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ニワトリを絞めてから鶏肉がこわくなった

こないだランチをした時に、頼んでいない料理が運ばれてきた。
私はすぐ取り下げてもらった。
絶対に頼むはずのない料理だった。

ニワトリを絞めてから3週間が経った。
近所でニワトリを見かけない日常が当たり前になっている。
朝鳴き声が聞こえなくても、畑に入ってこなくても平気でいられる。
寂しくないと言えば嘘になるけど、また新しい命も生まれているし、自然とニワトリのことは考えないようになっていた。
私はやっと2匹が死んだことを受け入れたんだ、と思っていた。

だけど、スーパーで売られている、飲食店のメニューにあるニワトリをみると、途端に引き戻される。

砂肝を見たら「砂肝の中に、庭の砂利がたくさん入っていたなあ」とか
チキンステーキを見たら「ニワトリたちはこんなに大きいステーキにならないだろうな」とか考えずにはいられない。
売られているニワトリと、絞めて食べたニワトリは、種類も育ち方も全く違うのに、どうしたって重ねてしまう。
そんなことを考え出すと、やっぱり鶏肉は食べられなくって。
絞めた日からはずっと鶏肉を避けていた。

でもきっと私はいつかそんなことも忘れてしまうだろう。
またひと月経てば自然と鶏肉を食べている。
だって鶏肉はプリッとしてておいしい。それに人間は都合の悪い情報は忘れるようにできているから。

だけど今は、ニワトリを絞めて動いた感情を忘れたくないと思っている。

かわいいと思いながらニワトリを殺して食べたこと。
「命をいただく」より「命をうばう」の方がしっくりくるということ。
鶏肉が怖くなって食べられなくなったこと。
鶏肉は食べないけど、豚肉は食べるのかよってこと。

何もかも忘れてしまって、普通に食べていいのだろうか。
スーパーで買うのも、ニワトリを絞めるのもいつかは慣れてしまう。
その前に自分は、人間として、漫画家として何ができるだろう。そんなことを考える。

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