかるかもしれませんよ。


このアノマリーの原因は何か?

このアノマリーの原因について考察したのですが、同じ主体が同じ時間帯にアルゴリズムを動かしている、というのは考えられます。
例えば、日本時刻で毎日0時に動かすアルゴリズムもあるでしょうし、他のタイムゾーンで稼働する同様のアルゴリズムも存在するでしょう。

これらが毎日同じ時間帯で手持ちのポジションを決済したり逆方向に売買する、という可能性が考えられます。ただ、想像の域を出ません。

BTC以外の様々な銘柄でもこのアノマリーが見られます(BTC価格に引きずられてるだけかもしれませんが)。


その他の銘柄における24時間逆張りアノマリー

例えば、下記はBybitのETH/USDインバース無期限において、24時間逆張りアノマリー(1時間足)を利用したときの相関推移と累積リターンです。

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図5A. ETH/USD 現在の1時間足と過去の1時間足との相関係数推移

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図5B. ETH/USD 1時間足(24時間前)逆張り時の累積リターン

他にも、XRP、LTC、BCH、などのレガシーな銘柄において、このアノマリーが幅広く通用しますので、確認してみてはいかがでしょうか(一方、新興銘柄は効きづらい傾向にあります)。


まとめ

以上で本noteはお終いです。

このように、ビットコイン価格にはまだまだ効率的でない値動きが隠されています。
通常はこのようなアノマリーは市場の成長に伴い薄れていく傾向にあるのですが、筆者としてはもう数年は逆にこのような歪みは強化されていくのではないか、と考えています。

今回の分析内容は、読者の皆様の手元で簡単に再現できると思います。興味を持たれた方は、試しに分析してみてはいかがでしょうか。
そして、何か新しい傾向が見つかりましたら、こっそりと筆者のtwitterアカウントまでご連絡ください!

それでは良きビットコライフを!


関連書籍

■時系列分析

時系列分析を扱ったテキスト。
※大学の講義レベルの内容ですので、初学者には少し難しいかもしれません。

■文中にあるチャーティストを揶揄している本

難しいのでよほど好きな人以外は買わないほうがいいです笑。


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