掌編/雨の日の、選ばないという選択
雨の日の選ばないという選択 窓の外にはさらさらと雨が降っていた。
軒先の紫陽花を、ライムグリーンの傘の女性が眺めていた。窓のフレームのなかにもう一人、ひっつめ髪の小柄な女性が現れる。彼女が何かを話しかけ、ライムグリーンの傘が閉じられた。
星型の、薄っすらと青みを帯びた花ビラがぱらぱらと咲く、鉢植えのガクアジサイ。
ガリガリと音がしていた。
私の手はくるくると手元のハンドルを回し、ゆっくりと挽かれていく珈琲豆の、抽出前のある種直接的な香りがあたりを満たしていた。