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40.虐 待

児童虐待、障がい者虐待、高齢者虐待と…、抵抗できない弱者に暴力を振るうという見過ごせない行為が後を絶ちません。

最近はニュースに出てくることも増えました。
 
これは、虐待軒数が増えたというよりは“このままではダメだ”と声を上げる人が増えたのだと思います。

だから、組織で揉み消そうとしても、その少数派の正しい倫理を持った職員があらゆる手段で漏らす…みたいな感じでしょう。
 
場合によっては、加害者の身勝手な虐待が原因で死に至る場合もあります。
 
施設や警察、地域の連携などの強化が進んでいるのですが 、虐待の件数が“0”になっていないのが現状です。
 
虐待なんて“0”にできそうなのに、実際は違って、虐待が当たり前のように起きていて“0”にならない前提で法律も福祉業界も動いています。
 
まず、そもそも虐待とは?ということですが、Wikipediaには以下のように書かれています。
 
“虐待は、繰り返しあるいは習慣的に暴力を振るったり、冷酷・冷淡な接し方をすることです。

具体的な内容は様々で、肉体的暴力を振るう、言葉による暴力を振るう(暴言・侮辱など)、嫌がらせをする、無視をする、等の行為を繰り返し行うことをいいます。”
 
虐待行為の分類としては、
 
①身体的虐待
被害者の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること。

②心理的虐待
被害者に対する著しい暴言または著しく拒絶的な対応をすることと、被害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

③介護等放棄(ネグレクト)
被害者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放棄、養護者以外の同居人による身体的・心理的虐待または性的虐待に掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること 。

④性的虐待
被害者にわいせつな行為をすること又は被害者をしてわいせつな行為をさせること。

⑤経済的虐待
養護者又は被害者の親族が当該被害者の財産を不当に処分すること。その他当該被害者から不当に財産上の利益を得ること 。
 
日本の福祉はこれまで、“高齢者”、“障がい者”、“児童”の3分野を中心に発展してきました。

この3分野の対象の人たちが、世間一般的に社会的弱者として認知されていたからです。
 
このことから、虐待という概念もこの3分野にしかありません。
 
親が児童を殴れば児童虐待になりますし、施設職員が高齢者を殴れば高齢者虐待になりますが、会社で上司が部下を殴っても虐待とはならず、パワーハラスメント(パワハラ)となります。

夫婦のどちらかがどちらかを殴れば、ドメスティック・バイオレンス(DV)です。
 
ただ、DVもパワハラも虐待と同じようなものです。
 
大抵の場合は力の強い方が弱い方を虐げる行為で、一度やっても大して反撃されないと思ったところで、常態化していく……醜く空しく情けない無様な凄くかっこ悪い行為です。

そんなに力が有り余っているのなら、訳のわからないことをやっている権力者に楯突いてより良い方法を模索するぐらいの方がよっぽど気分が良いと思いますが…。
 
とは言っても、この問題もまた、個人的な要因だけではなく背景には大きな社会的な要因もあることがわかります。

日本には3つの虐待防止の為の法律があります。
 
虐待防止法は、最初に“児童”分野で制定されました。

児童虐待防止法です。

児童虐待防止法は2000年に成立し、同年から施工されました。
 
正式名称は“児童虐待の防止等に関する法律”で、虐待によって児童の成長や人格形成に悪影響を及ぼすことを防止する為の法律です。
 
この法律により、児童虐待に関する理解や意識の向上が図られつつありますが、その一方で子どもの生命が奪われるなど、重大な児童虐待事件が後を絶ちません。

全国の児童相談所に寄せられる児童虐待に関する相談対応件数は、法制定直前の1999年度(平成11)の1万1631件から、2020年(令和2)には20万5044件に増加しています。
 
児童虐待の特性は家庭内や地域内に発生すること、虐待と認めない親が多いこと、長期又は多岐に渡る支援が必要になることです。
 
これらの特性を踏まえて、虐待防止に向けた基本的な考え方を整理すると、発生予防から虐待を受けた子どもの自立に至るまでの切れ目ない支援が必要になります。
 
そして、支援を要する過程の把握、初期対応の迅速化と積極的なアプローチによる親を含めた支援、児童虐待防止等の為の医療機関など関係機関の連携強化、要保護児童対策地域協議会の機能強化など…、市町村における取組の強化が挙げられます。
 
対象は18歳未満の者で、虐待類型は、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、放置(ネグレクト)の4つです。
 
虐待を受けたと思われる児童を発見した人は速やかに福祉事務所、児童相談所に通報義務があります。
 
歴史を見てみると、戦前の1933年に旧児童虐待防止法が制定されていたのですが、当時は14歳未満の児童の虐待防止と児童労働の禁止を謳ったものでした。
 
現在の児童虐待防止法では児童の定義は18歳未満です。
 
この旧児童虐待防止法は、戦後の児童福祉法の成立に伴って、1947年に廃止になりました。

児童虐待の禁止については児童福祉法にも規定されていて、通報義務も明記されていたのですが、1990年以降に徐々に児童虐待件数が増加したことで、2000年に児童虐待防止法が制定されました。
 
児童虐待防止法の通報義務は広く知れ渡り、児童虐待通報件数も増加しました。

通報を受けた市町村は児童相談所に送致するかの判断をして、一時保護をすべきであると判断すれば都道府県知事又は児童相談所長に通知します。
 
児童虐待で特徴的なのは、虐待類型として“経済的虐待”がないことです。

児童ですから搾取するような貯金はありません……、いや、親が子どものお年玉やお小遣いなどの貯金を勝手に使い切るみたいなことはありそうですが…。

夫婦間で暴力を振るうようなDVが、児童の見ているところで行われる“面前DV”なども虐待になり“心理的虐待”に分類されます。

現在はこの“面前DV”が多いので、児童虐待で最も多いのは“心理的虐待”となっています。
 
次に制定されたのが、2005年の高齢者虐待防止法です。

高齢者虐待防止法は、2005年に成立して2006年から施行されました。

高齢者虐待は、養護者によるものと、要介護施設従事者等によるものの2つに分類されています。
 
正式名称は“高齢者虐待防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律”です。

高齢者虐待の防止等に関する国等の責務、高齢者虐待を受けた高齢者に対する保護の為の措置、養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による高齢者虐待の防止に資する支援の為の措置等を定めることにより、高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、高齢者の権利利益の擁護に資することを目的としています。
 
対象は65歳以上の人で、虐待類型は、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、放置(ネグレクト)、そして、経済的虐待の5つです。
 
2020年度の高齢者虐待と判断された件数は、養護者によるものが1万7281件、養介護施設従事者等によるものが595件となっています。
 
高齢者の虐待で1番多いのは、身体的虐待で、2番目に多いのは心理的虐待となっています。
 
高齢者虐待防止法では、国、地方公共団体、国民、高齢者の福祉に関係のある団体や専門職に対して、高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進する為の責務等が定められています。
 
高齢者虐待への対応は、次の3つに分けることができます。
 
・高齢者虐待の防止

・虐待を受けた高齢者の迅速で適切な保護

・養護者に対する適切な支援
 
まずは、早期発見が重視されています。

その上で、発見者には市町村への通報が義務付けられています。

通報を受けた市町村には、高齢者の安全の確認や一時的な保護などの措置を行うことが求められます。
 
その方法として、地域包括支援センターなどの職員による高齢者宅への立ち入りや必要な調査、質問が認められています。

その際、トラブルが生じる恐れのある場合には、警察署長に対して援助を求めることが出来ることも定められています。
 
財産上の不当な取引による被害の防止についても定められており、その方法として成年後見制度の活用が挙げられています。
 
高齢者虐待の割合として、養護者による高齢者虐待では虐待される高齢者は女性の方が多く、年齢は80歳~84歳が最も高い割合を占めています。
 
虐待者の続柄は息子が最も多く、夫、娘と続きます。
 
要介護施設従事者等による高齢者虐待でも、虐待される高齢者は女性の方が多く、年齢は85歳~89歳が最も高い割合を占めています。

施設や事業所の種別では、特別養護老人ホームが最も多く、次いで有料老人ホームとなっています。
 
そして、2011年に障害者虐待防止法が制定されました。

正式名称は“障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律”です。

障がい者に対する虐待の禁止、障がい者虐待の予防及び早期発見、その他の障がい者虐待の防止等に関する国等の責務、障がい者虐待を受けた障がい者に対する保護及び自立支援の為の措置、養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による障がい者虐待の防止に資する支援の為の措置等を定めることにより、障がい者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって障がい者の権利利益の擁護に資することを目的としています。

障害者虐待防止法は2011年に成立して2012年から施行されました。

養護者によるもの、障害者福祉施設従事者等によるもの、使用者によるもの(障がい者を雇用する事業主など) の3つに分けることが出来ます。
 
対象は、障害者基本法に規定する障がい者で、虐待類型は、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、放置(ネグレクト)、そして、経済的虐待の5つです。

障害者虐待防止法では、国・地方公共団体、国民、障がい者の福祉に関係のある団体や専門職に対して、障がい者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進する為の責務等が定められています。

障がい者虐待への対応は高齢者虐待への対応と同様で、養護者もしくは障害者福祉施設従事者等による虐待を受けたと思われる障がい者の発見者には、市町村への通報が義務付けられています。
 
但し、使用者による虐待の場合は、市町村又は都道府県への通報となります。

市町村・都道府県の部局又は施設が、障がい者虐待の対応窓口となる市町村障害者虐待防止センター、都道府県障害者権利擁護センターとしての機能を果たすこととされています。
 
養護者による虐待では、虐待される障がい者は女性が高い割合を占めています。

障害種別では知的障害が最も多く、次いで精神障害、身体障害となっています。
 
虐待者の続柄は“母”が最も多く“父”、“兄弟”と続きます。

障害者福祉施設従事者等による虐待では、虐待される障がい者は男性が高い割合を占めています。
 
障害者種別では知的障害が最も多く、次いで身体障害、精神障害となっています。

施設の種別は障害者支援施設が最も高い割合を占めています。
 
障がい者虐待で特徴的なのは、使用者による虐待が定義されていることです。
 
障がい者は一般就労でも福祉的就労としても、使用者に雇われて働いている人が多いです。

その際は“身体的虐待”が最も多いです。
 
養護者による虐待では通報を受けた市町村は都道府県への報告義務はありませんが、施設従事者による虐待では市町村は都道府県へ報告しなければなりません。
 
更に、使用者からの虐待では市町村への通報義務、通報された市町村は都道府県に報告し、都道府県は都道府県労働局へ通知します。
 
次に、配偶者暴力防止法(DV防止法) についても少しお勉強です。

配偶者暴力防止法は、2001年(平成13)に成立し、同年から施工されました。

DV防止法とは、配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス/DV)に対する通報・相談・保護・自立支援などの体制を国または市区町村で整備することにより、暴力の防止、被害者の保護を図る為の法律です。
 
DV被害は増加の一途をたどっており、DV被害の相談件数は、2020年時点で8万2643件になりました。
 
DV防止法は“配偶者からの暴力”から保護する為の法律ですが、この法律で定義されている“配偶者”や“暴力”はどこまで含まれるかお勉強です。
 
“配偶者”は、DV防止法では、DV加害者となる相手とは婚姻関係、内縁関係(事実婚)、同棲関係にあった者で、その関係が継続中に暴力等を行っていた者を想定しています。
 
結婚していなくても、同棲している場合は“配偶者”に含まれます。

同棲していない交際相手から暴力を受けた場合は保護命令の対象とされるDVには含まれません。
 
DV防止法における“暴力”は、身体的暴力と生命、身体に関する脅迫に限定されています。

暴力として以下のようなものが挙げられます。
 
①身体的暴力:叩く・蹴るなど身体または、生命に危害を及ぼす不法な攻撃

②精神的暴力:殺すなどの生命に対する脅迫など

③性的暴力:性行為・中絶の強要などの行為
 
ただし、精神的暴力や性的暴力に関して生命と身体に関する脅迫がない場合、ここでいう“暴力”に該当しないので保護命令を申請することはできません。
 
DV防止法では身体的暴力を振るわれたり、生命に対する脅迫を受けた被害者が配偶者と会わないようにする為に“保護命令”を申し立てることができます。
 
申立てを受けた裁判所は、被害者が身体または生命に重大な危害を受ける可能性があると判断した場合に“保護命令”を発令します。
 
“保護命令”とは、4つの命令の総称です。
 
①被害者への接近禁止命令
発令された日から6ヶ月間被害者の住居・身辺への付きまとい、勤務先や普段所在する場所(通勤路など)の徘徊を禁止する命令です。
この命令を行うことで配偶者から離れ、別居後に家に押し掛けてくることを禁止できます。
また、このような保護命令が出ているにもかかわらず守らなかった場合は、罰則として100万円以下の罰金または1年以下の懲役が科せられる可能性があります。
しかし、この命令だけでは、電話やメールでの接触までは禁止されていません。
完全に相手からの接触を禁止したい場合は“電話等の禁止命令”も一緒に発令してもらう必要があります。
また、接近禁止で離れている間に離婚調停の手続きを進めておくと良いようです。
 
②退去命令
発令された日から2ヶ月間、被害者と住んでいる家から退去させ、住居付近の徘徊を禁止する命令です。
退去命令を行うことで、配偶者を家から追い出すことが可能です。
ただし、警察や弁護士の付き添いの元で荷物を取りに来る可能性があるので、持って行かれたくないものは隠しておく必要があります。
 
③被害者の子または親族等への接近禁止命令
配偶者が被害者の子を連れ戻す、被害者が子に関して又は親族(社会的に密接な関係がある人)の住居への押しかけなどを禁止する命令です。
命令が有効な期間は6ヶ月ですが、接近禁止命令が出ている間のみ有効になります。
また、子どもが15歳以上である場合は、子どもの同意が必要です。
親族に関しても、命令を発令する際は同意が必要になります。
この命令により“会わないなら、両親(友人)のもとに押しかけるぞ”などと脅され、会わざるを得ない状況に陥ることを防止できます。
 
④電話等禁止命令
この命令は、発令から6ヶ月の間、以下の行為を禁止する命令です。
・被害者へ面会を要求
・被害者が行動を監視されていると思わせるようなことを告知
・乱暴な言動(脅迫や物にあたることも含まれます)
・無言電話
・緊急の用がないのに、連続での電話やメール(ファックス)の送信
・緊急時以外の夜間(午後10時~午前6時)の電話かけやメール(ファックス)の送信 ・汚物や動物の死体など不快や嫌悪を感じるような物の送付
・名誉を侵害する行為
・性的羞恥心を侵害することの告知や文書・写真などの送付
命令が有効な期間は6ヶ月ですが、接近禁止命令が出ている間のみ有効になります。

配偶者から暴力を振るわれた場合、我慢していては身体的にも精神的にも良くありません。

相談や一時保護してくれる施設があります。
 
配偶者暴力相談支援センターでは、DV防止・被害者保護の為に以下のようなことを行っています。

・相談や相談機関の紹介
・カウンセリング
・被害者及び同伴者の緊急時における安全の確保及び一時保護
・自立して生活することを促進するための情報提供その他の援助
・被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供その他の援助
・保護命令制度の利用についての情報提供その他の援助

相談は電話や来所のどちらでも可能です。
 
婦人相談所は各都道府県に必ず1つ設置されており、相談や一時保護を行っています。

また、巡回相談できる可能性がありますので、まずは最寄りの相談所を探して電話で確認してみると良いです。
 
そして、警察です。

配偶者に暴力を振るわれて、身体や生命の危険を感じた場合は迷わずに110番に通報します。

通報を受けた警察は、被害者の安全を確保してくれます。 

また、今後の被害防止の為に、双方が警察署への同行を求められます。

緊急以外の場合は“#9110”で電話相談できますし、各警察署の生活安全課相談係で直接相談をすることが可能です。

また、必要に応じて配偶者暴力相談支援センターやカウンセリングできる相談先などの紹介も行っています。

相談以外にも、被害者に代わって配偶者に暴力をやめるという誓約書の作成を求めたり、暴力被害の証拠の集め方や自分の被害を防止する為の具体的な証拠を紹介したりしています。

DVが夫婦間の問題ということから、周囲の人がDVになかなか気づくことができないという理由もあり、問題点が幾つかあります。
 
暴力はなくても、配偶者からの耐えがたい人格否定や嫌味といったモラルハラスメント(モラハラ)を受けている人は少なくないようです。
 
しかし、申立てができるのは、身体的な暴力や生命、身体への脅迫がある場合のみです。
 
モラハラの証拠があっても、その内容がこのような暴力・脅迫に該当しなければ保護命令で守ってもらうことはできません。
 
このような場合は、婦人相談所などに相談して、とりあえず別居などの手を打つと良いです。

婦人相談所では、一時保護なども受け付けているので、住む場所が決まるまで保護してもらえることもあります。
 
また、モラハラが行われていた証拠がある場合は、慰謝料請求できる可能性があるので、離婚問題の解決に注力している弁護士に相談しながら離婚の準備を進めてみると良いです。
 
そして、男性に多いのが、普段DVを受けているのは自分なのに、保護命令を発令されてしまった…というケースです。
 
また、勝手に子どもを連れ去られてしまい、半年以上も会わせてもらえないとなると、夫婦関係修復は難しいと思われます。

この場合、自分から離婚調停を申し立てたり、子どもに会う為に面会交流調停を申し立てたりすることは可能です。
 
まずは、離婚問題の解決に注力している弁護士に相談してみるのが得策です。

内縁関係や同棲関係に該当しない交際相手からDV行為をされた場合は、保護命令の申立てはできません。

デートDVとも呼ばれますが、以下のようなことをされた場合、デートDVの被害に遭っていると判断されるかもしれません。
 
①身体的暴力は、殴る、蹴る、物を投げつけられるなど、直接身体に危害を加えられることをいいます。
また、酔った勢いでの暴力もDVに該当します。

②精神的暴力は、人格の否定や身体的特徴をバカにするなどの言葉での攻撃が精神的暴力になります。
また、無視や物に当たり大きな音を出す行為、面倒なことを人の都合も聞かずに押し付ける行為も該当します。

③性的暴力は、性的行為の強要や避妊に協力しない、ポルノビデオや写真などを無理矢理見せることが性的暴力に該当します。

④経済的暴力は、お金を借りたまま返さない、デート費用の全額払いを強要するなどが経済的暴力です。
また、無理矢理ものを買わせる行為も該当します。

⑤行動の制限は、スマホを細かくチェックして気に入らないところがあれば怒ったり、連絡先を勝手に削除したりする行為や人間関係について細かく口を出し、気に入らなければ怒り、周囲から孤立させようとする行為のことをいいます。
 
デートDVをされた場合の相談先としては、婦人相談所 は夫婦間のDV以外にも対応してくれます。

年齢の制限もありません。
 
精神保健福祉センターも同じく、DVをしてくる相手の気持ちが分からない、精神的に疲れてしまった場合などに相談することが可能です。
 
特にこの施設は、精神保健の福祉に関する相談や指導を行っているので、心のケアをすることが可能です。
 
そして、警察です。

交際相手からの暴行や脅迫は刑事事件になるので、緊急の場合は警察へ110番通報します。

現行犯の場合、必要に応じて逮捕の対応が可能です。

また、相手が別れた後にストーカー行為をしてくる場合は“ストーカー規制法”に乗っ取った対応をしてくれます。

“#9110”への電話相談または最寄りの交番や警察署へ来所して相談できます。

交際相手から受けた暴行や脅迫に対して慰謝料請求できるケースもあります。

また、暴行で受けた怪我や、精神的暴力で心療内科に通った場合の診察料や薬代などを請求できる可能性もあるので、そういう場合は弁護士に相談です。
 
配偶者からの暴力は決して、された側のせいではありません。

我慢をしていると心身ともに辛い思いをするだけだと思います。
 
また、子どもがいる場合、例え配偶者が子どもに手を出していなくても家庭内で暴力が起きていることは悪影響を与えます。
 
夫婦間で暴力を振るうようなDVが、児童の見ているところで行われる“面前DV”なども虐待になり、“心理的虐待”に分類されます。
 
上述しましたが、現在は、このような“面前DV”が多いので、児童虐待で最も多いのは“心理的虐待”となっていて全体の約6割です。
 
虐待の通報は“秘密漏洩や守秘義務に関する法律の規定の妨げにならない”となっているので、速やかに市町村へ通報して命を守ることを優先することが大事です。
 
虐待の中で、身体的虐待や養護の放棄は比較的発見されやすいですが、心理的虐待と性的虐待、経済的虐待はなかなか見つけるのが難しいといわれています。
 
家庭や施設という閉じられた中で行われているので難しい問題ではありますが、もし、少しでも、何かおかしいなと思うような場面があった時には、通報という手段があることを知っておくことが大切です。
 
障がい者虐待は、年間に数千件、高齢者虐待は1万数千件ですが、児童虐待は今や20万件を超えています。 統計を取り始めた1990年は1000件程度でした。
 
これは、児童虐待防止法の施行により通報義務が課せられたこともありますが、実体として増えていることも確かです。
 
ここからは、虐待を行う人の心理についてもお勉強です。
 
虐待を行なった加害者の言い訳として“躾の為に行なった”、“指導の為に行った”、“教育の為に行った”という人もいます。

そして“ちょっとイキすぎたのかな…”と。

虐待は決して指導などではありません。
 
むしろ脳や心、身体に大きな外傷を与える犯罪ともなりかねない行為です。
 
暴力を振るわれることで、被害者の脳は学習能力の低下や認知機能の低下が見られると言われています。
 
もし、本当に教育だと思って虐待を行なっているのであれば、真逆の行動であり、被害者に傷を負わせるだけだとも言えます。
 
子どもの場合は自分でお金を稼いだり、ご飯を作ったりすることが難しいので、親からの支援がライフラインとも言えます。
 
その為、親が子どもへの支援を止めてしまうと、子どもは必然的に生活できません。
 
自立することができない立場の子どもを標的にした虐待は、まさに子どもの命を奪いかねない犯罪的行為です。
 
今では少しでも児童虐待の件数を減らすことができないかと“189”のダイヤルが設けられました。
 
なお、虐待の中には“ミュンヒハウゼン症候群”というものもあります。

これは、一見虐待には見えないのが特徴で、親が世話好きで面倒見が良いように振る舞いながらも、実際には問題のない子どもを病気に仕立て上げて、不必要な検査や治療を受けさせたりするものです。

そして、医者からまともに取り合ってもらえないと、すぐに病院を変えて、更にいろんなことを子どもにするというものです。

そうした行動の背景には、親自身が良い親に見られたいという承認欲求が関係していると考えられます。

しかし、それは子どもにとってはいい迷惑です。

そのようにして親によってねつ造された症状は、親と離れると良くなるというのが特徴です。

このようなタイプの虐待もあるので、注意が必要です。
 
高齢者は生活を支援してもらっている家族だけではなく、入居した施設先の職員から虐待を受ける場合もあります。

子どもと同様に抵抗することができない層の方が虐待のターゲットになることがほとんどです。

施設先で虐待が行われている場合は、家族が気付きにくいとことも問題です。
 
高齢者は体内の臓器や骨なども衰えているので、身体的虐待の影響もとても大きくなります。
 
虐待が行われるのは加害者側に原因があるだけではなく、様々な要因が重なった場合に起こることが多いと言われています。
 
次の3つの要因のうち2〜3つが重なり合った時、特に虐待が発生すると言われています。
 
①加害者の要因

虐待を行う加害者の心の要因が一番大きく関係します。

自分のフラストレーションを解消する為に虐待を行うケースも少なからずありますが、他には、育児への不安、イライラ感 認知症などの症状悪化への不安、過去に虐待された経験などの要因で虐待を行なってしまう人も多くいるようです。

比較的年齢の若い親が育児への不安を感じ、虐待を行ってしまう事例は少なくありません。

このような場合は加害者自身も精神的にダメージを負っており、正常な判断ができない場合がほとんどです。
 
②虐待対象者の要因

対象者の行動が要因となる場合もあり得ます。

子育てがしにくい子ども、病気や障害を持っている、家族に暴力を振るうなど…、 これらの特徴を持っている子どもや高齢者の方がいる家庭では虐待が発生しやすい傾向も見られるようです。
 
③周囲に関連する要因

加害者と虐待対象者の要因の他に、周囲の環境が要因となることもあります。

家族が地域で孤立している 、家庭環境が複雑、経済的な不安を抱えているなど…、これらを補う為にも様々な施設に相談できる場所が設けられています。

周囲に相談する人がいないのであれば、1人で悩まずに専門機関に相談を行う必要があります。
 
児童虐待などが周囲で行われている可能性がある場合は、すぐに“189”のダイヤルに連絡をします。

地域の児童相談所に電話が繋がるようになっていて、実際に対象の家庭で虐待が行われていないか、職員の方や専門的な知識を持った訪問員が調査を行なってくれます。
 
“もしかしたら違うかもしれない…”と思っても構いません。

少しでも違和感があった場合は、すぐに“189”に連絡を行なう必要があります。

匿名での通報なので名前や身元などを明かさないで相談することもできます。
 
虐待は家庭内だけで防止、対策するのはとても難しいと考えられます。 

周囲に相談する友人や知り合いがいないのであれば尚更です。
 
その為、地域の方々とも密接な関係を築き、少しでも不安なことがあった場合はすぐに子育てや介護の相談などを行う必要があります。
 
1人で抱え込まない、家庭で抱え込まない…ということです。
 
必要なのは、エンパワーメントです。
 
犠牲者にも、加害者にも、その他、生きる人みんなにです。

人は誰もが素晴らしい力を持って生まれてきます。

生きているだけで、とても尊い存在だということです。
 
その持っている力を互いにどう響かせ合うかという関係性が、社会の中の人間関係になります。
 
日本は適所適材がとても難しい状況にあるので、その社会の在り方が、この虐待とかその他もろもろの犯罪を引き起こしているとも考えられます。
 
もちろん適所適材だけではなく、格差など…人を卑屈にしてしまう要素がゴロゴロと転がっている日本の社会なので、その巨大な根っこの部分を正していかないと、虐待は“0”にならないのかもしれません。
 
虐待に至った加害者をケアするという視点を持つことが大事で、その方法は抑圧された人たちが主体性を取り戻していくプロセスにも重なります。
 
虐待した加害者は今までの人生で他者から尊重されなかった痛みを、怒りの形で被害者に爆発させるとも考えられます。
 
怒りの裏側にどんよりと沈み込む深い悲しみに向き合わなければ、その加害者は前に進めないと考えられます。

家庭や施設などの問題リスクを探すばかりでは、解決には辿り着けないのかもしれません。

虐待死の事件が報道される度に行政の介入機能強化が指摘されます。

しかし、行政はその家庭や施設の問題リスクを探すばかりです。

それは警察と同じ視点で、福祉ではありません。
 
この家庭や施設には今何が必要かというニーズに目を向けて、加害者をエンパワーしなければ虐待事件はなくならないと思います。
 
施設などで従業員が虐待してしまったという事例もたくさんありますが、その時に上層部は“即刻辞めさせたから大丈夫”と考える場合も多々あります。
 
でも、それは何も解決していません。
 
そのやってしまった人も救われないと思います。
 
そして違うところに行っても、同じ事を繰り返してしまうかもしれません。
 
人が間違った時にどのように正しい方向に導くかということもまた、人を雇った側の責務になると思います。

それができもしないで偉そうな顔をされても、誰も着いてこないでしょう。
 
人は誰でも、自分を受容できた時に変わることができると思います。
 
この虐待というとても大きな問題を解決するには、自己覚知が重要になるのかなと思います。
 
その自己覚知を促す支援をするのもまた、ソーシャルワーカーの大きな仕事と思います。

やはり、この仕事は“話す仕事”ではなくて“聴く仕事”だと痛感しました。


写真はいつの日か…札幌市手稲区の前田森林公園で撮影したものです。


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