とはいえアンパンマンはイシュー度をあげるべき?

1〜2歳あたりで、こどもがアンパンマンに熱狂するケースは多いと思います。周りの子を見ていても我が子をみていても、よくもまあこんなにハマる対象を発明できたもんだなあと感心するほどハマりますよね。というわけで今回もあえてここからはそれを批判するのですが、親の立場でこのアニメを見て私は最悪のアニメだと思いました。

暴力を選び、しかも解決しない

前のnoteで取り上げた「イシューからはじめよ」では、アウトプットの質の向上には、問題の質と解決の質の両方をあげることが必要で、特に効率の観点から前者が重要だという点が説かれています。これに照らして考えると、アンパンマンは問題の所在どころか解決方法の検討さえせず、なんとかのひとつ覚えのように毎回毎回問題の原因と決めつけられているバイキンマン個人を必殺パンチで遠くにふっとばしているだけなのです。

話のつくりも、最初から決まっている必殺パンチという解決策にたどり着くためのストーリーを考えているだけに見えます。でもそれでも、ちょっと考えてみれば、問題はちょっとした言葉遣いとかそんなレベルなのです。だいたいその食べ物をバイキンマンが無理やりとろうとするのが問題なんですが、食べ物の作り手(被害者)はもともと誰にでもその食べ物を振る舞いたいという気持ちを持っているので、話し合いによる平和的解決方法が見えているといってもいい状況です。そんな中、件の暴力的解決方法が選択されます。(しかもその結果、バイキンマンをふっとばすだけであって、結局また同じようなことが繰り返されるので根本的には解決さえしてません。)

オリジナルは少し事情が違う?

でも実はアンパンマン、もともとはこんな話ではありませんでした。昔の作品としてわりと有名な絵本では、彼はお腹をすかせた人に自分の頭を食べさせるだけ(食べさせすぎて最後には頭がなくなってしまう)。しかもさらに本当のオリジナルと言われる作品では頭があんぱんですらなく、彼はあんぱんを人々にくばるだけの人間(ただし空は飛べる)で、最後にはなんと不審な飛行物として撃ち落とされてしまいます。

あとがきかなんかには、本当のスーパーマンというのは戦闘力が高いとかじゃなくてお腹をすかせた人に食べ物をあげられる人のことなんじゃないか。みたいなやなせさんのコメントがありました。

あまりに慣れ親しんだので忘れていたけど、たしかに言われてみればパンチなんかよりも「頭を食べさせてあげる」というのがこのキャラの特徴であって、そしてそれはヒーロー像として結構エッジがたっています。なんかメッセージ性バリバリに思えてきました。でもじゃあなぜ、今のアニメではバイキンマンをボッコにしてばかりいるのでしょう?

どんでん返し?

最近の劇場版で、アンパンマンがバイキンマン以外の原因でピンチに陥ったとき、バイキンマンがお前を倒すのは俺なんだ的なことをいってアンパンマンを助ける(銭形のとっつぁん的な)シーンがあります。これについての解説サイトを見ていると、やなせさんは生前、著書の中で以下のコメントをなさっているという情報がありました。

生きるということはバイキンとの戦いを避けて通ることは不可能!
それではバイキンを全滅させればいいのかといえば、その時は人間そのものも死滅してしまう。パンも酵母菌、イースト菌がなければつくれない。しかしインフルエンザ菌とかいろいろ怖いバイキンもいて戦わなくてはいけない。健康であるということは善玉菌と悪玉菌のバランスが良好な状態。
これは国家の成立についてもいえることで、独裁、専制はファシズムの危険がある。
だから、アンパンマン対ばいきんまんの戦いは永久にくりかえされるわけで、そこにバイタリティーが生まれる。

アンパンマンとバイキンマンが永久に戦っているのは、こういう理由づけがあったとのことです。一瞬なるほど、みたいに思ってしまいますが、よく読むと変です。菌には害のある菌もあるけど必要な菌もある、というファクトをもって、ばいきんと永遠に戦う必要性を主張しているようですが、害のある菌がなくなる(戦い終える)状況に至ってはならない理由がよくわかりません。インフルエンザ菌もバランスよく存在する必要があるのでしょうか。あと独裁、専制は(ファシズムという副作用はあるけど)国家の成立にとって必要なものだ、という前提が言外にあるのも不思議です。前後の文章を読んでいないので、読めばもしかしたらわかるのかもしれませんが。

繰り返すアンパンチの物語に納得感を与える

とはいえ、常に善のためには悪が必要、みたいなメッセージはなんとなくわからんでもなくて、もはやアニメもなんとなくそういう作品にも思えてきました。ただ、こういった背景を知らずにアニメだけ見ていてもそれは全然伝わりません。

むしろ善だけではうまくいかない、という世界を描く、善しかいないストーリーとかどうでしょう?アンパンマンは善であるという自分の役割を全うしたい、もしくは自分の存在価値を発揮したいので、わざと顔パンの真価を発揮できるような飢餓を作り出す、もしくはパンチに値するような悪を作り出してしまうという過ちを犯してしまう、マッチポンプヒーローとか。それか、当初の「(むしろ暴力ではなく)空腹を満たすのがヒーロー」というメッセージに回帰するか。

・・・ということで、途中で風向きが変わるかと思いきや、完全に(バイキンマンと戦い続けるスタイルの、現行アニメの)アンパンマンを否定しっぱなしに終わってしまったので、ひっくり返すような情報がほしいところで、見つかれば追記します。

以上、引き続きよろしくお願いいたします。

今後も記事の有料化は考えておりませんので、もし本noteを相当気に入っていただけました場合には、誠に恐縮ではございますが投げ銭などいただけると執筆継続の可能性が高まりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。