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5月13日〜5月19日

5月13日
・授業時間以外ずっと "Stranger Things" を観ていた。

5月14日
・"Stranger Things" 4シリーズを完走した。舞台がアメリカ黄金期の小さな町、登場人物もブロンド髪に青い瞳の少年たちということで、まず画面が楽しい。物語は、町で次々と起こる不可思議な出来事に大人も子供も巻き込まれ、それぞれが真実にたどり着くまでを同時並行的に追っていく構成。シーズン2くらいまでは監督の場面転換に対する異常なまでのこだわりを感じた。ある人物が「お前の母さんはノックもしないのか」と言った次の場面は全く関係のない人物が誰かの家のドアをノックするところから始まる、みたいなのを徹底していた。こういう工夫が没入感を生み出し、全作品観なきゃ気が済まないという謎の衝動を駆り立てたのかもしれない。しかしシーズン3は客に媚びている感じ(良く言えばライトでコミカル)、シーズン4は目も当てられないほど残酷なシーンが多くて、結局シリーズものって初期が1番面白いなと思った。

nerdは世界中どこに行っても虐げられる

・帰りのフライトの日付を尋ねられて自信満々に答えたが、後から確認したら1日間違えていた。バイトのシフトとかでもよくやらかすのだが、日付を勘違いしてしまう癖がある。予定ができたらその場でスマホのメモ帳に打ち込むのだが、肝心のリマインダーをセットしていなかったり、そもそも間違った日付で入力していたりする。数字の認知機能みたいなのに欠陥があるとしか思えない。

5月15日
・授業はリスニング練習の回で、録音された日本語の音声を流し、受講生に内容をたずねるだけだった。何も新しく指導することがないのでどうしても授業は単調になる。上にも書いた通り数字の認識が著しく苦手なので、電話番号を聞いてメモする問題が学生と同じくらいできなかった。このまま就職活動をしたところでロクに働ける気がしない。
・Blink It で初めてプリントアウトを注文した。アプリでPDFをアップロードすると、白黒かカラーか、縦か横かを選択できる。サイズはA4のみ。演奏会で使う楽譜を印刷してもらったのだが、配達のおじさんが適当に扱うので届いた紙はすでに折れ曲がっていたし、注文をミスって半分ほどは無駄になった。

5月16日
・珍しく雨が降った。日本も低気圧が続いていると聞いた。そのせいかはわからないが、とにかくずっと頭が痛かった。帰国する頃には暑くなっているか雨が降り続くのだろう。嫌いな季節が永遠に続いているような感覚だ。

5月17日
・眠れなくて、明け方『レディ・バード』という映画を観た。これまたアメリカの片田舎の小さな町が舞台だった。思春期真っ只中の女の子が母や友人、恋愛関係で色々失敗しながらも成長していく、という別に意外性の無い話。ストーリーというよりかは、画面の美しさに惹かれた。特に上京した彼女が不意に訪れた教会で讃美歌を聴くシーンは印象的だった。キリスト教には全く縁のない人生を送っているが、教会音楽を聴くのは好きだ。あまり肯定的なことばかり歌う曲は好きではないのだが、あの力強いコーラスを聴くと、人間の内に眠る圧倒的な生命力が解放されているのを感じ、元気をもらえる。このシーンで、カトリック系の高校に通っていた主人公はキリスト教文化の根付く故郷の魅力を再発見し、そこに住む両親に思いを馳せる。一度外に出たからこそどれだけ素晴らしい場所にいたか気付く、この留学で実感したことそのものだったので、なんだか主人公に感情移入して観ていた。

主人公の痛々しさ含めてまぶしかった

5月18日
・夕方からお土産探しに町に繰り出した。『地球の歩き方』に載っていた Kalpa Druma という店は、工芸品が多かったが少々割高に感じた。定番の小さい象の置物とポストカードを友人用に買った。あと個人的にすごく気になって、タミル文字のカードゲームを買ってしまった。誰も一緒に遊べる人いないのに。2店目はデリーにもある good earth で、1番安い石鹸とグラスのセットを買った。本当はもっと買いたかったが、恐ろしい値段だった。最後に行ったのは Naturally Auroville Bontique という店で、たしか駐在員さんのブログを見て訪れた。ここが1番価格設定が良心的だった。Auroville というのは Pondicherry の近くにある、自給自足の生活を営む宗教信者の村である。ハンドメイドとみられる小さな女の子のマスコットがゆる可愛くて買ってしまった。

1階に布製品、2階にアーユルヴェーダ製品も
入り口から可愛すぎる
オーナーさんが欧米の方だった

5月19日
・観光もしたかったので昼前から出かけた。まず Chamiers Cafe という有名なカフェでモーニングをいただいた。日本でもこんなに優雅な朝を過ごすことはない。マッシュルーム・チーズオムレツが美味しすぎて1人で興奮していた。駐在員さんなのか旅行客なのかわからないが、日本人らしき客も多くて勝手に気まずかった。1階には ANOKHI のショップもあり、前回見たときに悩んで買わなかった服や雑貨がたくさんあって、勢い余ってまんまと買ってしまった。

デリーにはなぜこういうカフェが少ないのか
お金持ちしかいなくてこわかった

・急な雨に見舞われつつ、Fab India にも行った。ビル丸ごとそのブランドの製品が並んでいて、今まで見た中で1番品揃えが良かった。クルターを増やすか非常に悩んだが、日本で着るわけでもないので我慢した。Fab India の系列の Organic India で紅茶とドライマンゴーも買った。デリーより買い物が楽しくて困る。

デカくて全部は見て回らなかった

・その後は有名なヒンドゥー教寺院、Kapaleeshwarar Temple に行ったが、雨上がりで空が恐ろしく曇っていたうえに、夕方4時まで開かないということで外から写真だけ撮って終わった。南インドのヒンドゥー教寺院は彫刻が細かくてカラフルで、見ていると目がチカチカする。ぼーっと見上げていたらリクシャーの運ちゃんにしつこく話しかけられ、投げやりにビーチまで乗せてもらうことにした。Marina Beach は世界でも有数の長い海岸線を誇るのだが、なんせ人、ゴミ、野犬が多くて、海水もエメラルドではない緑なので、あまりロマンティックではない。観光客向けに馬が闊歩している。トウモロコシの芯やカニの殻があちらこちらに落ちていて気持ちが悪い。犬の亡骸に蠅が集っているのも見た。波の音に混じって聞こえる人々の会話は全く理解できない。脱水症状一歩手前の状態でその長いビーチをひたすらに歩き続けていると、なんだか映画のエンドロールの中に閉じ込められたような気分になった。

こんなに神様がいてたまるものか
江ノ島より汚い

・マドラス高裁まで歩こうとしたが限界を感じ、途中で Parthasarathy Temple に路線変更した。が、もう中に入って参拝する気にもならず、外から知らないブランドのコーラを飲みながら眺めて終わった。南インドの大きなヒンドゥー教寺院のそばにはため池があることが多い。実家の近所にあった貯水池を彷彿とさせるけど、おそらくコチで見たのと同様に、祭式に使うのだろう。喉が潤ったのでその辺をぶらぶら散歩していると、リクシャーの中でぐうすか寝ているおじさんや、バケツをひっくり返している牛など、デリーとそんなに変わらない間抜けで平和な日常風景が広がっていた。そんなのを見られるのも最後かもしれないと思うと、少し特別だった。マドラス高裁は近くまで行ったけど開いてなくて、そのままメトロで帰った。

ケミカルな味がした
近くで見かけた野菜市

・帰宅後、日本の大学から提出を求められる「留学体験記」を書いていたら夜中の3時になった。留学を通して学んだこと、の欄に書くことがなくて困った。最終的に捻り出したのが「他人にも自分にも期待しないこと」だった。この1文が私の留学生活は失敗に終わったという事実を物語っている。もちろん他にも初めて知ったこと経験したことはたくさんあるのだが、インターネットであらゆる情報が手に入るこの時代に、現地に行かないとわからなかったことがどれほどあっただろうと思ってしまう。そうなるとメインで体得したものといえば、インドで生活したという事実と、そこでなるだけストレスを溜めずにサバイブするための知恵くらいしかない。そのことすら留学しないとわからないのだから、根っから私の頭はポンコツに違いない。

♪ Mr. Incorrect / Malcolm Todd

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