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上場株式の取得価額の確認方法(国税庁ウェブサイトに記載のない方法)

上場株式の取得価額の確認方法についての国税庁ウェブサイトの情報は不十分です。それだけ見て、調査不能と即断して概算取得費を使ってしまうことは避けましょう。

上場株式については、ふつうは特定口座を開設されていると思います。特定口座を開設していると、取得価額は証券会社のほうで管理してくれます。
この記事では、特定口座制度がなかった2002年以前に取得した場合など、上場株式等の取得価額を確認する方法について記載します。

国税庁ウェブサイト「タックスアンサーNo.1464譲渡した株式等の取得費」からダウンロードできるPDF「上場株式等の取得価額の確認方法」(2024年1月20日確認)によると
① 取引報告書
② 顧客口座元帳(10年の保存義務あり)
③ 本人の手控え(例 日記帳や預金通帳)
④ ①から③で確認できない場合 名義書き換え日を調べて取得時期を把握し、その時期の相場を元に取得価額を算定
とありますが、④の詳細は記載がありません。
多くの証券会社等のページも、これの丸写しが多いです。

④について、名義書き換え日を調べるには、まずその銘柄の証券代行会社(通常は信託銀行)に調査を依頼し、「株式異動証明書」を入手します。
直近関わった事例では、当時の株主届出住所と住所が変わっていたため、住民票や印鑑証明書を出したり、大変でした。それら必要書類をそろえて「株式異動証明書」の申請を出してからは、1か月程度で「株式異動証明書」が届きました。

名義書き換え日がわかれば、次はその日の株価です。
Yahoo!ファイナンスで1983年1月4日以降の株価を検索することができますが、それより前はわかりませんし、合併等で現存しない会社の株価は検索できません。
日本取引所グループウェブサイト「よくあるご質問(株式・上場会社)」の「Q5 税金の申告に必要な過去の株価(終値)を知りたい」への回答A5の中に詳細の記載があります。

「1.自ら調べる方法」として、 
1949年以降の東京証券取引所日報をダウンロードできます。
PDFだったり、古いものはTIFファイル(画像)だったりします。ファイル内検索もできなかったりしますが、ないとあるでは大違いです。

「2.取引所側に依頼する方法」として
郵便又はE-Mailで、銘柄名(銘柄コード)、調べたい年月日を連絡して調査してもらうことができます。
昨年ある相続案件で行ったときは、依頼メールを送信してから回答メールを受信するまで約1か月かかりました。

なお実際の取引価額はわからないのですが、取引があった日の始値、高値、安値、終値はわかるので、実務的には安値を採用すればよいと思います。あまり取得時期が古いと社名変更、合併、株式分割等あってなかなか追いづらいですが、国税庁の確認方法③の本人の手控えによるよりは、信頼性が高いようにも思います。

国税庁ウェブサイトに、日本取引所グループのウェブサイトで調査できますよといった記載がないのは不親切とも思いますが、別組織だからでしょうか。過去の情報は東京証券取引所の分しかない(大阪証券取引所等はない)ので、そのためかも。ただ実務上は、取得した日の東京証券取引所の安値で計算すれば十分と思います。


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