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【教職プレイバック】阪大教職学生、某高校で探究学習の「講師役」になった話。


大学生になってから、記録癖ができました。このnoteも、何年か経ったらすぐには思い出せなくなるようなことを書いていきたいと思って、やっています。

そんなわけで、少し前のこともプレイバック、「思い出編」ということで書きます。

なぜか講師役に

あるとき、大阪府内の某高校へおじゃまし、生徒の前でお話しする機会がありました。

テーマは探究学習。阪大生の中には、教職学生を中心に高大連携に取り組んでいる子も多く、大学生が高校の現場に入り込み、探究学習のサポートをしています。(団体としてそうした活動をしているのがSUITです。)阪大生の顔なじみになっている高校が、いくつかあるわけです。

そのうちの一校で、「探究」の授業の一環として、地域づくりや社会貢献に取り組んでいる大人や大学生を何人か招いて講演を聞くというプログラムがありました。

私自身は高大連携にはそれほど首を突っ込んでいませんが、教職新入生サポート(下記)の活動を取りまとめていたということで、「コロナ禍で孤立する新入生支援」の活動をしている人、という名目で講師役で呼んでいただきました・・・!ほかに来ていた方々が皆さんすごい方だったので、私でいいかな~と若干気後れしながらの参加でした。

私の目的はひとつ。

めったに入れないいまの高校の現場を見たい!!生徒がどんな顔でどんな雰囲気で「探究」と向き合ってるの?

いまでこそ「探究」的なことが大好きな私ですが、自分が現役の高校の生徒だったら、「探究」なんて言われても…と戸惑うか、やる気が出ないか、退屈か…。よほどうまい先生や助言役に導かれないと、やる気が出ないのではないかと想像しました。

好奇心まる出し。自分が生徒に伝えられることなんて大してないわけで、その分自分のほうは生徒や学校からいろんなものを感じ取って持ち帰ろうと思いました。

その学校は、数年前から探究学習に力を入れています。卒業後の進路は、大学進学が半分弱、専門学校などが3割台、就職する生徒もいる、といった状況で、進路指導やキャリア教育としての面をもつ探究学習を、「売り」の1つにしています*。

生徒たちは、自分たちで課題を見つけて、調査し、発表するまでを1学期間かけて行いますが、その手始めとして、地域の大人の話をきいて参考にしようということでした。

*中堅校と探究学習との関わりやその動向、盛り上がりについては、大阪高生研(高校生活指導研究協議会)の研究報告などに詳しい。

画像はイメージです

いざ見てみて

いざ生徒の様子を見てみて、「なるほど~」。私は内心ニヤッとしました。ほかの登壇者の方の話を真剣に聞いている子もいるにはいますが、むしろ聞いていない子が大半。友達としゃっべたり居眠りしたり…。もちろん人の話はちゃんときかないといけませんが、学校が掲げる「探究」に、「そんなこと言われても…」と困惑しているようにも見えました。

むしろこの反応、様子が普通だよなあ。

私と一緒に講師役で参加した、教職学生の親分Nさん(院生)も「ウーム、どうしよう」といった様子。しかしNさん、自分の出番がはじまると、さすがの存在感と声量で圧倒。ぐいぐいきかせていきます。体育館の前のスピーカーと後ろのスピーカーがハウリングする勢いでした。心をつかんで離さない、真っ向勝負の10分でした。

私もどうしようかと思いましたが、頭の中でリハーサルしていた内容からは急きょ変更を加え、生徒を当てて話してもらったり、雑談をしたり、ボケたりしながら進めました。ボケてる間はみんなちゃんと起きてきいてくれているんですが、本筋に戻ると急に離れていってしまうので、慌ててもう一ボケ。30秒に1回ぐらいは脱線していました。

Nさん評「すごいよ~、全員起きてたもん!」

いや…私はNさんのように直球勝負ができません。。。

探究

探究って本来は、「気になる!」といった自分のすなおな心の動きがまずあって、自発的に始まるもののはず。それを、学校教育で、教師が主導して半ば強制的に行わせることにどの程度意味があるのかという議論は、繰り返されています。「探究学習」は、本質的な相克を抱えています。

そのような中で、各地で先生方が奮闘されています。リアルな現場をこの目で見ることができました。

数週間後、彼ら生徒の探究学習の成果を発表する会が行われ、ふたたび招いていただきました。グループにわかれて、調査や社会活動そのものをやってみた成果、模様や感想をまとめて発表してくれました。

警察官と一緒に地域をまわり、防犯上危険な箇所を浮かび上がらせる取り組みなど、「すごい!」と思わされるナイス探究も。

一方で、おしきせの感の強い"探究"や、これは探究とは違うのではないかと思えるものまで、さまざまな発表が並び、ウーム、と深く考えさせられました。

探究は楽しさに基づくものですが、その楽しさが「強制」されたように感じるとき、人は最も楽しくないと思うのかもしれません。

高校に探究学習が取り入れられる中、取り組みの仕方、生徒へのアプローチの仕方、さらには高校生活全体の中の「探究学習」の位置づけまで、全国的に再考が必要なのではないかと感じました。

また、「押し付けずに、生徒をその気にさせる」特別活動のファシリテーション力をいかに学校として持つことができるか、そして外部の力をどれだけ借りられるかが、現状を打ち破るカギになると思いました。探究学習のサポートに外部から入るSUITメンバーのような大学生も、その一助になるでしょう。

イメージです!!

終わって

私の話をきいた生徒から、感想をもらいました。みんないっぱい書いてくれてありがたい限りでした。

「人のためにすることも大事だけど、まずは自分が楽しめるかが大事」

「私たちと同じ年の人も、○○さん(私)と同じような活動をしている人がいるなんて知らなかった」

「大学の中で作る人間関係の大切さがよくわかった。楽しそう→楽しいの連鎖が素敵だと思った」


そして、印象に残って忘れられないのがこれ。

「○○さん(私)が、人生、楽しそうだった」

そう言われると嬉しいですが、これを書いてくれた子は人生楽しいのかな。いまあんまり楽しめていないのだとしたら、「どうも!大阪大学から来ました~!」などと言って気ままに話をして帰って行った私を、彼/彼女はどういう目で見つめていたんだろう。

いまでもときどき考えます。


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