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開始後15分で終了した税務調査の話

以前勤務していた税理士法人で、調査開始後15分で実質的に相続税の税務調査が終了したことがありました。

税務調査は、税務署からの事前通知で始まります。通常は納税者本人でなく、申告を担当した税理士のところに連絡があります。税理士としては、税務署からの連絡の後で納税者の方に連絡し、日程調整等を行って、調査当日を迎えます。
「なぜ私が調査対象に?」と聞かれました。よくある質問ですが、わからないとしか答えようがありません。相続税は調査になる可能性が高いですよ、といった説明だけしていました。

後30分で調査官が来るというタイミングで、納税者の方から「実は」と話を切り出されました。
「なぜ私が税務調査対象になるのか、明日はどうなるのか昨晩寝床の中で考え込んでいた時に思い出したんです」
「20年ほど前に新居を建てたのですが、名義が一部分被相続人なのです」
ふつうは資金援助をする(住宅取得資金の贈与等を活用して)のですが、この方の被相続人(お父様)はそうしなかったのです。
昔のことですっかり忘れていて、昨夜思い出したとのこと。

「ああ、税務調査対象となった理由はそれですね、登記簿を見ればすぐわかるので、税務署は把握していますよ、調査の中で贈与について聞かれるタイミングがあるので、そこで言ったほうがいいですよ」

そして税務調査が始まりました。調査官は被相続人の職歴や財産の状況等、ヒアリングを進めていきます。そして10分ほど経ったところで「贈与された財産はありませんか?」との質問が来ました。

ここで納税者の方が「実は私の自宅の名義の一部が・・」と説明したところ
「それがこの税務調査の眼目でした、それを修正してくれるのなら調査は終わりにします」「修正申告します」ということで、実質的に開始後15分で税務調査が終了しました。

この話を将来に生かすとしたら、「何十年も前のことは、いくら多額でも忘れていることもある」との前提で聞き取りを行うということでしょうか。
「贈与された財産はありませんか?」と聞くだけでなく、ご自宅の取得の経緯を細かく聞くとか。
固定資産税の通知くらいは見せてもらって、「外何人」と書いてあったら登記簿を取るとか、それくらいは今後しようかなと思いました。

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