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ひきこもり。怒りを表出する。

中学生の頃にソフトテニス部の先輩に言われた言葉。

「お前良い奴だな〜。いつもニコニコしてるよな〜」

ニコニコしている自覚はありません。しかし、これは私からすれば自己保身のために微笑んでいたのだと思います。

小学生の頃に、自宅で母にナイフを向けたことがありました。

「お前を殺して俺はここから飛び降りちゃる!!」

母は我が子にナイフを向けられたことで涙を流していました。

家にいるときは暴君の様に振る舞い、外に出ると温厚な少年でした。というより他人にビビって感情表現が下手なだけで、反動が家にいるときに出ていたのだと思うのです。

小学生の頃から私は自分のことをやばいやつだと思っていました。

母にナイフを向けている自分を外に出すことはできません。
だから私は人と深く付き合えないと思っていました。

人が怖いというのは潜在的にずっとあったものだと思います。

子供の頃に母とドラックストアにいたときに、子連れのお母さんから風船をもらったことがありました。

そこのドラックストアの店員さんが言うには、我が子に友達が欲しかったらしく、お近づきの印として風船を渡してきたということだったらしいのです。

しかし子供ながらにそれが「怖い・・」と思ったのです。

17歳で不登校になり、そのまま私はひきこもり生活を送るようになりました。

外に出ると能面の様な顔になってしまい、ますます私は感情が出せない人間になっていきました。

感情を出す

ひきこもり生活をおくるようになった要因は一つだけではありません。

自分には主体性というものがありません。また先ほど書いたように人と深く付き合うことを恐れていたということ。そして子供の頃から他人が怖いと思っていたこと。自分にアイデンティティーが無いと感じていたので、存在を証明するものがなくて不安だったことなど、家にこもる理由は山ほどありました。

中学生の頃、私の怒りの表現方法は暴力でした。

しかし高校生になると暴力は停学になっていきますし、社会に出るとそれこそ逮捕されてしまいます。そうなると、なす術がないのです。

成長していくにつれて、怒りの感情を言葉で現す必要があると悟っていきました。

しかし自分の語彙力の乏しさに気付いていたので、内心ではこのまま私が大人になるのはマズいと思っていました(語彙力だけではなく、主体性の乏しさや生活力の無さも自覚していた)。

話があちこち飛んでしまうのですが、23歳の頃に「社会的ひきこもり」当事者のフリースペースに通う様になりました。

その時の私の1番の課題は他人と喧嘩をすることでした。

他人の怒りが最も怖く、受け入れ難いものがありました。

しかし人と接すると言うことは、怒りに触れる機会もあると思っていたので、そこは乗り越えないといけない・・そんな思い込み(?)に固まっていたのです。

フリースペースのスタッフさんの勧めでポスティングのバイトをするようになりました。

各家のポストにチラシを入れていくのですが、チラシを入れられると基本迷惑なので大抵は嫌な顔をされるのです。

ある印刷会社にポスティングを行ったとき、そこの家主が印刷作業の手を止めてズカズカと出てきました。

私の顔をじーっと見ながら、先ほど私が入れたチラシをポストから取り出し引き裂いて叩きつけました。

まさかそこまで露骨な態度をとられると思っていなかったので、一瞬何が起きたのか理解できません。

そして、そのままやり過ごそうと思い、一旦その場から立ち去ったのですが、徐々に怒りが込み上げてきたのです。

印刷会社に引き返しました。

私「目の前で破る必要ないじゃないですか!」

家主「そんなもん俺の勝手じゃろうが!!!」

印刷会社の前で怒鳴り合いです。

数年ぶりに他人に怒りを表明して足が震えました。きっと声も震えていたと思います。

フリースペースメンバーの前でキレる

私はフリースペースメンバーにも怯えていました。

一部メンバーがよく怒りを現しており、それが私には驚異でした。私は怒りの矛先が自分に向かないように願っていました。

あるときそのメンバーが他のメンバーに対して不満を面と向かって表明していました。

しかし、そのメンバーは怒りを出すのが得意ではない人だったので、黙ったままでした。

怒りを表明しているメンバーの言っていることは一理あるとは思いました。しかし、そんなことはどうでも良いのです。「怒り」を出していることが私には死活問題でした。だって怖いから・・。

あまりにも怖くなってしまい、関係の無い私がキレてしまいました。

私「おいっ!!お前調子のんなよ!!うぉあっ!!」

全く関係のなかった私がキレているわけだから、わけがわかりません。その場の空気が一気にピリつきました・・というより、何故私が怒っているのか皆理解ができない状態だったと思います。

私「お前!こりゃ!しばくぞ!!」

私は怒りを現していたメンバーの胸ぐらを掴みました。そしてテーブルにあったエアコンのリモコンで頭をかち割ってやろうかと思ったのですが、そこはぐっと堪えました。

そしてその後はカオスの展開です。

胸ぐらを掴まれた彼が私に謝罪をし、怒りを表明されて黙ったままだったメンバーが私を励まし、私が被害者みたいな雰囲気になっていきました。

「怒るってエネルギーいるもんな〜」なんてことまで言われる始末。

無茶苦茶です。そしてまたしても足が震えていました。

女性にキレる

今度は同様によく怒りを表明する他の女性メンバーに対してキレてみました。

前回と同じ様にその女性メンバーは怒りを出すのが得意ではないメンバーに(同一人物)対して怒っていました。

ここまでくるとこの怒りを出すのが得意ではないメンバーも問題があると思うのですが、「怒り」を出すことが私には死活問題なのです。だって怖いから・・。

フリースペースは一軒家を間借りしていました。その日、私は2階でへばって寝転がっていたのですが、その女性が1階で怒っている声が聞こえていたので、ワナワナ怒りに震えて駆け下りました。

私「オラっ!!お前!!やまかましいぞっ!!こらっ!!」

またしてもその場の空気が凍りつき、皆で私を止める事態になりました。

今回は足も震えていましたが、唇も震えていました。もはや私は異常者です。そして怒りを表明されているメンバーのボディーガードのようでもあります。

その数分後・・。私は彼女に謝っていました。

女性メンバー「もう!私!怖くてここに来れない!!!」

謝罪をしながらも、怒れたことに薄らと誇りも感じていました。

「怒り」を否定するために、もっと大きな「怒り」を私が表明することで、それを吹き飛ばすという滅茶苦茶な構図です。

しかし国際社会を見てみると平和を勝ち取るために武力で応戦することもあるわけですから、それならアリかな・・。

フリースペースでの課題は人と対立をすること。人からの怒りを受け入れること。喧嘩をすることでした。

しかし試された方はたまったものじゃないですね。








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