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配偶者居住権(遺言書への記載方法、登記について)

 配偶者居住権の遺言書への記載はどのようにするのでしょうか。

遺贈、相続、死因贈与
 まず注意すべき点は「配偶者居住権を相続させる」ではなく「配偶者居住権を遺贈する」と記載することです。配偶者が配偶者居住権を取得したくないと考えた場合に、大きな違いがあるからです。
 「相続させる」との記載の場合、配偶者居住権を取得しないためには相続放棄をすることになりますが、預貯金など他の相続財産も全て放棄することになります。「遺贈する」との記載であれば、「遺贈の放棄」によって配偶者居住権のみを放棄し、他の増族財産を取得することができます。

 なお、民法上は配偶者居住権は遺贈又は遺産分割協議によって取得するとされています。しかし、死因贈与によることも可能です。死因贈与については基本的に(その性質に反しない限り)遺贈に関する規定が準用されています。法務局ウェブサイトから死因贈与の場合の配偶者居住権登記申請書の様式をダウンロードすることができます(なお、死因贈与によるほうがよい場合もありますが、後述します)。

 また、上記の「相続させる」という記載ではどうかというと、厳密には誤りですが、法務省通達において「遺言書の全体の記載から遺贈の趣旨と解することに特段の疑義が生じない限り、配偶者居住権に関する部分を遺贈の趣旨であると解して」設定の登記を申請することができるとされています。

建物の記載 
 次に注意すべきは、配偶者居住権を設定する建物の記載です。
 建物の登記簿謄本に基づいて一言一句違わずに正確に記載する必要があります。また、家屋番号を記載する必要があります。同じ住所に対して複数の建物が存在する可能性があるため、登記にあたり家屋番号によって特定を行うためです。
 これは直接は配偶者居住権の登記にあたり問われる点ですが、建物の特定に係る点ですので、登記するしないに関わらず注意すべきでしょう。

配偶者居住権の登記の必要性
 ところで、そもそも配偶者居住権の登記は必要でしょうか。
 相続税申告にあたっては、必須ではありません。遺贈より取得した場合は相続開始の時、遺産分割によって取得した場合は遺産分割が行われた時に基づいて経過年数及び存続年数を求めます。
 配偶者居住権の登記は、第三者との関係で重要になります。当該建物を相続した相続人が配偶者に住み続けさせてくれれば登記をしなくても実害はないのですが、第三者に売却してしまった場合、配偶者居住権を設定していても、その設定登記をしていなければ第三者に対抗できません。立ち退きを求められたら出ていくことになります。
 このため、配偶者居住権を取得したら登記をすべきと考えます。なお登記にあたっての登録免許税は、固定資産税評価額の1000分の2です。

死因贈与のほうがよい場合
 配偶者居住権を死因贈与によって与えるほうがよい場合というのは、相続人間の関係に不安がある場合です。死因贈与による場合のみ、相続発生前に仮登記することができるのです。詳細は後日の記事とします。


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