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#小説

廃墟好きとマチ歩きに共通する心理 僕らは生きてる廃墟に暮らしてる

また来る時には失われてる可能性のある空間は「生きてる廃墟」なのかもしれない。 このように思ったきっかけは、アルバイト探しだった。 無職になったことで夜の仕事から解放され穏やかな生活を送っていたりもするが、お金のこと等等を考えるとラブホテルとかどうなんだろう。そう思って2号線でよく目にしてたお店を調べると… 閉店していた。 廃墟のサイトに建物の歴史とともに紹介されていた。ラブホテルなんて入る当てがないし1人で覗く勇気もないけど、なぜか寂しい気持ちになったりもする。ああー

小説 ハンドクリーム出しすぎ

 「ハンドクリームを出しすぎてしまったのでもらってもらえないか」という「ハンドクリーム殺法」で意中の相手の手を握り、あまつさえ揺すったりさすったりすることで何人もの恋人を射止めてきたわたしだったが、最近、同じハンドクリーム殺法の使い手が現れたのでたまったものではない。 「あなたはなんのハンドクリームを使っているのかしら。あら、安いやつなのね」とせせら笑うライバル。  「ヒアルロン酸が入ってるって書いてあるからいいでしょうが」と歯噛みするも、ライバルの使っているハンドクリームは

小説 哲学的ゾンビになる病気

 進行性の哲学的ゾンビになる病気にかかってしまった。 「なんとかならないんですか」 「まあむりですね、お諦めください」と医者も匙を投げる始末。   家に帰って恋人に嘆いた。 「どうしよっか」 「どうにもならないんだって。おれは近い内に意識を失ってしまうけど、でもきみはべつにおれを失うわけではないから、なんにも心配することはないんだ」 「そういうもんなの?」 「そういうもんなんだ。哲学的ゾンビってやつは、言ってみればおれの魂だけがなくなってしまうんだけど、でも、おれは今までとお

小説 イルカになったら三回転ジャンプを

 年パスを使って水族館にちょくちょく行っていて、そのうち水族館でしょっちゅう見かけるおじさんと話すようになった。 「おじさんはイルカショーのイルカになりたいんだ」とおじさん。 「暑さにやられてしまったんですか」 「違うよ。イルカショーのイルカになればみんなから歓声を浴びることができるからさ。おじさんは窓際族で誰からも相手にされないし、今日も仕事をさぼって水族館にきちゃったんだ」  「自由ですね」 「だからそうすればおじさんも輝けるんじゃないかってずっと思っているんだよ」  そ

小説 怪獣の熱線観察

 ゴジラ的な怪獣がやってくるという警報が流れたので早速高いところに登って熱線を見物しにいくことにする。ずいぶん不謹慎なことを言っているようだが実際にはそういうマニアがたくさんおり、 「今日の熱線は青くてきれいだったね」とか「去年の熱線は橙色ですてきだったよ」とか言い合いながらSNSに写真をアップロードして一万いいねとか付いているのだ。   それで今日も高台に登って観察しますかとペンタックスのKー5(カメラの名前)を持ってえっちらおっちら近所の丘に登っていると、そこに中学の