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【区別できない脳】脳は自他を区別できないから、汚い言葉は自らを傷つける

 驚くべきことに脳は「私」と「私以外」を区別するのが苦手らしい。
 少しだけ難しい話をすると、人間の脳には知性や感情をつかさどる大脳、運動をつかさどる小脳、そして生命維持をつかさどる脳幹という3つの部分がある。この中で、「私」と「私以外」を区別する働きは大脳の役目であり、それも大脳の中の「大脳新皮質」という部分だけが担っているのだそうだ。逆に言えば、脳のそれ以外の部分は「私」と「私以外」を区別していない。いや、区別できないということである。

 だから誰かを口汚くののしったりすると、脳はその言葉が自分に向けられたものだと感じて傷ついてしまうらしいのだ。映画や小説に感情移入して、まるで主人公になったかのように感動したり悲痛にくれたりするのもそのせいだ。鏡に映る自分に向かって満面の笑顔で「ありがとう」と言えば、それは誰かに感謝されたのと同じように脳に幸福感をもたらす。つまり悪口ばかり言っていると自分自身が不幸になるということである。逆に人の良い面を見て、褒めたり感謝したりすることを心がけていれば、幸せな日々を送れるということでもある。

 うがった見方かもしれないが、脳が「私」と「私以外」を区別することが苦手なのは、区別する必要がなかったからなのかもしれない。自分と自然は対峙するものではなく、私もあなたもあの人もサルもミミズもアメーバも自然の一部であり、自然の意志がそのまま自分の意志であるから区別する必要がないのだというのは考えすぎか。

 ちなみに大脳新皮質は爬虫類以上の高等生物にしかなく、人間だけが特に発達している。つまり魚や虫は自他の区別がないということだ。人間だけが自然を破壊し、戦争ばかりしているのは「自分ではないもの」と割り切って攻撃するからではないだろうか。

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