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99.音楽の力

音楽を聴くことで自然と気分が向上したり、リラックスしたりするなど…音楽は人の心と体に様々な影響を与えてくれます。

子どもたちの発達支援、障がいがある方や認知症高齢者の機能回復訓練や心のケアに音楽は活用されることもあります。

音楽がもたらす一体感や最後まで通して聴き切った達成感、良い曲を聴けたという感動体験などを分かち合うことができるので、家族や他者との健全なコミュニケーションに役立ちます。

音楽の力を日常に取り入れることは、気持ちを切り替えたり、生き生きと過ごすことに役立ちます。

不思議なことに、興味のない音は、耳に入ってきません。

聴きたいと意識しているものは良く聴こえる一方で、興味がない音や聴きたくない音はシャットアウトされることがあると思います。

落ち込んでいる時に、元気を出してと軽快な音楽を聴かされても耳に入ってこないということがあります。

自分のその時々の心に寄り添った曲を選ぶ必要があります。

日常的に音楽の力で体や心をケアしたいと考えるのであれば、まずは自分の気分に寄り添った曲を選ぶことが大切です。

どのような音楽に耳を傾けたいかは、人それぞれです。

落ち込んでいると感じる時は、それに合わせて少し暗めの曲から聴き始めて、やがて明るく気持ちを高揚させていく音楽に切り替えていくようにすると気分を変えやすいと思われますが、それもまた、その人それぞれの感じ方です。

何をどう聴きたいかは、その人の性格や好み、その時々の気分などによって変わりますので、強要できるものではありません。

音楽はレコードやCDなどで聴くのも良いですが、生の演奏にはまた格別の魅力があります。

生演奏の良さは、何と言っても奏者と聴衆の間に一体感が生まれることです。

会場によっては、演奏する人の動きや息遣いなど全ての要素がハーモニーになって伝わってくるので、より深い感動を体感できます。

演奏するホールの空気や、当日の気候や天気、演奏する人や聴いている人たちのその時の状況など…その場のあらゆるものの影響を受けて音楽が成り立つので、どれか1つ、誰か1人欠けただけでも音楽が変わってしまいます。

生演奏を聴く会場では、まさに当日限りのかけがえのない体験ができます。

とにかく、音楽は奥が深いわけです。

そんな音楽の起源はどんな感じだったのでしょうか…。

小鳥のさえずりなどの動物の鳴き声を真似する事から始まったという説、言葉の強弱や高低から生まれたという説、歩いたりする時や石器を作ったりする時のリズムから始まったという説、遠くに信号を伝える時に音を出したものから楽器が生まれたという説、雨乞いをする時などに願いを強く表したい時に生まれたという説から、種の起源を唱えたダーウィンさんによる性的興奮を表現する動物の求愛の鳴き声の進化の結果生まれたものという説まで…様々な説があります。

その後、世界で最も古い文化の1つであるメソポタミア文明の遺跡から、ハープやリラ、笛、太鼓などを演奏している人々の姿を刻んだ彫刻壁画が発見されています。

その時代の楽譜は残っていません。

その結果、どのような曲を演奏していたかは定かではありません。

エジプト文明では、紀元前3000年頃から既に儀式や祭の時に音楽が演奏されていました。

ピラミッドの遺跡の中から、ハープやリラ、クラリネットなどの楽器が発見されていて、 壁画にも楽器演奏の様子が描かれています。

象形文字による楽譜らしきものも残されています。

西洋文明発祥の地と言われるギリシャでは、紀元前1000年頃から音楽が演奏されていました。

教育でも哲学、文学、体育と一緒に音楽も重要視されていました。

同時に音楽の理論的研究が行れており、音階やリズムの種類が整えられました。

ギリシャ演劇では合唱隊があり、これは後のオペラが生まれるキッカケになったと言われています。

5世紀頃から15世紀中頃までのおよそ1000年間はキリスト教が最も熱心に信仰された時代で、キリスト教会を中心に音楽が発達した時代です。

人々が教会に集まって神に祈る時に、古い信仰の歌やユダヤ教で歌われていた歌を基にして、神を褒め称える歌を謳うようになりました。

6世紀の終わり頃になると、ローマ教皇のグレゴリウス1世が各地方の聖歌を集めて形を統一しました。

これがグレゴリオ聖歌です。

それは、1つのメロディーを独唱又は斎唱する単旋律の音楽で、教会旋法という音階で謳われました。

グレゴリオ聖歌の楽譜は最初のうちは、歌詞の上に点や線で歌い方を示したものでした。

やがて、横に線が引かれるようになり、本数も増えて4本の線の上にかなり正確な音の高さを表せるようになりました。

9世紀の中頃になると、グレゴリオ聖歌のメロディーにもう1つのメロディーを重ねて歌う、オルガヌムという方法が生まれました。

そこから、幾つものメロディーを重ねる多請声音楽が発達していきました。

17世紀から18世紀中頃になると、急激に音楽は進化し始めます。

ビヴァルディさんやバッハさん、ヘンデルさんといった、日本の教育現場でも活用される音楽を作った大御所たちが活躍した時代です。

器楽曲が発達して声楽曲も大編成になりました。

この時代の音楽をバロックと呼びます。

バロックという言葉の意味は“形の悪い真珠”で、後の古典派の人たちが、この頃の芸術を指してそう呼んだそうです。

悪い意味の言葉を使って呼んだ理由は、14~15世紀頃のルネッサンスの芸術と比べて、形式から抜け出して自由な表現をするようになったからです。

古典派の人たちから見ると、この頃の芸術派は奔放過ぎて悪く見えていたということです。

しかし、20世紀になるとバロック芸術の良さが見直されて、バロック音楽は現在世界中で愛される音楽になりました。

弦楽器を中心に、チェンバロを加えた編成で、合奏と独奏が交互に演奏される形式の合奏協奏曲が生まれました。

16世紀の末には、イタリアのフェレンツェの貴族の家に集まった詩人や学者、音楽家たちが、古代ギリシャ劇を真似て音楽劇が作られ、そこからオペラが生まれました。

最初は、歌手が筋書きに沿って歌い、それに伴奏をつけただけのものでしたが、次第に評判になりイタリア中に広まり、17世紀に入って、フランスやドイツに広まりました。

聖書の中から取られた宗教的な物語を表す声楽曲をオラトリオと言います。

器楽の簡単な伴奏がついて独唱や重唱、合唱をする声楽曲をカンタータと呼びます。

18世紀中頃から19世紀始めにかけて、ウィーンを中心にハイドンさんやモーツァルトさん、ベートーヴェンさん達が活躍していた時代を古典派と呼びます。

この辺からは日本でも小学校や中学校でも教育現場でしっかり教わるので、特別ここで書くこともないでしょう。

古典派の時代は、それまで主に宮廷や教会のものであった音楽を一般の市民も聴くようになり、弦楽四重奏や協奏曲が生まれた時期です。

古典の意味は、“古い書物”という意味で、特にギリシャやローマの文芸を指しましたが、17世紀頃から文学の分野でギリシャやローマの文芸の持つ調和の取れた形式の美を見習おうとする運動が起こり、美術や音楽の分野においても、この考え方が広まりました。

古典派という言葉は、音楽のみではなく芸術全般に使われています。

その後、ロマン派や国民楽派など進化していき、現代に至ります。

簡単に音楽の歴史をお勉強してみましたが、本日、お勉強したいのは音楽療法です。

音楽療法は東京音楽療法協会によると…、

“音楽の持つ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること”

…とされています。

音楽を聴くと自然とリラックスできたり、活力が湧いてきたり、体が自然と動いたりします。

また昔聴いていた音楽を聴くと、その頃の記憶が自然に蘇ってきたりするなど、音楽を聴く事でポジティヴな効力を感じたことがあるという人は結構いるのではないかと思います。

このような音楽の効果を利用するのが音楽療法です。

音楽療法は、精神にも身体にも良い影響を与える事がわかっています。

また、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia…認知症の行動心理症状のことで、暴力、暴言、徘徊、うつ、妄想のこと)に対しても効果があり、認知症の方が音楽を通じて自分らしく、生き生きと生活することを目指しています。

何となく音楽を聴くだけでも効果がある点で、優れたリハビリと考えることもできます。

音楽療法の起源は、第一次世界大戦時に傷病兵に対してアメリカで行われたものと言われています。

その後に、様々な音楽療法が導入されて、その地位が確立されました。

日本では、音楽療法学会認定の音楽療法士が活躍していますが、その数はまだ少ないのが現状です。

今後、発展が期待できる領域です。

音楽療法には、認知症によって引き起こされる不安や緊張などを、音楽療法によって落ち着かせるリラクゼーション効果が期待されます。

多くの場合、妄想や攻撃的な言動などは緊張や不安などから起きている場合が多く、音楽療法によってそれらを軽減できます。

音楽を通して、体でリズムを取ったり、声を出して歌ったり、歌詞を思い出したりするなどの脳の様々な部位を働かせるので、とても良い刺激になり、脳が活性化されます。

脳を活性化することで、気持ちを明るくしたり精神を安定させたりするなどの精神面でも良い効果が期待できます。

認知症特有の記憶障害で、すぐに忘れてしまったり、分からなくなってしまったりする事が多くなっている中でも、昔覚えた歌や曲は覚えているものです。

忘れていないものがあるということは、自分自身への自信や自己肯定感に繋がります。

昔に親しんだ音楽を聴くことで、その頃の思い出を蘇らせることもあります。

働いていた頃に流行った曲や子どもと一緒に歌った曲など、生き生きと活動していた頃の自分の姿や活力を蘇らせてくれる力もあります。

若い頃の思い出を回想することで気持ちの安定や脳の活性化も期待できます。

認知症によって、言葉が不自由になり、なかなか自身の表現が難しくなって行き場のないストレスが溜まることもあります。

大きな声を出したり、楽器で大きな音を鳴らしたり、手を叩くことで、言葉では表現できないものを発散する事ができます。

心身の障害があって発語やコミュニケーションが難しい方でも、音楽を通じてコミュニケーションを取りやすくなります。

他にも、睡眠障害の改善やがん治療の副作用の軽減、リウマチなどの痛みを緩和するなどの効果もあります。

音楽療法には、シンプルに音楽を聴く受動的音楽療法と、歌うことや楽器を演奏したりするなどの能動的音楽療法があります。

利用者の好みや年齢に合わせた曲を選び、その結果、どのような効果が得られたかを、今後の課題に繋げていく継続的なモニタリングが行われます。

音楽療法は専門的でなくても、簡単に取り入れる事ができます。

利用者の歴史は様々で、それぞれが違う経験をされています。

また、それぞれの身体機能や認知症状のレベル、そして性格も様々なので、一律に“皆さんでこれをやりましょう”で済ませてはいけません。

私も幼い頃から常に何度も何度も音楽に救われてきました。

受動的にも能動的にもです。

学生時代の危機的な状況も音楽活動をやっていたから何とか乗り越えれましたし、少なくても28歳ぐらいまでの私は音楽がなければ他者とのコミュニケーションが全く取れないような風変わりな人間でした。

実際に変人扱いも長いことされてきました。

それは今も変わらないかもしれませんが…。

それが現在はよくもまぁ、モグリではありますが、ソーシャルワーカーをやれてるなぁ…と不思議で仕方がありません。

それもやはり、これまで出会ってきてくれた皆様の支えがあったからと強く感じています。

皆様が優しく流してくれるから、音楽なしでも現在は私なりにコミュニケーションを取れているのかなと思います。

でも、実際のところは子どもの頃から私は変わっていません。

だから、感謝しかないと感じています。

とにかく、音楽と受動的でも能動的にでも関わる場合は、音を楽しむことを絶対に忘れないようにして、気楽に音楽本来の意義を感じていただきたい…と思ったところで、本日の ふくしのおべんきょう を終了します。

写真はいつの日か…札幌市内で撮影したものです。

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