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種族解説:ゴブリン

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ゴブリン。数の上では人間と同じかそれ以上に栄える種族であり、その生活圏は大陸全土に及ぶ。ゆえにその親類も多く、研究が進んでいないものを含めれば、数十種にのぼるゴブリンが現在でも栄え、その分類は近年ますます複雑化しているようだ。ここでは、大陸全土の平野部や山林で見られる最も一般的なゴブリンたち...コモン・ゴブリンを例に、ゴブリンがおしなべてどのような種族であるかを解説しよう。

ゴブリンの背丈はドワーフと同じくらいで、細い手足を持つ。実のところ、人間の成人男性と同じかそれ以上の腕力を持つが、体と比べて不釣り合いなほどの大きな頭のせいで、一見貧弱そうに見える。口角の上がったその顔の作りから常に笑っているように見えることが多いが、ゴブリンは実際によく笑う。彼らは、笑うことが人生を楽しむことにつながると考えているのだ。ただしそれが平和な笑いとは限らない。むしろ悪辣で下品なものだ。

ゴブリンの笑いは悪趣味というか残虐で、多くの場合、他者の不幸や苦痛と直結している。この点ゴブリンの笑いは、非道な人間のそれとよく似ていると言えるだろう。捕まえたドワーフを縛り上げて天井から吊るし、ドワーフが苦しみ怒るさまを楽しむ“ぶらりんドワーフ大会”や、コボルドの子供を殺し合わせる“コボちゃん相撲”などは、ゴブリンの間で人気の娯楽である。

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彼らの話し方は舌足らずで、声も高いため、まるで子供がおしゃべりしているような印象を与えるだろう。集団行動を常に行うため、ゴブリンは協調性が高いと誤解されるが、実際は競争意識の塊であり、情愛に薄く、集団において上位にいると傲慢に振る舞う傾向がある。ゴブリンはしばしば“わしら”という語を一人称のように使うが、それは自分の意見、あるいは自分が多数派に属していることを相手に思い込ませるためであって、連帯感や一体感の表明ではないことを忘れるべきではなかろう。

ゴブリンが抱く生存への執着と、死に対する恐怖は人間と同じか、それ以上に強い。性格はかなり臆病で、自分の命が最も大切な財産だと考えるため、他の知的種族が賞賛する忠誠、気高さ、勇猛さ、勇敢さ、名誉、自己犠牲、慈悲、同情、利他的な行動などを冷笑的に捉えるか、あるいは全く理解できない。この気質は生死だけにとどまらず、日常生活における万事に共通するものだ。

ゴブリンたちの会話を聞いていると、まるで無垢な子供たちが話しているような無邪気さすら感じられるかもしれないが、内実は全く違う。彼らは自分の序列を常に気にしており、仲間の中で少しでも優位に立つべく暗闘し、目上に取り入る好機を逃さず、落ち目の上役がいれば立場を奪うスキをいつでも伺っているのだ。

彼らが他者に何かを施す時、あるいは誰かを手助けする時...それらは全て、自分にとって得になるからである。相手を思いやったり、いたわっているからではない。たとえ本人がそうした友愛の言葉を口にしていようと、それはまったくもって本心ではないのである。残念ながらこの点においても、ゴブリンと人間は非常によく似ていると言わざるを得ない。

これらの点で分かるように、ゴブリンの文化は、人間から道徳や規範、良識と情愛をほとんど取り払ったいびつな形で形成され、継承されてきた。ゆえに彼らの社会は人間のそれよりも直接的で現実的な権威主義によって成り立っており、強者は常に強者であり続けなければ、すぐさま共同体の最下層に追いやられることになるだろう。

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ゴブリンは部族単位で生活を営むが、ゴブリンに性別は存在しない。仮に他種族からゴブリンと呼ばれる連中がいても、それに女性ないしは男性が存在する場合、それはゴブリン族と外見が似ているだけの完全な別種族と考えるべきであろう。なぜならゴブリンは、子孫を増やすのに生殖行動を必要としないからだ。

その居住区域に関わらず、ゴブリンの住む場所には必ず陽光の差さない地下部がある。そこに広がるのが「すくすくキノコ畑」だ。ゴブリンはキノコの仲間であり、毒々しい色をしたキノコ傘の下…土中に形成された菌糸のまゆ内で育つのである。ゴブリンの胞子は主に排泄物を介してそこらじゅうに放たれるが、キノコのより健やかな生育には専用の畑がよいという。そのため、自分たちの縄張り内にすくすくキノコの幼生を見つけると、彼らは必ずそれを株ごと抜き取り、部族のキノコ畑に植え替えるのだ。

普段は他者との財産共有など決して考えないゴブリンであるが、こと子孫を増やし育むことについては部族が共同してことにあたる。水やりや枝キノコ取りといった畑の世話は重労働だ。部族の一大事業とは言えば聞こえがよいが、畑の整備と世話を族長が大兄貴たちに言いつけ、大兄貴たちが頭目らに命令し、下りくだって部族の下っぱに回ってくるだけの話である。当然、上役から提示される褒美は中抜きによってどんどん粗末なものになり、実働するゴブリンの手元にはほとんど何も残らない。

下っぱたちも、他の誰かに押し付けられるのであれば喜んでそうするが、畑が干あがったら殺されるのは自分なので、誰にも押し付けられないとなれば、渋々役目を果たす。内心はともかく、はた目で見れば鼻歌まじりに小躍りしながら世話をするので、ゴブリンという種族を理解していない者からすると、楽しんでやっているように見えるはずだ。そう見えるようにしているからである。

ゴブリンの“発芽”から誕生までは数ヶ月ほどかかり、誕生したら一ヶ月たらずで“成人”する。長命のゴブリンであっても30歳ほどで没するが、まじない師などの例外を除き、ほとんどのゴブリンは天寿を全うすることなく死ぬか、敵ないしは仲間に殺される。

ゴブリンたちが仲間を増やすことに執心するのは、彼ら一人一人が非常に弱く、数を増やさない限りは種族としての生存が不可能だからだが、それを理解できているゴブリンは当然いない。半ば本能的にそれを行うのだ。自分がなぜ子孫を増やさなければいけないかを深く考えるゴブリンは少ないが、考える者であっても、その答えは「自分が殺されにくくなる」以外にない。もっとも、自分が育てた子孫に自分が殺される危険はかなり高いのだが、そこまで先を見通せるゴブリンはまずいないのだ。

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