殺人ハイウェイ2000マイル
照りつける日差し。突き抜けるような青い空。
アリゾナの砂漠をどこまでもまっすぐに続くハイウェイ。
運転席から太さ30インチの上腕をこれ見よがしに見せつけながら時速80マイルで突っ走る大型トレーラーの運転手。
カーステレオから大音量で流れるのはガンズ&ローゼズの『Welcome to the Jungle』。
上機嫌なトレーラーマンの視界に入るのは前方を走る軽ワゴンだ。
よほど速度の差があったのだろう。すぐにその姿が大きくなった。
「ハ!ノロノロ走ってんじゃねーゾこのタマナシファック野郎!」
怒声とともにクラクションだ!
ブッブー!ブッブッブー!
しかし軽ワゴン無反応!
トレーラーマンも舌打ち!
ならば車間距離猛接近!
だが、なおも軽ワゴン無視無反応!
ここに来てトレーラーマンの怒りは頂点突破!堪忍袋が爆裂!
マジオコムカチャッカファイヤーボルケイノ状態!
車間距離をぎりぎりまで詰め右に左にステアリングを切りプレッシャーを与える!
運転席窓から振り上げるのは鍛え抜かれた30インチパイソンアーム!
すると突然軽ワゴン急加速!
トレーラーと距離を開けると道路と直角になるようにドリフト停車!
当然トレーラーも停車!
トレーラーマンが怒気を全身に漲らせ軽ワゴン運転席に向かったそのときだ!
軽ワゴン運転席のドアが開き出てきたのは中肉中背の人間だ!
身長197cm、体重180㎏のトレーラーマンから見ればチビのクソザコにしか見えないだろう!
しかしトレーラーマンは驚愕の表情を浮かべて歩みを止め、その場に立ち止まった。
なぜか?軽ワゴンドライバーにはひとつだけ普通の人間とは異なる点があったのである!
頭部が狼そのものであったのだ!まごうことなき狼男!
そう、これこそがホワイトハウスが秘密裡に開発していた交通トラブルの切り札『煽られ狼』である!
狼男は素早い動きでトレーラーマンに襲い掛かると両腕のハサミで拘束、尾の先端にある毒針を首筋に突き刺した!
今ここに、煽り屋vs狼男の全米をまたにかけた死闘が始まった!
【続く】
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