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新生テクスチャ撮影装置

社内オリジナルのphotometric stereo用の撮影装置の新生を行いました。
今回使用した3Dモデルデーター(Blender)やArduinoのプログラムコードもページ最下段からダウンロード出来る様にしていますので、是非制作に挑戦してみて下さい。
そして改善案等のご連絡お待ちしております。


新生までの道のり

旧機材紹介

ヘキサドライブではプロジェクト次第ですが、自作のテクスチャ撮影装置を使ったマテリアル作成を行っていました。

旧スキャナー外観
作成テクスチャ例

新生のモチベーション

重宝していたのですが運用していると不満も出てきます。
LEDの取り付け位置やカメラが微妙に傾いてしまっている点、配線が映り込む等です。
これらを解消する事で「もっときれいなテクスチャが作れるに違いない」との思いからアップデートに踏み切りました。

旧スキャナーの内側

新しい装置の概要

LEDの取り付け位置の改善を起点にアイディアを練った結果として、3Dプリンターを使えば正確に計算した形状を面倒な計測等を行わずに実現出来るのではと目論んで設計を開始しました。
更に折角α7が社内にあるのだからα5000からの置き換えもしつつ、ついでに巨大化した回路の整理と不必要に巨大なバッテリーの置き換えも一緒に行ってしまいます。

巨大な回路とバッテリーにα5000で運用

完成予想図

ということでBlenderで装置を作成します。
サイズ等細かい部分を後から数値入力したいのでジオメトリノードで作成していきます。
調子に乗った結果全てをジオメトリノードだけで作成してしまいました。mesh booleanで頂点が重なった時に高確率で形状が壊れる現象に悩まされて0.1mm程度形状を微調整したり悪戦苦闘しました。
旧装置の設置面の直径がおよそ90cmで縁が映り込むことがあったので、新装置では100cmにしてみました。

初期は上下パーツをねじ込めるような構想も…
重量対策で薄い壁とハニカム上の骨で構成されます

マイコンや回路もArduino Nanoに切り替えて以前の1/4近い面積に全てを押し込みます。
元々回路はシンプルでArduinoからの信号でmosfetを制御してLEDに通電させて、同じタイミングで同様にmosfetでカメラのシャッターを切るだけの構造です。
今回検証したところαシリーズではボディに接続したmicro USBのD+とGNDを最初から短絡させておいて、後からVBUSを短絡させるだけでシャッターを切る事が分かったので、旧装置で使っていたD+とGNDの短絡用のmosfetを省略します。ついでにmosfet前に置いていた抵抗も不要になる為省きます。


古い機種でないとmicro USBついていない事に時代の流れを感じます

組み立て風景

組み立ては紆余曲折の連続です。
現在市販の低価格帯の3Dプリンターでは30cm角程度のサイズが最大出力サイズという事と、
FDM方式の3Dプリンターは厚みが少なくて背が高いデーターを印刷すると台座の揺れで印刷物が剥がれてしまったりするので、
パーツを半分にして出力したのでまずはこれらを張り合わせます。

総重量は2Kgを超えます、プリンターの精度も悪く形状がズレていたりもします

そしてこちらが今回の目玉のLEDになります。
テープライトを溝に沿って両面テープで取り付けるだけととても簡単です。
計算上地面に対して45度、垂直軸に対して45度ずつで以前より高精度で取り付けされています。

溝にピッタリテープLEDがはまるのは気持ちいいです

実は順調ではなく失敗も沢山しています。
共通のアルファベットが振られているパーツ同士を接着するだけの簡単なお仕事ですが、間違えても内側のハニカム構造のつながりが途切れるだけで運用に問題はありません。
天板パーツは歪んでしまって綺麗に張り合わせられなかったのでパテ埋めをしました。
張り合わせ終わったらパーツ同士をM3ネジで組み立てていきますが、接合部がM3ネジだけでは弱すぎるので強力なテープで固定することになり、天板に至っては1カ所以外歪みでネジが止められなかったのでここも強力なテープで固定しました。
見た目はいまいちですがちゃんと形になっています。

天板以外組み立て完了

回路もこのサイズに収まりました。
社内に回路のプロがいましたので際どい半田付けも対応して貰えました、プリント基板作った方がかなり楽になると思います。

ギリギリの設計にしたことで蓋がしっかり閉まらない

カメラはこのようなパーツを本体とレンズの間に取り付ける事でドームに固定出来ます。
レンズ周りのサイズや形状に合わせる為に8回くらい印刷しながら調整しています。

α5000でピッタリと思ったらα7はファインダーがついていて微修正したり

動作風景

およそ4秒で撮影完了です。
オートフォーカス処理が省かれたことで旧装置の倍速程度で動作出来るようになりました。
設定を詰めればもう少し高速に動作させる事が出来ると思います。
内部の様子は以下

従来に比べてタイリングしやすく、法線の精度も向上していて満足のいく仕上がりです。

以前ならタイリングし辛い様なパターンもあっさり良い感じに仕上がりました

データーへのリンク

最後に今回の作成に使用したデーターへのリンクを掲載しておきます。

※Blender4.0以降が必要です

※Arduino Nano用のプログラムです

Blenderファイルの構成についての簡単な説明

PCスペックによってシーンが開かれるまで1分以上掛かる場合があります
  • Materialsコレクションには部品となるデーターが配置されています。

  • Assemblesコレクションには各種部品等を使用して撮影機材の組み立てを行った最終的な見た目が配置されています。Exportsコレクションには3Dプリンター用のデーターが配置されています。

  • ※各ジオメトリノードで共通パラメーターを参照するような構造で作成していません。適宜オブジェクト毎にパラメーター調整を行う必要があります。

部品

部品については同じものを購入する事は難しいと思いますので目ぼしい部品を列挙しておきます

$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
名称 & 個数 & 備考 \\ \hline
Arduino Nanoもしくは互換ボード & 1 & 制御の要 \\ \hline
テープLED & 32 & 数や長さは作るものに合わせて(12Vで駆動するものを推奨) \\ \hline
MOSFET(Pチャンネル) & 9 & LED点灯制御とシャッター制御 \\ \hline
DC12V昇圧回路 & 1 & LEDを光らせる為のブースター(無くても光ればいらないです) \\ \hline
モバイルバッテリー & 1 & 確実に5V出力出来るもの \\ \hline
micro USBケーブル & 1 & リモートリリース用 \\ \hline
mini USBコネクター & 1 & Arduino Nanoに給電する為にバッテリーからの配線を変換します \\ \hline
USB type Aケーブル & 1 & バッテリーからの給電用(バッテリーの種類に合わせてケーブルの種類は選んでください) \\ \hline
M3ネジとナット & 44 & ネジの長さは7mm以上推奨(5mmでは足りなかったです)
パーツが歪むと天板はねじ止め出来なくなります。 \\ \hline
\end{array}
$$

※これとは別にArduinoにプログラムを書き込むためにmini USBケーブルが必要になります。

注意点

  • カメラはSonyのα(ILCE)シリーズのmicro USBでシャッター制御出来る機種のみ対応しています。最近のはType-Cコネクターらしいので要注意です。

  • 全てのパーツのプリントアウトには360時間以上かかりました。

  • リモートリリース用のmicro USBをつなぐとカメラの操作が一切出来なくなるので、事前にフォーカス調整等を行って下さい。

  • プログラムはArduino Nano用に書かれています、異なるシリーズを使用する場合はピンの値を変更して下さい。