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気になることば: サイアン、ジットウ

きょうは、気になることばについて。

教職にまったく関係のないLINE上での話。「詳細な案はあとで」の意味で「あとから"サイアン"を詰めていきましょう」…と打とうとしたら、あれ、変換されない。

「細案」が出てこない。なぜだ。

自分が使いたいことばが一発変換されないとき、「あれ、ひょっとしてそんな言葉はないのか?」「もしくは一般語ではないのか?」と、好奇心をかき立てられる。

調べてわかった。自分が「細案」という言葉とどこで出会っていたかが。

「細案」は、学習指導案のタイプをいう言葉だった。単元名や意図、時間割まで詳細に書き込んだ学習指導案のことで、対義語は「略案」。


こんなところで教職の影響が出てくるのである。まったく。


指導案を「細案」と「略案」にわけることは授業で知り、覚えていた。しかし「細案」とは「詳細な案」というような意味で、国語辞典にも載っているような一般語だと思い込んでいたようだ。学習指導案に限定した教職用語であるとは思いもしなかった。

でも、「細案」ってすごく直感的にわかりやすいし、短く、口に出した響きもいい。十分、一般語になるポテンシャルはあると思う。

現在の一般語にも、もともと業界用語/専門用語だったものは多い。それが一般の人にも浸透して、限定的な意味ではなく広い意味で使われ出したら、国語辞典にも載る。

よし、自分は「詳細な案」という意味で、教職じゃない場所でもどんどん「細案」を使いつづけるぞ。


似たような例がもう1つ。「実踏」。ジットウ、と読む。

「よし、石橋の地図はよく見た。あとは実踏だ!」

(資料などで見るのに対し)実際にその土地を訪ねて体験、あるいは調査・取材することをいう、と思っていた。

ところが、これも調べると教職用語。「実地踏査」の略だそうで、遠足や校外学習の前に、見学先を実際に訪れて教師自ら調べてまわり、トイレや宿泊場所も確認して、計画立案や危機管理に役立てるものらしい。

なるほど。でもこれも、とても魅力的な言葉。実際にその土地を踏みしめて、調べている実感がすごく伝わる。「下見」よりも空気感が伝わりませんか。

おもに社会科の先生を中心に使われてきた用語?という情報もある。そういえば、私がこの語を初めて聞いた相手は、社会科が専門の教職の先生、それも現場を大事にする人だった。「実踏」も一般語になればいいのに。


きょうは、三省堂の飯間さんに聞いてみたいような「ことば」の話でした。



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