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10月24日の日記 お弁当箱をもらった

・新しいお弁当箱をもらった。

・買ったのではなく、もらった。わっぱ状で、そこそこいい値段がしそうなやつだ。

・「いらんなあ……」というのが最初の感想だった。いいものなだけあって、使ったあとはすぐに洗えとか直射日光が当たる場所に置くなとか書いてある。そういう細々としたことをするのがいやなのでずっと壊れかけのプラスチックのお弁当箱を使っていたのだ。

・「いやだなあ……」と思いつつ、これだけいいものを死蔵するのは……と感じさせられるオーラがあった。お弁当箱自体がまず高級そうな箱に入っていて、さらに薄紙で包まれていた。蓋は漆塗りに螺鈿が貼ってあって、間違いなく生涯でいちばんの高級品である。

・そのお重のような存在感に負けて、「一旦、明日のお弁当に使おう」と決めた。

・「いやだなあ」と思いながら、炊いたご飯を詰める。いつもならおにぎりにしてすぐ鞄に入れるのを、「確かお弁当って冷ました方がいいんだよね」と拙い知識で以て冷ます。おや?

・晩ごはんを食べ終えておかずを作っていく。作っていくといっても卵焼きとお肉を焼くぐらいしかしない。

・卵焼きを切って、「あー、この四角で大丈夫かなあ」と心配になる。

・いざ詰めるとなると、「こうやって花びらみたいに入れると”ばえる”のでは?」とピンときた。その通りにやると、今までの四角四面の弁当箱では思いもよらなかった配置アイデアがわいてきた。

・「これ、野菜入れたほうがいいかも……」「トマト置きたい」「ポケモンの海苔とか置いてみたい〜」

・三十年生きてきて一切覚えなかった感情だった。


・感じ覚えのない気持ち。ちょっとふわーっとする。

・今まで馴染みのなかった器に触れて、アイデアがわいてきた。今まで「盛り付けを頑張ろう」と思ったことはほとんどない。それは、私の素養の問題ではなくって、器との相性がよくなかったからなのかも。

・自分のこだわりや感覚を発揮するということが、食器面ではできなかった(実家暮らしなので)。まあ、そんなもんかなって思って生きてきたのだけど、いま新しい人生が始まった。

・すごい。うれしい。人から贈り物をもらってこんなにうれしいのもちょっと初めてかもしれない。

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