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不動産小口化商品の確定申告

信託ごとの青色申告決算書作成
 国税庁の「令和5年分青色申告決算書(不動産所得用)の書き方」の最初に

有限責任事業組合の組合事業から生じる不動産所得がある方や、民法上の組合等(外国におけるこれに類するものを含みます。)の組合事業から生じる不動産所得がある方(組合事業に係る重要な業務の執行の決定に関与し、契約を締結するための交渉等を自ら執行する個人組合員を除きます。)、信託から生じる不動産所得がある方は、組合事業ごと又は信託ごとに損益計算書を作成する必要があります。

国税庁「令和5年分青色申告決算書(不動産所得用)の書き方」

と記載があります。

 不動産小口化商品を複数保有していた場合、物件ごとに別の信託となるのが通常でしょうから、信託ごとに損益計算書を作成することが求められているのです。
 これは、信託不動産から生じた損失は損益通算ができず、繰越もできないため、信託ごとの損益を把握するためです。
 他に不動産所得を有していて従来から不動産所得の申告を行っていた方の場合、新たな物件が増えたような処理をしてしまうかもしれません。
 ご注意ください。

複数事業と貸借対照表
 
なお、求められているのは損益計算書を信託ごとに作成することで、貸借対照表は信託ごととの記載はありません。
 実は、もっと広く言って複数事業を営む場合、貸借対照表は一つというのが原則です。

不動産所得、事業所得若しくは山林所得を生ずべき業務のうち2以上の業務を営む場合又は事業所得を生ずべき業務のうち農業と農業以外の業務を営む場合には、損益計算書はそれぞれの業務に係るものの区分ごとに各別に作成し、貸借対照表は全ての業務に係るものを合併して作成するものとする。

所得税基本通達148-1 より

 ただし、複数事業の貸借対照表を合併するのは面倒です。「青色申告特別控除前の所得金額」を検算する際に合算する必要がありますし。
 このためか、現在では事業ごとに貸借対照表を作成提出しても問題ありません。国税庁の「確定申告書作成コーナー」においても、貸借対照表を「合算して入力する」のと「所得ごとに入力する」のを選ぶことができます。
 不動産所得の枠内で、信託ごとに貸借対照表(青色申告決算書)を作っても、同じ考え方と思います。

貸借対照表の作成方法等への私見
 不動産小口化商品を保有していると、運営会社から確定申告用の資料が提供されるものと思います。
 損益計算書、不動産所得の収入の内訳、減価償却費の計算は、それに基づいて入力すればよいでしょう。
 では貸借対照表は?
 貸借対照表の持分当たりの貸借対照表が運営会社から提供されていたとしても、端数調整があったりしてなかなか損益計算書と整合しません。
 私見では、求められていることは信託ごとの損益計算だけなので、
・収益の相手科目は事業主貸
・減価償却費以外の費用の相手科目は事業主借
・減価償却費の相手科目は固定資産科目
・固定資産および保証金敷金は「不動産所得の収入の内訳」に合せる
というくらいでよいと思います。

 なお、信託による分配金も、積立金があったりなかなか損益計算資料とぴったりは合いません。下期分(7月から12月)分が2月に入金になるのが通常と思いますが、未収計上は行わず、事業主勘定で処理するものと思います。




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