失くしたい思い出だけじゃなくて

最近よく、過去のある一部分を切り取った風景が浮かぶ瞬間がある。

懐かしく、心温まるひとときだ。

私の中で過去を思い出す時は、夜一人、気持ちが落ち込んでいるような時で、そういう時は決まって、どうしても忘れたい嫌な出来事ばかりがフラッシュバックしてきた。

忘れたかった時期の出来事は、まるごと無かったことにしようと、思い出さないようにと、心の奥底に閉じ込めようとしていたのに。

そんなことはやはり無理で、きっかけが出来てしまえば、たやすく目を覚まし、私の心を傷つける。忘れようとすればするほど、押さえつけようとすればするほど、大きなダメージを負わされてきた。

このご時世、家にいる時間が増えたことにより読書する機会が増え、わたしはある本と出会った。

ある女性が精神科のカウンセリングを通して、自分と向き合い、少しばかり前に進むきっかけをつかんでいくというものだ。

読み始めは、具体的なエピソードを踏まえた著者の人生に自分が重なり、痛々しく、恥ずかしい気持ちにさせられ、読むのがとても苦しくなった。

こうなることが分かっていたので、あえてこういった本を避けていたが、自分にも何か変わるきっかけが欲しいのと、同じような気持ちを抱えた人は思ったよりもたくさんいるのだと安心感もあって向き合う覚悟を決めた。

この本を読み終わって感じたことは、自分の考えの基準が白か黒で判断しがちであったのと、自分の弱い部分に向き合わず、隠し、避けようとしていたことに気づいた。

どんな嫌な出来事があっても、その間にも楽しかった瞬間はあって、どんな感情が湧いたとしても、それを忘れられるひと時があったことも事実で。

全部を無かったことにして、忘れようとしてしまうのはとても悲しいことだと思った。

何が起きても、こんなこともあるよねって広い心を持って受け入れてあげて、自分を嫌いにならないであげたい。心を閉ざしてしまっては日々の小さな喜びにも気づけなくなってしまうから。

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