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元ひきこもりがスペインの巡礼に行く。

ひきこもり生活から脱出し、パート労働から非正規職員を経た数年後、私はロシアの上空にいました。

初めての海外。座席の背もたれにはモニターが付いており、私の乗っている飛行機はロシア上空を運行していることを表示していました。それは信じられないことでした。

働き始めて5年以上の月日が経っていましたが、家から出られない状態からここまでこれたことが感慨深く、思わず私は泣きそうになりました。

スペイン巡礼は日本ではとてもマイナーなものでした。

職場の若い同僚に退職してスペイン巡礼に行くことを告げました。

「えっ?スペイン?日本じゃダメなんですか?」

真顔でそのように返されたものです。

そして巡礼を始めた最初の週は日本人が数名いたのですが、2週目となると私の周りには日本人が誰もおらず、アジア人と言えばほぼ韓国人が占めていたのです。


スペイン巡礼とは

私はフランス人の道というルートを通って、フランスのサン・ジャン・ピエ・ド・ポーという小さな村から、ゴール地点のサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの全長780キロを歩きました。

キリスト教の三大聖地のひとつなのですが、歩く目的は様々で純粋にキリスト教を信仰しているというより、スポーツ感覚で巡礼を歩いている人も多く、若い人などは教会のミサに行っても、そこでの作法を知らないようでした。

巡礼者は世界各国から集まってきます。

と言ってもアフリカ人に出会うことはなく、アジア人はほぼ韓国人のみでした(私が巡礼を行った10年以上前の話)。

歩いた印象として、私は四国の巡礼も経験しているのですが、四国の方が全長も長く、山道も多いので四国が大丈夫ならスペイン巡礼も問題なくクリアーできると思います。

ただ立ち塞がるのが言葉の問題です。

巡礼者たちの共通言語は英語かスペイン語です。どちらかの言葉が話せないと巡礼宿のアルベルゲなどではポツンと孤立しがちになってしまいます。

私はどちらかというと、言葉が伝わらないということが巡礼当初は辛かったですね。

叶えたいことリストを作ってみた。

さて、今回お伝えしたいのは海外に行ったことのない私がどうやってスペインの巡礼に行けたのか?というお話なのです。

その目標が達成できたポイントは2点あると思います。

  1. 叶えたいことリストを作って、目標を明確にしたこと。

  2. 家族に行きたい旨を伝えて本気になったこと。

まず「叶えたいことリスト」はロバート・ハリスさんの「人生の100のリスト」というご著書を読んで参考にしました。

ロバート・ハリスさんは若い頃に海外でバックパッカーをしており、その旅の終わりに今後の人生で自分が経験したいことを紙に書いてリスト化したそうなのです。

そしてその数十年後、たまたま引越し作業をしている時に、当時書き残したリストが出てきて、中身を見るとほぼ全てやりたいことが実現していたそうなのです。

「叶えたいことリスト」の目的は、叶えたいことを視覚化することで忘れなくなるようにすることだと私は思っていました。

しかしロバート・ハリスさんはリストを書いたことを忘れていながらもほぼ全て実現したと証言しているので、書くことで叶えたい目標が明確になることだけでも意味があるのかもしれません。

家族に行きたいことを伝えて反対される。

そして腹を括って家族に行きたい旨を伝えてみました。

「あんた・・海外にも行ったことないのに危険すぎるわ・・。」
「まずは韓国に行って外国慣れしてからスペインに行っても・・。」
「歳とって60過ぎて定年迎えてから行っても良いじゃろ・・。」

そして私は週に一度スペイン語を教える文化教室に通っていたのですが、そこのペルー人の先生にスペイン巡礼のことを伝えると彼からもやんわりと反対されたのでした。

「おぅ・・危ない・・。」的なことを片言の日本語で。

しかし私としては気持ちは晴れやかでした。

反対されても自分の気持ちを勇気を持ってみなに伝えることができました。この小さな一歩が大きかったのだと思います。

家族に伝えるということは私からしてみたら生半可な気持ちではできないことなのです。ということは私は本気でスペインに行きたいと思っているということだと思いました。

そして、奇跡がおきる・・。

確か1週間も経っていなかったと思います。

家族に告げた週末のスペイン語教室に新規の生徒が入ってきたのです。

既に授業は終わっていました。その新規の生徒と先生の会話をさほど気に留めていなかったのですが、思わぬ言葉が耳に入ってきました。

「私はこの春にスペインの巡礼に行こうと思っててね!期間があまり無いから簡単なスペイン語を教えて欲しいんじゃ」


なにっ?

人見知りなはずの私は、授業終わりにその新規の生徒を呼び止めました。

そこからはとんとん拍子で話が進んでいき、仕事を辞めて、その生徒さんと2人でスペインに行ったのでした。

再度書きますが、スペイン巡礼に当時日本人はさほどいませんでした。それなのに近所にスペインに行こうと思っている人がいるということが奇跡でした。しかも私が家族に伝えてからすぐにスペイン語教室に入ってきたわけです。物事が動き出すタイミングもすごく早かったのです。

願いを明確にして本気になることで、このように幸運が招かれるのかもしれません。まずはリストを書いて明確にしてみることから実践してみてはいかがでしょうか?

※ちなみにスペインに着いた2日目のピレネー山脈で、その彼とはバラバラになってしまい、ほとんど一緒に歩くことはできませんでした。そこから1人で放り出されてしまい、私の苦難は始まったのです。








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