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趙治勲名誉名人(囲碁)の「私の履歴書」

(注 この記事には会計税務の情報はありません)
 2024年5月の日経新聞「私の履歴書」は趙治勲(囲碁棋士・名誉名人)でした。子どものころから囲碁に親しんできた私にとってはスーパースターです。5月1日に、見出しだけ見た時点で「知っている話が多いかな」とも思いましたが、初日から驚くような話が多く、1か月間楽しみました。それを共有したいです。

「いつも形勢を悲観してばかりで堂々とした手が打てない」(1)
 初日のこれから仰天です。「自分の碁に胸を張れない自分がいる」とは、タイトル獲得数史上最多、世界最強の時期もあった趙治勲先生がこんなことを思われていたとは驚きました。

「(結婚を)韓国のボクの両親には報告しなかった」(11)
 「私の履歴書」では当然ながら囲碁の話がメインですが、囲碁以外では驚くような話が出てきます。さらっと書かれているが、実はすごい、という。
 当時の韓国で、両親に報告せず結婚とは、大胆極まる話です。「結婚してわかったのが、彼女がベジタリアンだったこと」という一文も、なかなか不思議です。

「痛いのもかゆいのも大嫌い」(17)
 「私の履歴書」を毎日楽しむうちに「そろそろ交通事故かな、囲碁が弱くなると困るからと麻酔を拒否したエピソードが有名、でも痛い話は読むのはつらい」等と思っていたら、作り話だったとは。
 将棋の米長邦雄永世棋聖が話の出どころと推測されていますが、さもありなん。「機転の利く先生」との人物評も秀逸です。

「囲碁人生で、答えを見ながら勉強したことがないからだ」(29)
 「私の履歴書」に登場した囲碁棋士は何人もいますが、これまではAI登場前でした。
 囲碁AIは、人間のチャンピオンに勝ったのみならず、旧来の布石の常識や定石をことごとくひっくり返し、どんな局面でも勝率をはじき出す等、囲碁を根本的に変えてしまいました。
 どんな囲碁棋士でもAIとの付き合い方が問われる時代です。趙治勲先生の答えはAIを使わないというものです。抜き出した分はその説明です。何気ないようで、何度読んでも感動させられる文章です。
 「この手がいい手か悪い手か、形勢はいいのか悪いのか、葛藤を繰り返すのが囲碁の醍醐味であり、それがなくなるのは心を失う感じがある」と続きます。
 最終日(30回目)の、大腸がんの告白も衝撃的でしたが、そちらは詳細を書くのはやめておきます。

日本経済新聞「私の履歴書」について
 私が説明するまでもなく、名物連載です。電子版では無料ではそれぞれの日の出だししか読めないようですね。
 相当数書籍化もされていますし、電子版で2017年10月以降は全員分、それ以前はピックアップされた方の分が読めますので、ぜひご覧ください。



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