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キング・コング

KING KONG

来年はゴジラが誕生して70周年のメモリアルな年です。

それに先駆けて今年の11月3日には、新作『ゴジラ -1.0』が公開します。

11月3日と言えば、1954年にゴジラの第1作目が公開された日です。

もう今から楽しみ過ぎて仕方がないのですが、今年はそのゴジラにも多大な影響を与えたキングコングが誕生して90周年のメモリアルイヤーになっています。

90年前に円谷英二さんが、この映画に心底どハマりしていなかったら、ゴジラは誕生していなかったのかもしれません。

それぐらい映画史にとって重要な作品が1933年のアメリカ映画『キング・コング』です。

上映時間は100分です。

映画がサイレントからトーキーに本格的に移行し始めて6年目の年に公開されました。

メリアン・C・クーパーさんとアーネスト・B・シュードサックさんが監督を務め、脚本はクーパー監督とエドガー・ウォーレスさんのアイディアを基にジェームズ・アシュモア・クリールマンさんとルース・ローズさんが手掛けました。

映画音楽はマックス・スタイナーさんが不穏で迫力ある印象的な音楽を作り上げました。

ストーリーは、“美女と野獣”にも通じるものです。

キングコングは、恐竜などが生息する南洋のドクロ島(Skull Island)から見世物にされる為にニューヨークに連れて来られた巨大猿です。

人間の私欲に翻弄されて、文明社会に紛れ込んだ巨大猿キングコングがニューヨークで大暴れするもので、美女アン・ダロウを片手に持ってエンパイア・ステート・ビルに上る姿は映画史に残る名シーンです。

主演はフェイ・レイさん、ロバート・アームストロングさん、ブルース・キャボットさん、そして、巨大猿キングコングが登場します。

キングコングを発案したのはメリアン・C・クーパー監督です。

ウィリス・オブライエンさんのストップモーション・アニメーションで作られました。

ドクロ島のシーンにおけるキングコングの身長は18フィート(約5.4メートル=成人男性の3倍程度)、ニューヨークのシーンにおいては24フィート(約7.2メートル=成人男性の4倍程度)と設定されました。

建物とか背景の都合もあったのでしょう…今では考えられない手法です。

コングのミニチュアモデルは、金属製の骨格(アーマチュア)を内蔵して、表面にはウサギの毛皮を貼った40センチほどのものが数体使われました。

ドクロ島では丸顔、ニューヨークでは長い顔など数タイプがあり、シーンごとに使われたモデルの顔が違います。

また、実物大の胸像や頭部、腕部などは、表皮はクマの毛皮を使用して作成され、人形アニメと組み合わせて適宜撮影されています。

本作でのコングは、後にリメイクされた歴代キングコングの中でも最も兇暴な猛獣として描かれていて、敵対するものは容赦なく葬り去ります。

人間を噛み殺すシーンや、アン・ダロウの服を剥がしてその臭いをかぐシーンなど…結構、生々しく描かれています。

ウィリス・オブライエンさんによる特撮映像は、後に多くの映画人に影響を与えて、数多くの著名モンスターメーカーを生み出すこととなりました。

ウィリスさんは、ストップモーション・アニメを開発した人物です。

代表作の1つ『ロスト・ワールド』は、7年がかりで製作しました。

『ロスト・ワールド』や『キング・コング』、『コングの復讐』など…“映画界の古典”とされる作品の特殊効果を担当して、これらの作品を観た数多くの若者たちが映画クリエイターの道を志しました。

しかし、技術の流失を恐れたウィリスさんは弟子を取らない主義でした。

唯一の例外がレイ・ハリーハウゼンさんです。

人形アニメの神様とも呼ばれるレイ・ハリーハウゼンさんが『キング・コング』の影響から映画制作を志し、後にウィリス・オブライエンさんの部下として1949年の作品『猿人ジョー・ヤング』に参加したことは有名です。

それも当時の特撮技術の最高峰と評価されて、アカデミー視覚効果賞を受賞しました。

レイさんの本格的な独立してのデビュー作は1953年の『原始怪獣現る』です。

20世紀の特撮映画界を創造、牽引してきた巨匠として、レイ・ハリーハウゼンさんの名前は今でも語り継がれています。

『ゴジラ』や、ジョージ・ルーカスさんの『スターウォーズ』、ジェームズ・キャメロンさんの『アバター』、ピクサーの作品群など…後の特撮映画の巨匠にも多くの影響を与えました。

ピクサーが製作した『モンスターズ・インク』には、“ハリーハウゼン”という名前の寿司屋が登場します。

ジョージ・ルーカスさんは“僕たちのほとんどが子供のころからレイ・ハリーハウゼンさんの影響を受けてきた。その存在なくして『スター・ウォーズ』は生まれなかった”と語っています。

『ターミネーター』や『アバター』などを造ったジェームズ・キャメロンさんは“SFとファンタジー映画の実践者である私たちの全てが、巨人(レイ・ハリーハウゼン)の肩の上に乗っていると感じています。もし、彼が存在していなかったら、私たちも存在していなかったでしょう”と語っています。

それほどの巨匠を育てたのがウィリス・オブライエンさんで、このキングコングを造った人物です。

どれだけ偉大な人物かがわかります。

後に特撮の神様とも呼ばれるようになる円谷英二さんも、このお二方に多大な影響を受けています。

当時のアメリカは世界大恐慌の余波が残る時期で、アン・ダロウのキャラクター設定にも反映されています。

映画は大ヒットしましたが、その背景にも、この経済的世情不安があったと言われています。

当時重度の経営不振だった映画会社のRKO(1959年に倒産)は、本作の世界的大ヒットによって一気に持ち直しました。

ナチスドイツのアドルフ・ヒトラーさんはこの作品の大ファンだったことで知られています。

公開当時、この映画を観た観客たちからRKOに、“本当にあんな生物がいるのか”との問い合わせの電話が殺到したという逸話もあります。

世間一般的には、アルフレッド・ヒッチコック監督の1960年の作品『サイコ』のジャネット・リーさんが絶叫クイーンとして知られていますが、いえいえ、この作品でアンを演じたフェイ・レイさんには敵いません。

ほぼほぼ、絶叫だけ…または気絶する演技だけで乗り切りました。

メリアン・C・クーパー監督はクライマックスシーンの着想を得たキッカケについて、“マンハッタンのオフィスを出ようとした時に飛行機のモーター音が聞こえてきた。空を見上げると、街で最も高いビルの側を飛ぶ飛行機の翼に太陽の光が反射していた。世界一高いビルの頂上に巨大ゴリラを配置して、それを武装した飛行機という…最も現代的な武器で仕留めれば、現代文明に滅ぼされる原始人の物語を作れると考えた”と仰られています。

コングが美女アン・ダロウを片手に持ってエンパイア・ステート・ビルの天辺に上り、群がるハエを振り払うように飛行機を次々に撃墜しますが、最終的に力尽きて地上に落下してしまう…あの名シーンです。

そして、この不幸を引き起こした張本人のカール・デナムが最後、“彼女の美貌が野獣を仕留めた”と他人事のように呟く…。

映画はキングコングの存在を世界第8の不思議として締め括られますが、カール・デナム…いや、人間の身勝手さこそが8番目の不思議ということになりましょうか…。

ちなみに、製作総指揮を担当したデビッド・O・セルズニックさんは、 この6年後に『風と共に去りぬ』を制作した人物であり、その後、アルフレッド・ヒッチコックさんをハリウッドに導いたりと、映画の歴史において超重要人物です。

『風と共に去りぬ』でのアトランタ大炎上のシーンは、 キングコング用に作ったドクロ島の巨大セットを炎上させて撮影したものです。

そんな歴史を踏まえつつ、映画を観直すのも楽しいです。

現代の映画…特に商業的に成功するヒット作品に言えることですが…そういった作品が、物語の内容よりも目立つことを重視しているように思えるのは、この『キング・コング』の影響なのかもしれません。

映画って本当に良いものですね…あぁ~ステキ♪

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