見出し画像

暗号資産投資で判断ミスを招く心理②

投資で成功するためにはまず、
自分をコントロールすることから
始めなければいけません。

前回の記事に続き、
投資を失敗させようとする
最大の敵「心理」について
お話しします。

損失回避+気質効果

前回、基準点のバイアスにより
投資家の大半は買い値以下で売ることに抵抗感がある
と述べました。

私たちが
「買い値より安くは絶対売れない(売りたくない)」
と考える理由がもう一つあります。

それが、損失回避(loss aversion)です。

画像1

人は損をしたくないと考えてしまう生き物です。(Source: https://service.plan-b.co.jp/blog/marketing/11273/)

一般的に、10万円を稼ぐ喜びより、
10万円を失う悲しみが
2.5~3倍も強いといいます。

投資では特にそうです。

じっくり精査して投資対象を選び、
お金を投資したのですから、
上がるのが当然ではなかろうか(自信過剰)
と思ってしまいます。

逆に、価格が下がれば、
こんなに精査して投資したのに、と
怒りを感じてしまいます。

これが原因で、
トレードで最も重要な原則が
損失が出たら、
短期で損切することが大切だと分かってても
「元本は取り戻さなくちゃ!」
と思い込んで損切りできず、
戦々恐々としている中、
価値は下がり続け、
損失は途方もなく増えた後に
口座には何もなくなるのです。涙

逆に利益が出たら、
投資家の大半は
素早く利益を確定しようとします。

暗号資産の価格が10~20%上がると、
また5~10%しか上がらなくても、
売るケースが大半です。

価格が上がっていた暗号資産が再び下がって、
損をするのではないかと不安なので、
価格が少しでも上がった瞬間に
売ってしまうのです。

このように、
利益をあまりにも早く確定してしまう行為を
ディスポジション
もしくは
気質効果(disposition effect)
といいます。

トレードの必勝法をご存じでしょうか?
おそらく、投資の本を一冊でも
読んだ人は分かると思います。

「利益は長く、損失は短く」です。

さて損失回避と気質効果を組み合わせると、
どんなことが起きるでしょうか。

元本リカバリーに執着して損切りできず、
「損失は長く」

少し上がったら売ってしまうので
「利益は短く」なってしまうのです。

このため、損失に対する利益が
非常に低くなるわけです。

投資家の大半の投資パターンは
必勝法と少しずれているのではなく、
真逆なのです。

そして、このような投資を無限に繰り返します。

必勝法とは真逆の投資する方法を続けたら
損をするしかありません。

歴代最高の
ミューチュアルファンドマネジャーとも
呼ばれるピーター·リンチ(Peter Lynch)は
これを

「花を引き抜き、雑草に水をやる愚かな行為だ」

と言いました。

マゼラン・ファンドを運用して、
ピーター・リンチ氏は
13年間2,700%という
驚異的な収益率を記録した一方で、
同ファンドに投資した投資家の半分以上が
マイナス収益率を記録しました。

損失回避傾向と気質効果が
どれほど強力なのかを極端的に示す事例です。

画像2

ピーター・リンチ氏

確証バイアス(confirmation bias)

多くの人は
自分が聞きたかったり、
信じたいことは
絶対に聞き逃さなかったり、
自分の意見と
同じような資料を中心に整理して、
自分と違った意見の
他の資料は無視する傾向があります。

これを「確証バイアス」といいます。

人が自分の意見に同意してくれれば、
安心感を感じます。

残念ながら、
暗号資産投資家の99.9%は素人です。

あなたの意見と同じ意見をTwitterで見つければ
安心できるかもしれませんが、
実際の投資には
役に立たない可能性があります。

株や暗号資産の投資など
金融投資がなぜ危険なのかご存じですか?

囲碁のようなゲームでは、
悪手を連発すれば、必ず負けます。

しかし、金融投資ではどんなにミスをしても、
特に上げ相場では、勝ち負けを繰り返すので、
自分のやったミスに気づかないのです。

もちろん、長期的に見れば、
ミスを連発すれば
残高が0になる可能性もありますが、
利益が出た日もかなりありますので、
ミスをやってると
全く気づかない可能性も高いです。

なぜなら確証バイアスのため、
利益が出た日は喜びながら、
自分の戦略が正しかったと確信し、
損をした日は
ただ運が悪かったと考えるからです。



統計への無知(少数の法則)

基本的に人間は統計分析に非常に苦手です。

直感システムでは
統計を分析する能力が全くなく、
統計分析を勉強した人もごく少数であるため、
大半の人は推論システムを稼動しても、
統計分析を正確に行うことはできません。

例えば、友達の一郎があなたに

「最近、5日間30%以上下落した
暗号資産を買って二日後に売れば稼げるって。
俺のいとこは先週、2000万円も稼いたらしい!
最近は5回取引して、5勝0敗だって!」

と言ってきたら、どうしますか?

この話を聞いたのが
理性的な投資家なら、
主な暗号資産の日足データを
ダウンロードして、
この5日間30%下落した日を探し、
その日と二日後の価格を検討して、
どれだけ上がったのかを計算します。

おそらく、最近5日間30%以上、
下落した場合が数百回あるはずなのに、
その数百回に全て投資していたら、
手数料を除いて、
何パーセント収益を出したのか、
勝率はどうだったのか、
損益の割合はいくらだったか
などを計算するでしょう。

そんなに難しい作業でもありません。

これだけ分析を行えば、
該当戦略の有効性を大まかに
予測することができます。

まさに、この作業をバックテストといいます。

画像3

統計とか数学なんて苦手!

もちろん、このような人はなかなかいません。
ですが、中の人は
このくらい努力家な人を3人知っています。

多くの投資家は、
この話を聞いて、その根拠を
統計的に分析しようとなんてしません。

このような問題が
確証バイアスとかみ合えば、
状況はさらに深刻になります。

もし、あなたが

「最近急落した暗号資産を買えばよさそう」

という考えをすでに持っていたら、
先ほどの話を何の検証もなしに
信じてしまう可能性が高いです。

また、投資家の大半は
「5勝0敗」という驚くべき勝率(?)に惑わされます。

しかし、5度、5日というケースは
決定を下すには、
サンプルの数が少なすぎます。

一言で言うと、統計的にあまり意味がありません。

このように少ないサンプルを持って
意思決定をするバイアスを「少数の法則」といいます。

情報の弊害

皆さんの周りの人は
株や暗号資産にどのように投資していますか?

 それなりにさまざまな情報を持って、
投資しているはずです。

暗号資産に関しては、
各国政府の規制の情報、
特定の暗号資産の取引所への上場の話、
そして本当に何の根拠もない
「リップルが上がるらしい。 買いだ~」
など情報または噂が溢れています。

画像4

しかし、SNSなどで情報を得ても、
投資で成功するための情報はほとんどありません。

しかし、多くの投資家は
これらの情報に惑わされてしまいます。

根拠のない「ノイズ」を根拠に
売買してしまうのです。

これまでのお話のまとめ

それでは、
主な内容をおさらいしてみましょう。

あなたが頭で考えて、
または「勘」で投資する場合、
失敗する確率は9割以上です。

なぜなら、投資家のほとんどは
以下のような判断ミスを起こすからです。

 一貫性なく、
意見が右往左往する (一貫性のなさ)

意見が右往左往しながらも、
自分はちゃんと投資していると固く信じている。

自信過剰
自分ならきっと上手に乗り越えられる。
自分だけは大丈夫。
自分は絶対正しいから、
投資はハイリスクでも大丈夫、
ハイリターンを狙うべき!

期準点のバイアス、損失回避、気質効果
買った値段以下では絶対に売らない。
少し価格が上がれば素早く売って喜ぶ。
投資の必勝法「収益は長く、損失は短く」と正反対。

確証バイアス、少数の法則
聞きたいことだけ聞いて、
信じたいことだけを信じる。
自分の意見と同じ情報だけを集めて、安心する。
自分の意見と違う情報は無視する。
自分の見解と同じ人の話を聞けば
検証なしでも信じる。

統計への無知、少数の法則
統計分析とは? なぜ重要?

情報の弊害

情報に惑わされてしまう。

ぜひ、気を付けてみてください。

私達は起きている時間の95%は
直感システムにしたがって行動し、
複雑な論理と思考が
必要な5%だけに推論システムを使用します。

推論システムを
もっと使えればいいのですが・・・。

最後に、
このブログを書くと決めた少し前に
暗号資産の投資を始めた知人のエピソードを
共有します。

彼女とはこのブログの内容についても
話したことがあるので、
暗号資産の投資知識はある方です。

ところが、とんでもない実態が発生しました。

彼女はあるアルトコインが上がる
という噂を聞いて(情報の弊害)、
これを根拠に1月12日頃、
18万円でいくつかのアルトコインに
分散投資をしました。

何の根拠もないのに、
当たり前にその暗号資産の価格が
高騰すると固く信じたのです(自信過剰)。

中の人が横から何度も
「根拠もないし、危なさそうだからやめたら?」
とアドバイスしましたが、

後に知人は
「そのアドバイスは一言も頭に入らなかった」
と告白しました(確証バイアス)。

画像5

彼女は、14日まで暗号資産が大幅に値上がりしたら
1週間以内に、移動平均線の下に離脱した場合、
すぐに売ると決めていました。

15日、収益は-20%。
彼女は1週間以内に売ることができず
1月までには必ず全て売却すると、
以前と話が変わっていました(一貫性のなさ)。

1月末、中の人は彼女と食事しながら
「今の投資戦略(?)は、あまり良さそうじゃないし、
リスク管理もきちんとできてないから、
このまま売って再び始めたらどう?」
とアドバイスしました。

しかし、彼女は損失は嫌なので
「もう20%も損したから
元本が回復するまで待つ」と答えました。
 (基準点のバイアス、損失回避)

中の人が彼女の暗号資産ポートフォリオを
調べたところ、
かなり多くのアルトコインを保有していましたが、
メジャーコインのうち、ビットコインがなくて
「いろんな暗号資産を保有する戦略だと思ったけど、
ビットコインはなんで持ってないの?」
と聞いたら、
「保有してたけど、
途中で1,000円利益が出たから売っちゃった」
と答えました(気質効果)。

彼女は昼飯を食べてる1時間のうちに
4回以上、コインの価格を
チェックしていました。

(1月までに全て売却できず)
2月上旬になると、
コインの価格が上がって
彼女は元本を取り戻すことに
成功しましたが、
すぐに売り出すと言い出しました。
(もう一度の損失回避+気質効果)

中の人は
「いや、なぜ今売るの?
お金を増やすために
投資したんじゃないの?」
と引き止めました。

知性と教養のある「正常な人間」が
たった2週間前に説明した
バイアスを全部見せたのです。

彼女をあざ笑う前に、
一体なぜ、あんな行動をしてしまうのか
一度考えてみましょう。

理由は簡単です。
彼女は正常な脳で、
これによるバイアスがに影響されるのが、
人間です。

 むしろ、このように投資しない人々が
特殊なのです。

しかし、成功する投資家になる秘訣は、
上記のようなバイアスから引き起こされる
感情を克服することにあります。

次回は、どうやってこれらを克服するか?
についてお話しします。

つづく

この記事が参加している募集

#お金について考える

38,483件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?