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The Miseducation of Lauryn Hill

本日の“こずや”のBGMは、ローリン・ヒルさんの1998年の作品『ミスエデュケーション』です。

私が大学1年生の時に社会現象のような感じで日本でも大ヒットしていました。

現代のような多様化した価値観の時代には難しいことですが、当時はまだみんなが同じ方向を見ることができた時代でした。

90年代では、1991年のニルヴァーナの『ネバーマインド』とこの『ミスエデュケーション』が特に凄かったわけです。

ローリン・ヒルさんは、幼い頃から子役女優として活躍し、映画『天使にラヴ・ソングを…2』の生徒役で出演して圧倒的な歌唱力を披露してエンタテイメントの世界で大きな話題になりました。

その後、ワイクリフ・ジョンさんとプラーズさんと一緒にフージーズを結成して活躍しました。

ヒップホップを中心として、そこにソウルやレゲエを中心としたカリブ系の音楽の要素を取り入れた音楽性が特徴です。

1993年に『ブランテッド・オン・リアリティ』でデビューし、1996年の2ndアルバム『ザ・スコア』は1800万枚以上を売り上げて、当時のヒップホップ作品のセールス記録を更新しました。

ヒップホップのメインストリーム進出に大きく貢献して、ローリンさんはグループの顔として一世を風靡しました。

しかし、音楽的な評価はリーダーのワイクリフ・ジョンさんに向けられることが多く、それがストレスになり、自分の実力を証明する機会を探っていました。

同時に既婚者だったワイクリフさんとの恋愛関係が破局し、新しいパートナーであるボブ・マーリーさんの息子さんのローハン・マーリーさんと出会って妊娠しました。

これらの生活の様々な変化をインスピレーションにして、産休を利用し曲を書き始めて完成させたのが『ミスエデュケーション』です。

セルフプロデュースで、若手のコラボレーターを集めて、できる限り自分独りの力で作った音楽です。

ローリン・ヒルさん、当時23歳…。

アルバムは、学校の教室で出欠を取る教師の声で始まります。

ローリンさんの名前が呼ばれますが、そこに彼女はいなく、それまで受けてきた教育、押し付けられてきたルールが間違っていたことを悟って、一旦、自分を白紙の状態に戻し正しい知識を得る為に学校を抜け出した…という設定です。

ミスエデュケーションは誤った教育という意味です。

それ以降、授業をテーマに先生と子ども達の対話で構成したものを合間に入れつつ、自分の価値観を様々なアングルから語っていきます。

01.イントロ
02.ロスト・ワンズ
03.ラヴ
04.エックス-ファクター
05.トゥ・ザイオン Featuring Carlos Santana
06.ハウ・メニー・オブ・ユー・ハヴ・エヴァー
07.ドゥー・ワップ
08. インテリジェント・ウィメン
09.スーパースター
10.ファイナル・アワー
11.ウェン・イット・ハーツ・ソー・バッド
12.ラヴ・イズ・コンフュージョン
13.アイ・ユースト・トゥー・ラヴ・ヒム featuring Mary J.Blige
14.フォーギヴ・ゼム・ファーザー
15.ホワット・ドゥー・ユー・シンク
16.エヴリ・ゲットー、エヴリ・シティ
17.ホワット・ドゥー・ユー・シンク
18.ナッシング・イーヴン・マターズ featuring D'Angelo
19.エヴリシング・イズ・エヴリシング
20.ミスエデュケーション

自分の真価を認めようとしない人々に対して独立を宣言する「ロスト・ワンズ」、己を偽る人間に騙されてはいけないと警告する「ドゥー・ワップ」、音楽界に蔓延する歪んだ価値観に疑問を投げかける「スーパースター」、お金や名声に狂わされる人間の愚かさを指摘する「フォーギヴ・ゼム・ファーザー」など、攻撃的な曲が多くなっています。

その一方で、ワイクリフさんについての曲「エックス-ファクター」や息子のザイオンさんへの「トゥ・ザイオン」では、弱さや優しさを曝け出したり、子ども時代を回想する「エヴリ・ゲットー、エヴリ・シティ」で故郷への愛を語ります。

そして、“いつか変化は訪れる”と訴える「エヴリシング・イズ・エヴリシング」で、志を同じくする人々に団結を呼びかけて、表題曲「ミスエデュケーション」で“自分の運命は自分で決める”と独立を宣言してアルバムを締め括っています。

ジャマイカのボブ・マーリーさんの本拠地タフ・ゴング・スタジオで大半をレコーディングした作品は、生バンドを基本に、ソウルやR&B、ゴスペル、レゲエ、ラテン、ファンク、ジャズなど多様性に満ちた音楽になっています。

それらをヒップホップに昇華しています。

フージーズではラップを担当することが多かったローリンさんですが、ここでは歌い手としての実力を発揮しています。

参加ミュージシャンは大勢いるので全員を書くことは困難ですが、ドラム関連だけ書くとすると…。

大半はChe "Guevara" PopeさんとVada Noblesさんによるプログラミングによるもので、3曲でRudy Byrdさんがパーカッションで参加しています。

他に、Jared Crawfordさんが「エックス-ファクター」で、Squiddly Ranksさんが「インテリジェント・ウィメン」でドラムをプレイしています。

ローリン・ヒルさんが発表した唯一のソロアルバムです。

全米ビルボードのアルバムチャートでNo.1ヒットになり、ローリング・ストーン誌やスピン誌などで年間のベストアルバムに選ばれるなど興行面や批評面で高い評価を受けました。

1999年の第41回グラミー賞では11部門にノミネートされて、最優秀アルバム賞や最優秀新人賞など、当時としては女性アーティスト史上最多の5部門を制した作品でもあります。

ヒップホップアルバムがグラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞したのは本作が初めてで、2004年の第46回グラミー賞でアウトキャストの『スピーカーボックス~ザ・ラヴ・ビロウ』が受賞しているので、これまでにこの2作品だけの大記録です。

全世界で3000万枚以上の売上を記録して大ヒットしました。

カルロス・サンタナさんやディアンジェロさん、メアリー・J・ブライジさんといった錚々たるゲストが参加しています。

このアルバムは、音楽が身近な家庭に育ったローリン・ヒルさんが若い頃によく聴いていたというマーヴィン・ゲイさんやカーティス・メイフィールドさんといった都会的で洗練された…、それでいて、社会問題などに対するメッセージ性も強い音楽に影響を受けています。

このアルバムはローリン・ヒルさん自身の妊娠が大きく影響していて、女性の視点から様々な問題に言及しているところが特徴ですが、当時はそれがまだ珍しかった時代です。

当時と比べて現在は、そういったタイプのアーティストがかなり増えましたが、そんな現在のポップシーンを見ると、このアルバムが社会に与えた衝撃や影響の大きさがよくわかります。

子どもの頃から聴いて育ってきた音楽への愛、自身のルーツや信仰への愛、そして人生の中に満ち溢れた愛について歌うローリンさんが、ヒップホップが持つ可能性を押し拡げながら、音楽の様々なジャンルを超越した楽曲を創り出して、それを長い年月が経っても様々な国籍の人たちに愛されている真実…あぁ~ステキ♪

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