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ひさびさにクラブに行った。

初めてクラブに行ったのは、それこそ昔の恋人と今はなき六本木のYellowだった。

遠距離恋愛だった昔の恋人が東京に遊びに来ることになったとき、私はひさしぶりに彼と会えることをとても楽しみにしていたのだけど、彼が行く直前になって

「青木孝允って音楽家がね!六本木のYellowでね!DJやるんだよ!」と言ってきた。

そして彼はとくとくと青木孝允がいかに素晴らしく、DJをすることが希少なことなのかを語ってきた。

「…え?それって行きたいってこと?」

東京にいる間、ずっと一緒にいられると思っていた私は落胆した。

それまでライブハウスにはよく行くけれどクラブには行ったこともなく、なんか怖いイメージだった私は、クラブには行きたくなかった。

「えー…ずっと一緒にいられると思ったのに…」

渋々「いいよ…」とは言ったけど、私は大層機嫌が悪くなった。

彼が東京にやってきてYellowに行く日、途中まではついて行くことにした。

二人でごはんを食べた六本木のエスニック料理の店は、二人ともしばらく無言になるくらい高いのにまずかった(笑)。

「あの別の席の外国人の一家見てよ(笑)。まずいから一家みんな無言だよ(笑)。」と言った。

そのあとモスバーガーに行って食べ直したら、「モスバーガーは美味しいなぁ」と彼はしみじみ言っていた。

Yellowに行く直前、彼は明らかにソワソワしていて、あまり私の話を聞いてなかった。

私はせっかく彼が東京に来たのに、不機嫌が止まらなかった。

あの頃の私は、今以上にめんどくさい女の子で、彼が何かに夢中になっているといつも不機嫌になり、喧嘩していた。

映画を観に行って、終わってから口論をしたこともあった。

なんというか、そういう相性だった。

彼は私を置いてでもYellowに行く気満々だった。

私は不貞腐れて、渋々一緒に行った。

彼は私をほったらかしでフロアで踊っていた。

私はクラブの雰囲気に馴染めず、外のバースペースで休憩していたら、知らない男の人にナンパされたりした。

当時はナンパとはわかっていなかったけど…。

不貞腐れていたので、他の男の人と話して気を紛らわせていたのだと思う。

あんまり記憶にないけど、彼は他の男の人と話している私を見つけてびっくりしていたような気がする。

その後は一緒にフロアに行ったけど、正直よくわからなかった。

彼は青木孝允のDJに大層感動していた。

私は彼との気持ちの温度差に寂しくなりながら、終わってもずっと不貞腐れていた。

それが初めてのクラブ体験だった。

***

彼と別れて失意のどん底で、なんにも楽しみがない時期をずっと過ごしていたけど、一つハマったものがあった。

その当時タワーレコードが運営していたインターネットラジオi-radioを聴くようになり、その中でも原宿のBIG LOVE Records(当時はEscalator Records)の代表仲真史さんのBIG LOVE RADIOにハマっていた。

仲さんの紹介する音楽が面白かったし、イケメンだったこともあり「せっかく東京にいるんだから…!」とミーハー心でEscalator Recordsに行くようになり、最初はCDだったのにそのうちレコードを買うようになり、ついに仲さんがDJをしている三宿のWEBに行くようになった。

あんなに昔の恋人とのトラウマがあるクラブ…そのトラウマを乗り越えようとするかの如く、当時は学生でお金がない身ながら、三宿WEBにちょこちょこ通うようになった。

だんだん行くとクラブの楽しさがわかるようになってきた。

昔、雑誌のCUTIEを読んでいて、確かそこで電気グルーヴの石野卓球が「ロックはバンドが主役だけど、テクノはみんなが主役。ハッピーなんだよ。」と語っていたのを読んだことがあった。

私は当時テクノにまったく興味がなかったので、石野卓球が言ってる意味がわからなかった。

でも、クラブに行って、フロアが盛り上がる一体感を味わったときに「あー、みんなが主役ってこのことか!楽しい!」と思った。

しかし、クラブは朝までいなきゃいけないのが、20代の当時から辛かった。

だいたい一番盛り上がるのが2時くらいの時間なので、そこが終わるとガクッと疲れがやってきた。

始発の電車に乗るものの、何度も駅を寝過ごしてなかなか家に帰れず、早く部屋の布団で寝たいのに…とよく思っていた。

学生だったので、タクシーになんて乗る余裕はなかった(今もないけど)。

クラブの楽しさはわかったものの、その「始発を待つ辛さ」が辛くて、歳と共にクラブを敬遠するようになった。

***

時々、昼ごはんを一緒に食べるunaさんという友人がいる。

unaさんの会社と私がたまに行く資材屋や教えている学校が近いので、たまに都合が合えば昼を食べている。

unaさんはイケメンでDJをやっているのに、なぜかネガティブでちょっとこじらせており、最初はその面白さがわからなかったけど、だんだんじわじわと面白さがわかるようになり、いつもオチのないような話をぼんやりしながら昼を食べている。

で、先日も近くに行くから「お昼食べませんか?」と聞いたら、珍しく返信が遅く、「ちょっとバタバタしていて…」と連絡があった。

unaさんのTwitterを見たら、どうやら二日続けてDJイベントがあるようだった。

そういやunaさんのDJを聴いたことがないことに気付いた。

というわけで初めてunaさんのイベントにいくことにした。

イベントは渋谷のOTOafter7という19時から23時までのイベントだった。

「…終電で帰られる…!」

もはや徹夜なんてしたら2日くらい使い物にならない自分としては、終電で帰られるクラブは最高だった。

しかし、肝心のunaさんのDJは、なんとその前の目白のクーポラのパフェを食べる会で盛り上がり過ぎて5分も聴けなかった(笑)。

そのあとは、他の人のDJを聴きながら、踊ったり、unaさんが持ってきた漫画を読んだり、用意されてあった、これまた目白のエーグルドゥースのケーキを食べたり(トップ画像のケーキたちです。非常に美味しかった…)、あわいちゃんという友人にタロット占いしてもらったり、とゆるゆる過ごすことができた。

「人が来なそうで胃酸が出そうです☻」と言っていたunaさんは遊びに来たことを喜んでくれていた。

私はひさびさにクラブのこの雰囲気を味わえて楽しかったし、そして、とにかくちゃんとその日中に帰られてよかった(笑)。

あー、この時間帯のイベントならまた行きたいなーと思った。

そして、ひさびさのクラブで、冒頭の昔の恋人とはじめて行ったクラブのことをふと思い出したのであった。





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