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ゴジラ

“原爆の恐怖がよく出ており、着想も素晴らしく、文明批判の力を持った映画だ。”

これは三島由紀夫さんの『ゴジラ』評で、ドラマ部分も含めて本作品を絶賛したという話は有名です。

1954年の公開当時は国民のほぼ10人に1人がこの映画を見たと言われる程の大ヒット作品です。

しかし、公開当時の日本の評論家の評価はかなり低いものが多く、ゲテモノ映画と酷評されることが多かったようです。

特撮面では絶賛される場合が多かったようですが(そりゃそうです。誰もこんなの見たことがなかったわけですから)、人間ドラマの部分が余計だと評価されることが多かったようです。

『ゴジラ』はまずアメリカで大ヒットしたことで日本国内の評価が定まったとも考えられています。

ゴジラは昭和、平成、令和と時代を超えて愛され続けてきた70年の歴史がある日本最大の映画シリーズです。

最新作『ゴジラ-1.0』も1作目のようにドラマもゴジラも最高ということで、日本もそうですがアメリカで大ヒットしていて、既に全米の興収面で歴代の邦画実写作品の中で第1位になっています。

そんな『ゴジラ-1.0』ですが、インフルエンザやらコロナやらも流行中ということで、私は仕事柄、映画館での鑑賞を断念してDVD待ちです。

とにかく今回の新作は評価が高くて、『パンズ・ラビリンス』や『シェイプ・オブ・ウォーター』などで知られるギレルモ・デル・トロ監督が“奇跡だ”と言って…それもゴジラ映画でベスト3に入るとまで(ギレルモ・デル・トロ監督が好きな他の2作品も気になるところですが)仰られています。

私はとにかく劇場鑑賞を断念したので、家にあるDVDコレクションを観て我慢しています。

私が初めて観たゴジラ作品は3歳だったか4歳だったか…、毎週日曜日に連れて行ってもらっていた近所のスーパーの2階のエレベーター前に設置されていたテレビで放映されていた『モスラ対ゴジラ』です。

そこで上映されていたのは基本的に『モスラ対ゴジラ』で、たまに『3大怪獣~地球最大の決戦』、『ゴジラの息子』が放映されていた記憶があります。

おそらく1983年頃だったんだと思います。

その後、『メカゴジラの逆襲』以来の9年ぶりの新作『ゴジラ(1984年作品)』が公開されました。

それが私にとって初めてのリアルタイムでのゴジラの新作であり、それが人生初の映画館体験でもありました。

それから平成ゴジラシリーズは全て劇場で観て、DVDも昭和シリーズと一緒にコレクションしています。

小学3年生の時に観た『ゴジラvsビオランテ』に始まり『ゴジラvsキングギドラ』、『ゴジラvsモスラ』、『ゴジラvsメカゴジラ』、『ゴジラvsスペースゴジラ』、そして高校1年生の時に観た『ゴジラvsデストロイア』までどれもが最高なシリーズでした。

ミレニアムシリーズだけは未だに未鑑賞でコレクションもしてませんが、その後の2014年以降のハリウッドのモンスターバースと2016年の『シン・ゴジラ』はコレクションしていますし、劇場でも観ました。

そんな70年の歴史があるゴジラで、私も3歳か4歳の頃から40年以上追いかけてきましたが、やはり、その原点…1作目は特別です。

どんなに素晴らしい新作が作られても、この1作目と比較されるハメになります。

そのゴジラ誕生に影響を与えたキングコングは今年90周年であることは以前に投稿した『キング・コング』で書いた通りです。

今日はあくまで1954年の『ゴジラ』の話です。

海底の洞窟に潜んでいたジュラ紀の怪獣ゴジラが度重なる水爆実験で安住の場所を追われて、たまたま東京に上陸して歩き回った結果、破壊の限りを尽くしてしまい、危機感を感じた人間達によって抹殺されてしまう…という物語です。

太平洋沖で貨物船や漁船が相次いで沈没、行方不明になる事件が多発しました。

漁船が漂着した大戸島の老人が、一連の事態は島に古くから伝わる伝説…ゴジラによるものではないかと言い出します。

奇しくもその夜、島を暴風雨が襲い、家屋が次々になぎ倒されて、住民や家畜が多数犠牲になりました。

ただの暴風雨とは思えないような被害の有り様で、地面には何か巨大な生物が歩いたような痕がありました。

このように映画の冒頭約20分はゴジラは姿を見せません。

起きる被害を少しずつ甚大なものにエスカレートさせていき、観客の緊張感を膨らませていくという奇跡の演出です。

そして遂に、異変を伝える島の鐘の音に駆けつけて来た村人たちや調査団の前に、丘の向こうからゴジラが顔を出します。

これがゴジラの初登場シーンです。

あのシーンは永遠に語り継がれるであろう映画史に残る名シーンです。

監督兼脚本が本多猪四郎さん、共同脚本に村田武雄さん、原作は香山滋さんで特殊技術は円谷英二さん、音楽は伊福部昭さんです。

出演者は宝田明さん、河内桃子さん、平田昭彦さん、志村喬さんといった方たちです。

1954年に発生した第五福竜丸事件を背景に、反核や文明批判をテーマにした作品です。

元々、ゴジラは怪獣プロレスの子ども向けの映画ではなく、人間ドラマとしての側面が大きかったという事実があります。

大戸島でゴジラの存在が確認されると、国会の議題で取り上げられることになりましたが、志村喬さん演じる古生物学者の山根博士は、ゴジラが度重なる水爆実験の影響で居場所を奪われたことから地表に出てきた巨大生物であると推測しました。

ここで議会では、あまりに重大な情報であり軽率に公表して国民をパニックに陥れるべきではないと秘匿を主張する議員と、重大事案だからこそ国民に早く広く伝えるべきであるとする議員とで議論が紛糾しました。

この辺は2016年の『シン・ゴジラ』で現代風に描かれました。

主演の宝田明さんと河内桃子さんが演じるカップルの恋愛模様も…途中から芹沢博士(平田昭彦さん)と三角関係になりますが…ステキです。

しかし、それ以外の人間模様が多岐に渡っていておもしろいです。

特に時代を感じるのは、ゴジラの出現を伝える新聞を広げる男女の乗客が…、

“や~ね、原子マグロだ放射雨だ…、その上、今度はゴジラと来たわ。
東京湾にでも上がり込んで来たらどうなるの!”

“まず真っ先に君なんかは狙われる口だね。”

“嫌なこった。
せっかく長崎の原爆から命拾いしてきた大切な体なんだもの。
そろそろ疎開先でも探すとするかな。”

“私のもどっか探しておいてよ”

“あ~あ、また疎開か。全く嫌だなあ…”

第二次世界大戦が終わってまだ9年後の作品なので、物凄くリアルに伝わってきます。

ここまでゴジラというよりは、映画は人間主体に描かれています。

そして、遂にゴジラが東京に上陸してからはゴジラがしっかり描かれます。

防衛隊による重火器での攻撃や高圧電流で感電死させる作戦も上手くいかず、東京は殲滅状態になります。

東京タワーでゴジラに破壊されるギリギリまで中継を続ける報道局の人たちが“さようなら”と絶叫して崩れ落ちる東京タワーから落下して亡くなるところも名シーンです。

その後、ゴジラの再上陸が恐れられる中で、平田昭彦さん演じる芹沢博士が発明したオキシジェン・デストロイヤーをゴジラに対して使用する決断をします。

オキシジェン・デストロイヤーは、水中の酸素を一瞬のうちに破壊しして、あらゆる生物を窒息死させるという恐ろしい兵器です。

芹沢博士は最初はオキシジェン・デストロイヤーが原水爆に匹敵する恐るべき破壊兵器であると理解しており、1度使ってその存在が世界に知られれば、各国の為政者に悪用されかねないとこれを拒否しました。

しかし、苦しんでいる被災者を目の当たりにして考えを変えます。

1回限りという約束で兵器の使用を許可しました。

芹沢博士は、オキシジェン・デストロイヤーで見事にゴジラを白骨化させて葬ると、そのまま自らが作り出した破壊兵器の秘密を持ったまま海底に消えていきました。

一瞬で世界を変えてしまうようなとてつもない兵器を生み出してしまった創造者の苦悩といえば、クリストファー・ノーラン監督による伝記映画『オッペンハイマー』で描かれているロバート・オッペンハイマーさんに重なります。

まぁ、日本で生活している私はまだこの映画は観ていないのですが…。

まさか1954年の日本映画『ゴジラ』に登場する芹沢博士と2023年最高の映画『オッペンハイマー』の主人公を比べる日がくるとは思いもしませんでしたが…。

ゴジラが死んで、芹沢博士がオキシジェン・デストロイヤーの秘密を持って深海に消えていった後…最後の山根博士の “あのゴジラが最後の一匹だとは思えない”というセリフで 続編への期待も残し、そして最後に水爆実験や環境破壊への警鐘を鳴らして、 本作のテーマを結実させました。

伊福部昭さんの永遠に語り継がれるであろう偉大なテーマ音楽を聴くだけで、映像がなくても、この映画の様々なシーンが頭の中に甦ってきます。

2024年はゴジラ生誕70周年です。

『ゴジラ-1.0』で世界中が大盛り上がりの中で、ハリウッドのモンスターバースの新作が少し心配ではありますが、私は個人的にひっそりと家で過去の作品のDVDを観て心の中で盛り上がろうと思います。

ゴジラ … あぁ~ステキ♪

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