日銀の異次元緩和からの出口戦略(税の特例により出口を作る)
日銀の異次元緩和からの出口戦略
(注 この記事には会計税務の情報はありません)
2023年以降の急速な円安により輸入物価の高騰が続いています。日米金利差を主な原因とした円安ですから、通常であれば通貨価値防衛のために日本でも利上げをするものと思いますが、何もできていません。
これは、日銀が保有している日本国債が問題ということです。異次元緩和において金利を人為的に低く抑えるために日銀は国債を多額に買い入れており2024年2月時点で保有額は584兆円にも達しています。
利上げをしたら日本国債に評価損が生じ、日銀の財政状態に影響を与えます。日銀の植野総裁は「金利全般が1%上昇すれば日銀保有国債の評価損が40兆円に達する」との見通しを示したと報じられています。
また、異次元緩和において取得したETF等も問題です。
中央銀行として最も重要な財務の安定性を守るためには、本来は株式等のリスク資産は保有すべきではありませんが。異次元緩和の過程で大量取得してしまいました。
現在は株価が上昇しているためにETF等の含み益が大きくなっており、国債を時価評価した場合でも債務超過となっていないので問題が表面化していないが、株価下落時に債務超過となるリスクがあります。
こういった現状認識であれば、取るべきは日本国債の売却であり、ETF等の売却です。しかし、保有額が大きくなりすぎて売ったら暴落する(国債の場合は金利の急騰)、だから売れないという状況です。出口がないということです。
正攻法では、そのとおりです。しかし、税の仕組みの中で特例を講じることで、出口を作れるのではないかと思い、この記事を書いています。
国債について
単純に言うと、日本国債には相続税を課さないとしてはどうかと思います。もちろん、相続発生近しとなった時点で国債を取得し、相続発生後にすぐに相続人が売却するのでは意味がありません。
制度設計として、
・相続発生前3年間の保有を条件とする
とか
・相続後に相続人の売却を制限する(年間1割しか売却できない、とか)
が考えられるでしょう。
更に想像すると、日銀保有の国債を元にした証券を組成し、それを銀行または証券会社に設けた特別な口座で保有することも考えられます。当該証券の発行高や需給を管理することで、国債の時価への影響を最小限にできるでしょう。
老老相続
・90代の親から60代の子への相続
・80代の親から50代の子への相続
といった相続の相続税申告業務を担当したことがあります。
被相続人も相続人も高齢者という相続を「老老相続」という言い方があるようなので、その表現を使います。
老老相続において、親のほうで所有資産をほとんど消費せず、結果的に相続財産が多額となった、ということがあります。それを相続した子のほうで住宅取得や教育資金の負担といったライフイベントが終わっていて、後は自分の老後資金が心配、という場合は相続財産は消費に回らず、引き続き貯蓄されます。
こういった資金の場合、満期まで持ち続ければ元本保証という点が重視され、利上げにより保有中に時価評価額が下落しても問題視されないでしょう。
また、自分の老後資金の心配の次に来るのは相続税の心配です。相続税がかかっても十分多額な財産を残せると思われる場合でも、理屈はともかく極力相続税額を圧縮したい、とにかく相続税を払いたくない方も多いです。
そういった方には、このような制度は歓迎されるでしょう。
ETF等について
日銀保有のETFについても、日銀保有のETFを元にした証券を組成し、何らかの税制上の優遇策を時限的に行うことで、日銀保有のETF等の削減を図ることができると思います。
上記の日本国債に関する提案と同様に、
・相続税の評価を下げる
という方法、またNISA口座のように
・配当金を非課税とする
といった方式のほか、極端なアイデアですが例えば
・評価損を実現損とみなして、上場株式の売却益や配当金との損益通算を認める
(評価損は、取得価額との比較でなく年初の時価からの下落額で算定する)
といったことが考えられます。
こういった優遇措置の対象となる証券を特定口座の仕組みに組み込んだら、多くの個人投資家が当該証券を購入するものと思います。なお国債の残高を減らすほうが優先ですから、制度化するとしたら国債の後でしょう。
税の特例により出口を作る
これらを、例えば10年間の時限措置で行うことで、当面の日銀保有の国債及びETF等の残高を減らし、日銀の債務超過を防止又は程度を低くすることができると思います。
これらは奇策であり、税金の理論には全く適合しない暴論ではあります。また相続税や上場株式関連の所得税は減少しますし、富裕層優遇の批判は受けると思います。しかし、日銀の債務超過に端を発する経済危機の回避に資するなら許容できるでしょう。
もちろん、日銀が債務超過にならないのなら利上げできるというわけではありませんし、そもそも新規発行される国債が多すぎるのはないかとの根本的なテーマがあります。この記事は、当面の日銀保有の国債及びETF等の残高を減らすために、税の仕組みの中で特例を講じることができるのではないかとの思いで作成しました。
中央銀行の債務超過の影響
この記事のようなことを考えるようになったのは、藤巻健史氏のご意見に触れるようになってからです。
中央銀行の債務超過の影響については様々な意見があり、日銀にはもう出口はなく円の紙くす化必然と明言されている藤巻健史氏は少数派でしょう。
私としては、黒田総裁の後任が日銀出身者でも財務省出身者でもない学者の植田総裁に決まったころから、特に注目しています。
植田総裁就任後の、マイナス金利を解除するかどうかだけで1年も引っ張る姿を見て、ますます不安になっています。日銀が債務超過となったら大変なことになるので絶対に金利を上げられない、日銀もそう考えているのではないか、と。
どこかの時点で日銀は時価評価で債務超過となるでしょう。その時大変なことになるのか、楽観論者が正しいのかわかりませんが、できるだけ影響を小さくしたいと思っています。
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